桝一市村酒造場
代表銘柄:スクエアワン・鴻山・白金
長野県
NAGANO
1755年創業
1755年(宝暦5年)に長野県小布施町で創業した老舗酒蔵です。12代当主の高井鴻山は葛飾北斎を招きパトロンとして支えたことで知られ、栗菓子で有名な「小布施堂」と同族にあたります。醸造用アルコールを使用しない純米酒のみを手がけており、ブレンドを行わずに銘柄ごとに単一の酒造好適米(美山錦、山田錦、備前雄町など)を使用する酒造りが特徴です。2000年には木桶仕込みの醸造を復活させました。
酒造りの原点を表す「スクウェア・ワン」、江戸時代の看板銘柄を木桶仕込みで復活させた「白金」、高井鴻山にちなんだ「鴻山」などの銘柄を展開しています。流通面では一般的な卸販売を行わず、製造の全量を本店と公式オンラインショップでの直接販売のみに限定しています。直営本店には「手盃(てっぱ)台」と呼ばれるカウンターがあり、試飲や立ち飲みを楽しむことができます。
桝一市村酒造場の歩み
桝一市村酒造場は宝暦5年(1755年)、信州小布施の地で創業しました。屋号は「桝一(ますいち)」と称され、創業当時の蔵(上の蔵)は今も現役の酒蔵として使われています。明治時代に入るまでは酒造りのほか塩問屋・なたね油・お茶なども手がけていましたが、その後は酒造業一本に絞りました。天保13年(1842年)から嘉永元年(1848年)にかけて、12代当主の高井鴻山(市村三九郎)は小布施の文化人として、江戸から浮世絵師の葛飾北斎を3度にわたって招き、その生活と創作活動をパトロンとして支えました。
大正12年(1923年)には小布施果実加工株式会社(現在の小布施堂)を設立し、栗菓子を商う一族としての歩みもここから始まっています。
昭和に入ると、往年の代表酒であった「櫻川」は製造中止となり、高度経済成長期には交流のあった6社の造り酒屋と共同出資で雲山銘醸株式会社を設立しました。1959年には共同銘柄「雲山」を開発し、これに伴って創業期からの銘柄「白金」の醸造はいったん休止されています。
平成に入ってからは共同瓶詰め体制を離れ、独自銘柄の製造へと回帰しました。1990年代には大吟醸純米生酒の「碧漪軒」や「鴻山」を皮切りに独自銘柄の開発を進め、1997年には店舗の改装や寄り付き料理を出す「蔵部」の建築など大がかりな改革を行い、共同銘柄「雲山」に代わる新銘柄として、屋号の「〼一」を英語にあてはめた「スクウェア・ワン」を開発しました。2000年には蔵として50年ぶりとなる木桶仕込みを復活させました。
桝一はこれを日本で初めての木桶仕込みの復活と位置づけており、創業時の代表銘柄「白金」を、往時と同じ酒造好適米「金紋錦」を使って蘇らせています。その後も、もち米で仕込む「櫻川」を「州」と名を改めて復活させたり、にごり酒の「ろく」を手がけたり、高精白の純米大吟醸生酒「応龍」を開発したりと、ラインナップの幅を広げてきました。
酒造りの特徴
桝一市村酒造場は全量が純米酒で、醸造用アルコールは一切使用していません。銘柄ごとに酒造好適米を一種類に絞り、酒母・麹米・掛け米のすべてに同じ米を用いてブレンドを行わない造りが特徴で、スクウェア・ワンには長野県産の美山錦、鴻山には兵庫県産の山田錦、碧漪軒には岡山県産の備前雄町、白金には長野県産の金紋錦と、銘柄ごとに異なる酒米の個性を生かしています。精米歩合も銘柄によって異なり、大吟醸系の鴻山と碧漪軒は40%まで磨き上げる一方、スクウェア・ワンと白金は59%に留めています。
原料米はすべて国産(長野県・兵庫県・岡山県産)で、ブレンドを一切しない一本ごとに異なる味を目指すこうした造りは、いわば「シングルモルト酒」です。
