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川尻酒造場

代表銘柄:天恩・飛騨路

岐阜県

GIFU

1839年創業

江戸末期の天保10年(1839年)に創業した岐阜県高山市の酒蔵で、飛騨で唯一の個人経営の蔵元です。1970年代に糖類や調味液の使用、桶売りなどを全廃し、数年の貯蔵期間を置く熟成古酒に特化した製造直販主体の酒蔵となりました。酒造りでは、地元の酒造好適米「ひだほまれ」を使い、和釜と甑(こしき)で蒸しあげるなど手作業の工程を守っています。おり酒などを除き、搾った酒を蔵内で数年貯蔵し、飲み頃を見極めて出荷しており、熟成によって角が取れたまろやかな風味と旨味のある酒質へと変化させています。

「天恩」「飛騨路」「ひだ正宗」などの銘柄を展開しており、製造直販が中心で、フランス・ドイツ・オランダ・香港にも輸出しています。また、銘柄の「原酒 ひだ正宗」がインターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)の日本酒部門でシルバーを受賞しています。

川尻酒造場の歩み

川尻酒造場の創業は、江戸末期の天保10年(1839年)です。飛騨高山の古い町並みの一角、上二之町に蔵を構え、飛騨で唯一の個人経営の蔵元として、熟成古酒を専門に造っています。看板商品は「ひだ正宗」で、「天恩」「山ひだ」「ひだ山水」などの銘柄も手がけています。

転機は1970年代です。糖類や調味液の使用、そして大手の下請けにあたる桶売りをすべてやめ、コクのある酒質を追い求める道を選びました。以来、搾った酒を数年にわたって蔵内で貯蔵し、熟成させてから出す熟成古酒に特化して今日に至ります。流行の吟醸酒ではなく、蔵の造りに合った熟成古酒に力を注ぐと決めたのは先代で、現在は7代目の当主が酒の設計から店頭での接客までを手がけています。

熟成の考え方には独特のものがあります。年数が長ければよいとは考えず、酒ごとに熟成のピークがあり、それを過ぎると少しずつ衰えていくというのが蔵の見方です。そのため熟成年数にはこだわらず、貯蔵酒の状態を見極めて、飲み頃を迎えたものを瓶に詰めます。貯蔵は大きなタンクで行い、瓶に詰めた後の熟成は期待できないとして、早めに飲むことを勧めています。裏ラベルには法律で義務づけられた製造年月に加え、ワインのように醸造年度も独自に記しています。

海外にも熟成古酒のファンがいます。欧州のバイヤーの求めに応じて商品化した純米山ひだ原酒は、フランス、ドイツ、オランダ、香港に輸出されています。2018年にパリで開かれたジャポニスム2018では、2002年醸造のこの酒が採用されました。また2020年には、フランスの日本酒品評会Kura Masterの審査員が日本研修の一環で蔵を訪れ、アルコール添加の熟成酒を味わっています。

コンクールでは、海外の評価が目立ちます。IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)の日本酒部門では、2008年から2016年の間に6つの大会で選ばれています。2008年は天恩(2002酒造年度)が銅賞、原酒ひだ正宗(2000酒造年度)が大会推奨酒、2009年はひだ山水(2000酒造年度)、2011年は天恩(2004酒造年度)が大会推奨酒に選ばれています。

2014年は純米山ひだ(2002酒造年度)が銅賞、2015年は原酒ひだ正宗(2008酒造年度)が銀賞、2016年は純米山ひだ(2002酒造年度)が大会推奨酒でした。Kura Masterでは、2017年に純米山ひだ原酒(2002酒造年度)が純米部門の金賞、2020年に特別純米山ひだ原酒(2017酒造年度)が純米酒部門の金賞に輝いています。ワイングラスでおいしい日本酒アワード2018では、純米山ひだ原酒(2002酒造年度)がプレミアム純米部門の金賞でした。

蔵の発表では、梅酒が「ミラノ酒チャレンジ」のスペシャル部門で2019年と2023年にプラチナ賞、2022年にブロンズ賞を受けています。

酒造りの特徴

原料米は、岐阜県が生んだ酒造好適米「ひだほまれ」だけを使います。純米酒から普通酒まですべての銘柄が対象です。かつては地元の米を自家精米しており、2016年時点でもその造りを続けていました。ひだほまれで醸した酒には、後味にかすかな苦みが残るのが特徴で、蔵はこの苦みを料理と合わせる楽しさとして捉えています。仕込み水は、位山山系の伏流水(軟水)を引く高山の公共上水道の水です。

