永山本家酒造場
代表銘柄:貴・男山
山口県
YAMAGUCHI
1888年創業
1888年(明治21年)に創業した山口県宇部市の酒蔵です。代々地元で親しまれる「男山」を醸造してきましたが、2002年に5代目当主の永山貴博氏が新ブランド「貴」を発売しました。仕込み水には秋吉台を水源とする厚東川のミネラル豊富な伏流水(中硬水)を使用し、米の味を活かした優しく芯のある味わいを特徴としています。ヨーロッパのワイナリー視察をきっかけに「テロワール(原料の風土)」を重視するようになり、2015年醸造からは醸造アルコールを使用しない純米酒専門の酒蔵となりました。
2019年には農業生産法人を設立し、自社や地元のパートナー農家とともに「山田錦」などの酒米栽培にも取り組んでいます。2003年には雑誌『dancyu』の「地方の隠れた名酒部門」で1位を獲得しました。また、事務所として使われている旧二俣瀬村役場庁舎の建物は、2017年に国の登録有形文化財に登録されています。
永山本家酒造場の歩み
永山本家酒造場は、1888年(明治21年)に初代の永山橘太郎が創業した酒蔵です。創業の地は宇部市二俣瀬で、厚東川の左岸、旧山陽道に沿った場所に、いまも蔵を構えています。当時は近隣に4軒の酒蔵がありました。初代の没後は惣五郎と梅三郎の兄弟が家督を継ぎ、兄の惣五郎は実業家として宇部の中心部に大きな販売場を設けるなど蔵の発展に努めました。蔵の近くにある日吉神社やこうやま橋は、兄弟が寄進したものとして地域に記憶されています。1919年(大正8年)には事業を厚狭と二俣瀬に分け、次男の梅三郎が創業蔵を引き継ぎました。
厚狭の側は現在の永山酒造合名会社で、別の会社として酒造りを続けています。
1942年(昭和17年)に3代目の大八郎が家督を継ぎ、蔵の発展に努めながら小学校の改築など地域への貢献も続けました。蔵は「男山」の銘柄で、アルコールを添加し糖類や酸味料で味を整えた普通酒を中心に造り、昭和30年ごろから昭和48年ごろの高度成長期には、宇部や山口、北九州地方の炭鉱地帯などへ大量に出荷していました。ところが日本酒の出荷量は1973年をピークに下がり続け、永山本家酒造場の売上も1975年ごろから下降します。
蔵はアサヒビールの二次特約店となってビールの卸売りで経営を支えましたが、その繁忙期は酒販法の改定やディスカウント店の出現で長くは続きませんでした。1999年には4代目の義毅が家督を継いでいます。
5代目の永山貴博さんは1975年生まれの次男で、高校卒業後にカナダへ2年間留学し、帰国したころには売上の8割以上をビールが占める状況になっていました。1996年に東広島の国税庁醸造研究所(現在の酒類総合研究所)で酒造りの基礎を学び、そこで広島の酒販店「酒商山田」の山田淳仁さんと出会って、純米酒の市場の可能性を知ります。2001年に杜氏となり、外部の杜氏に学びながら、2002年に初めて自分の酒を仕込みました。山田さんから一文字の銘柄に利点があると勧められ、酒は「貴」と名づけられます。
純米酒専門店に置かれた貴は順調に滑り出し、2003年には雑誌『dancyu』の地方の隠れた名酒部門で第1位を獲得しました。
2007年から永山さんは数回にわたってヨーロッパのワイナリーを訪れ、ワイナリーの人々が醸造よりも畑のぶどうや土を熱心に語ることに驚きます。日本酒も土地から授かった農産物の延長にあるという考えから、酒米づくりへの思いを強めていきました。2013年に代表取締役に就き、2015年には仕込み蔵を改装して、醸造アルコールを使わない純米酒の蔵へと舵を切ります。事務所は昭和3年(1928年)に建てられた旧二俣瀬村役場庁舎で、2017年に国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。
2階のカフェは2022年4月から「フタマタセコーヒー」として営業しています。2024年にはクラフトビールの「Dr.KONG BREWING」も始め、宇部産の酒米と酒粕を使ったビールを造っています。
受賞も重ねています。米国で開かれる全米日本酒歓評会では、2014〜2019年に金賞を7回(うち5回は特別純米 貴の系統)、2014〜2025年に銀賞を8回受けました。フランスの日本酒コンクールKura Masterでは、2024年にクラシック酛部門で純米大吟醸 山田穂 貴 2019が、2026年には純米大吟醸酒(36-50%)部門で純米吟醸雄町 生酒 TAKAと純米大吟醸 貴 ブラックラベルが金賞に選ばれました。
山口県を管轄する広島国税局の清酒鑑評会では2002〜2006年に4回入賞し、2007年に吟醸酒の部で男山、純米酒の部で特別純米 貴が優等賞となったほか、2019年に特別純米 貴 ふかまり、2025年に貴 特別純米(純米酒部門と燗酒部門)が優等賞に入っています。
酒造りの特徴