2000年に復活させた木桶仕込みは、蔵の奥から見つかった古い木桶の写真をきっかけに新しい桶を探し歩き、新潟県新井の桶職人の協力を得てようやく実現したものです。これと合わせて、蔵に眠っていた文献に記された先人の記録をもとに、乳酸菌を大気中から自然に取り込む山廃仕込みも合わせて復活させました。木は絶えず呼吸するため酒が熟成されやすく、複雑なコクとまろやかさが生まれる一方、温度管理や洗浄の手間はホーローやステンレスのタンクに比べて大きく、年ごとの気候によって出来上がりの味わいが変わるのも特徴です。
仕込みは12月から2月にかけての寒仕込みで行われ、現在の杜氏は市川直道で、50年以上の経験を持つベテランの大杜氏が毎年冬の仕込み時期に加わり、気温や天候を見極めながら酒造りにあたっています。
生産量はおよそ300石(54,000リットル、一升瓶換算で約3万本)と、長野県内の造り酒屋の中でも最も小規模な部類に入ります。品質管理のため一般的な卸売りは行わず、製造した酒の全量を小布施の本店と公式オンラインショップでの直接販売のみに限定しているのも大きな特徴です。
代表銘柄
スクエアワン
屋号「〼一(ますいち)」を英語にあてはめて名付けられた純米酒で、「原点、振り出し」という酒造りの原点に立ち返る思いが込められています。吟醸酒ブームのさなかの1997年、あえて辛口の純米酒を目指して開発されました。長野県産の美山錦を掛け米・麹米ともに単一で使用し、精米歩合59%、日本酒度は+7で、ブレンドを行わない昔ながらの製法を貫いた、しっかりとした飲みごたえのある味わいに仕上げられています。
鴻山
江戸時代末、浮世絵師の葛飾北斎を江戸から3度にわたって小布施に招き、パトロンとして支えた12代当主・高井鴻山にちなんで名付けられた純米大吟醸生酒です。その風流かつ成熟した精神に着想した、キレと膨らみを併せ持つ味わいに仕上げられています。兵庫県産の山田錦を精米歩合40%まで磨いて使用し、火入れをしない生酒ならではのフレッシュさがあり、日本酒度はプラス7の辛口です。
白金
桝一の創業期からの看板銘柄で、昭和期の共同瓶詰め体制のもとで醸造がいったん休止されていましたが、2000年に蔵として50年ぶりとなる木桶仕込みを復活させた際、往時と同じ酒造好適米「金紋錦」を精米歩合59%まで磨いて使い、山廃仕込みで現代に蘇らせました。日本酒度は+10の辛口で、木桶ならではの複雑なコクとまろやかさがあり、年ごとに味わいがゆらぐのも、この造りならではの持ち味です。
見学・購入
- 蔵見学
- なし
- 直売所
- 桝一本店(長野県上高井郡小布施町小布施807、営業時間9時30分から17時、年中無休・年末年始は時短営業)
- 補足
- 本店には「手盃(てっぱ)台」と呼ばれる試飲カウンターがあります。「手盃(てっぱ)」は量り売り試飲を意味する北信地域の言葉で、蔵にある全銘柄をその場で味わうことができます。2階には仕込み時期に蔵人が寝泊まりする部屋があり、店内には蔵人の休憩所兼会議室である「寄り付き」も設けられ、造り酒屋ならではの雰囲気を感じられる造りになっています。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 長野県上高井郡小布施町小布施807
- 創業
- 1755年
- 公式サイト
- www.masuichi.com
出典
obusekanko.jp / sakedata.jp / masuichi.com / gltjp.com / go-nagano.net / wikipedia.org / nagatasushi.net / yahoo.co.jp / rurubu.jp / ja.wikipedia.org
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