造りの工程は昔ながらの手仕事が中心です。米は和釜と甑で蒸し、布の上に広げて何度も手を入れながら自然に冷まします。麹は時間をかけて強いものを育て、搾りは桜の木でできた槽と酒袋で行います。酒袋はいまは手入れのしやすい化学繊維製のものを使っています。蔵の説明では、飛騨地域でいまも槽搾りを続けているのは川尻酒造場だけで、大手の蔵では一部の特別な商品にしか行わないこうした方法を、すべての銘柄で行っています。年間の生産量は720ミリリットル瓶に換算しておよそ3万本という少量生産です。

槽搾りで袋の布目を通った細かいもろみは、時間とともにタンクの底へ沈みます。この沈殿した部分がおり酒で、粒々がなく滑らかな口当たりになります。おり酒は熟成させずに出す酒で、それ以外の酒は主に数年間、蔵内で貯蔵熟成させた熟成古酒です。搾った直後の酒は荒さのある味わいですが、熟成を経てまろやかな旨みに変わり、色も無色透明から琥珀色へと移っていきます。

酒質についての考え方もはっきりしています。本醸造や普通酒では醸造アルコールを使いますが、蔵は添加そのものを否定せず、使い方次第だと考えています。糖類は使わず、日本酒度や酸度は杜氏にとっての管理の目安にすぎないとして公表していません。2025年醸造の純米大吟醸(ひだほまれ特等、精米歩合49%)のように、熟成古酒の蔵が新酒向きの酒に挑んだ商品もあります。原酒ひだ正宗と南高梅で仕込む日本酒の梅酒「マサムネくんの絶品!!!梅酒」も造っています。

代表銘柄

天恩

「天恩」は、岐阜県産のひだほまれを100%使った熟成古酒の本醸造で、蔵が「自信作」とする銘柄です。地元で長く愛されてきました。香味のバランスがよく、十分なコクがありながら飲みやすいため、熟成タイプを初めて飲む人にも向いています。スパイスの効いた料理をはじめ幅広い料理に合い、冷酒から燗酒まで楽しめます。ラベルの書は、明治・大正期の文人画家、富岡鐵斎の筆によるものです。IWCでは2008年に銅賞、2011年に大会推奨酒に選ばれました。

飛騨路

「飛騨路」は、おり酒の銘柄です。昔ながらの槽と酒袋で搾るとき、布目を通った細かいもろみが沈んでできる部分を瓶に詰めた、にごり酒の一種です。機械搾りが主流の今では珍しい造りで、粒々がなく、滑らかな口当たりです。原料はひだほまれ100%で、熟成させずに出す酒です。特別純米の飛騨路おり酒は、通常のおり酒よりすっきりとした辛口で、よく振ってから注ぎ、冷酒から常温で楽しむ酒です。

見学・購入

蔵見学
なし
直売所
高山市上二之町の蔵に併設した店舗で、製造直販を行っています。営業時間は9時から17時で、元日は休み、そのほか不定休です。有料試飲は9時から12時と13時から16時30分で、日本酒は1杯150円から300円、梅酒は400円です。座席はなく、立ったままの試飲になります。電話、メール、FAX、ハガキでの注文による発送にも対応しています。
補足
蔵の見学は受け入れていません。団体での入店と試飲もできません。冬に高山の蔵が順に蔵を公開する「酒蔵巡り」には参加しており、2013年と2016年の冬には川尻酒造場でも蔵が公開されました。

見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。

蔵の基本情報

所在地
岐阜県高山市上二之町68
創業
1839年
公式サイト
www.hidamasamune.com

出典

jizake-japan.com / takayama-gh.com / sakenomy.jp / hidamasamune.com / matcha-jp.com / sakesamurai.jp / kuramaster.com / finesakeawards.jp / gifu-sake.or.jp / nta.go.jp / flat-gifu.com

本ページは自動収集した情報を編集したものです。公開資料に基づく記事で、現地取材・実飲による評価ではありません。内容に関するご指摘はお問い合わせへお寄せください。