仕込み水は、敷地内の地下150メートルの井戸から汲み上げる厚東川の伏流水です。厚東川は日本最大のカルスト台地である秋吉台を水源とし、石灰岩のミネラルを含みながら瀬戸内海へ流れる川で、永山本家酒造場があるのは渓流から本流に変わる二俣瀬にあたります。水質は硬度110mg/ℓの中硬水で、この水で醸すと適度な酸味を持ちながら、クリアな辛口の中に米の旨みをしっかり感じる酒になります。貴はアメリカでは、その透明感から「Noble Arrow」(高貴な矢)と呼ばれており、商品名にもその名を使っています。
酒造りは蔵元の永山貴博さんが杜氏として担い、一級酒造技能士の資格を持ち、大津杜氏組合に所属しています。米は、2002年に山口県が県の事業として山田錦の栽培に乗り出したのに合わせて、蔵も山田錦の稲作に取り組み始めました。そこで育てた宇部産の山田錦だけで仕込む酒が純米大吟醸ドメーヌ貴です。2019年には農業法人を設立し、蔵から5キロ圏内の自社田で山田錦と雄町を育てており、田植え体験も開いています。地域の高齢化で農地を託される機会が増え、田んぼを残すことも蔵の務めと考えています。
山田錦55は山口県内の契約農家が育てた山田錦を使い、2019年時点で、使う米の約8割が山口県産でした。
精米は久留米と岡山の精米工場に任せ、麹はすべて箱麹で造り、昔ながらの生酛系酒母も広く取り入れています。2019年の出荷の数割は生酛造りでした。貴の場合は、仕込み後の発酵中はできるだけ混ぜず、米を潰さずに麹菌と酵母の力で溶かすことで旨みを引き出します。搾ったあとの火入れは1度だけで、貯蔵を目的としたタンクはなく、すべての商品は搾って1週間後に瓶詰めし、瓶のまま熟成させます。通常は約3カ月の熟成を経て出荷し、10月1日に解禁する「ふかまり」は5カ月かけて熟成させます。
産地の違う酒米で造り分けた約10種類の純米酒を手がけ、約10カ国へ輸出しています。
代表銘柄
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貴
貴は、5代目の永山貴博さんが2002年に発売した純米酒です。「呑む程に癒やされる米の味のする酒」を表す「癒しと米味」をコンセプトに掲げています。もっとも代表的な酒は、自社生産の山田錦を100%使った純米大吟醸ドメーヌ貴です。最も定番の特別純米は柑橘を思わせる心地よい酸味が持ち味で、2003年にdancyuの地方の隠れた名酒部門で第1位となった酒でもあります。
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男山は、永山本家酒造場が代々造ってきた銘柄で、いまは山口県内のみで販売しています。かつてはアルコールを添加した普通酒が中心でしたが、2015年の醸造からは純米酒のみとなり、特別純米などがあります。全国新酒鑑評会では、平成17酒造年度と平成18酒造年度に入賞しました。
見学・購入
- 蔵見学
- あり(要事前確認)
- 直売所
- 旧二俣瀬村役場庁舎の1階に直売所があり、貴や男山などの日本酒を購入でき、有料で試飲もできます。2階にはカフェのフタマタセコーヒーがあります。駐車場があります。
- 補足
- 蔵見学は予約制の有料プログラムで、日程が決まった日にだけ開かれます。2025年秋以降のコースは、永山貴博さんの案内で田んぼと蔵を巡る約1時間半で、6種類の試飲とオリジナル枡が付いて1,500円、定員は各回10名、15歳以上が対象です。予約は店頭、電話、メール、Instagramで受け付けます。最寄りは山陽本線の厚東駅で、宇部市営バスで木田バス停まで行き、徒歩6分から7分ほどです。蔵開きは2023年から毎年3月末前後に開かれ、2026年は3月29日で、蔵開き限定酒の販売や蔵見学もありました。2025年6月には山田錦の田植え体験も開かれています。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 山口県宇部市大字車地138
- 創業
- 1888年
- 公式サイト
- www.domainetaka.com
出典
japansake.or.jp / domainetaka.com / dancyu.jp / sakenomy.jp / colocal.jp / sakagura-press.com / kunishitei.bunka.go.jp / online.bunka.go.jp / city.ube.yamaguchi.jp / sakeappraisal.org / kuramaster.com / sake-times.com / nta.go.jp / nrib.go.jp / y-shuzo.com / ube-kankou.or.jp / jozo.or.jp / reedit-yamaguchi.com
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