井賀屋酒造場
代表銘柄:岩清水
長野県
NAGANO
1853年創業
長野県中野市に所在する1853年(嘉永6年)創業の酒蔵で、代表銘柄は「岩清水」。夫婦二人で醸造を行う生産量が極めて少ない蔵である。
「自然に寄り添い、自然の働きを最大限に引き出す酒造り」を基本方針とし、伝統を受け継ぎながら論理的なデータに裏付けされた技術を取り入れている。酒米は全量が地元・長野県中野市産(美山錦、ひとごこち、山恵錦)で、減農薬・減化学肥料等で育成された酒好適米を使用している。
「岩清水」の純米酒は全量が無濾過・生原酒であり、一般的な原酒よりも低アルコールに仕上げることで、料理との相性(ペアリング)を重視した酒質が特徴である。麹歩合を高めた個性的な仕込みや長期低温熟成など様々な酒造りに取り組むほか、出荷後の品質を保つための貯蔵管理・流通管理にも徹底した配慮を行っている。
井賀屋酒造場の歩み
江戸時代の中野には、5万石余の天領を治める中野陣屋が置かれていました。明治3年12月(新暦では1871年2月)には世直し一揆の「中野騒動」が起こり、中野県庁や周辺の豪農商の家など500軒余が焼失します。井賀屋の蔵もこのとき被害に遭い、現在の蔵の所在地へ移りました。
蔵は嘉永6年(1853)を創業の年としています。ただ、中野騒動で古い資料の多くが失われたため、正確な創業年や蔵元の代数は分かっていません。嘉永6年にはすでに酒造業が営まれており、蔵に残る石灯籠には文政12年(1829)と刻まれていることから、「井賀屋」の屋号はさらに古くから続いていたと考えられます。当時は酒造業の権利が屋号ごと売買されることがあり、この屋号もさまざまな家に受け継がれてきました。明治34年(1901)に現在の小古井家が屋号を引き継ぎます。
当時の蔵元・小古井諦造が良い酒のための仕込み水を探していたとき、生家「岩舟」で湧いていた清水で仕込んだところ非常においしい酒ができ、そこから「岩清水」が誕生しました。
現在の蔵元杜氏・小古井宗一さんは、2003年ごろに蔵へ戻り、2005年から自ら杜氏として酒造りを始めました。当時は新潟を代表とする端麗辛口の酒がもてはやされ、水のようにすっきりした酒と魚料理が求められていた時代です。宗一さんは畜産の盛んな地元・中野市の信州牛のすき焼きに合う酒を思い描き、恩師に相談して、2006年から使用する酒米の半分を麹にする「五割麹」の仕込みを始めました。確立した配合のない製法だったため一から手探りで挑戦を重ね、ようやく兆しが見えたのは2012年のことでした。
2016年に枝里さんと結婚し、2017年元旦から杜氏の宗一さんと女将の枝里さんによる夫婦二人三脚の酒造りが始まりました。枝里さんの前職は、肉料理と日本酒のペアリングコースを出す飲食店です。前菜からデザートまでをすべて岩清水で合わせられる酒を造ってはどうかという提案を受けて、料理との相性を軸にした「新生・岩清水」が誕生しました。この年には冷却設備と搾りの槽を新しくしています。2006年に仕込みを始めた黄色ラベルの五割麹も、ラベルを改めて「Origine」の名で生まれ変わりました。
2026年時点でも、夫婦二人だけで酒を醸しています。
2018年には、長野県が同年4月に品種登録した酒米「山恵錦」に初めて挑戦し、精米歩合39%まで磨いた「ROSIER」を造りました。2025年には酒米の約8割を麹にする「VENUS」を、麹づくりから約9か月かけて仕上げています。2026年にはGOWARINGOが2年ぶり、SUNQRINGOが3年ぶりに造られました。東京や長野のレストランでは、岩清水だけでコース料理を組むペアリングの会も開かれています。
酒造りの特徴
酒米は、長野県が酒造好適米に指定する美山錦、ひとごこち、山恵錦の3種類です。2017年産からすべて地元・中野市産を使い、地元の農家と直接契約して、減農薬・減化学肥料で栽培してもらっています。栽培方法や土壌を分析して作付けする水田を選び、銘柄ごとに最適な酒米を育てることを大切にしています。中野市は河岸段丘や扇状地からなり、気温の日較差が大きく降水量が少ない土地です。仕込み水は、2017年からそれまでのやや硬めの水に代えて、敷地内の井戸水を復活させてろ過した超軟水(ほぼ硬度ゼロ)を使っています。
ミネラル分が少ない超軟水は麹の力を高める必要がある一方、麹の割合を増やす蔵独自の製法に欠かせない水です。
蔵の看板は、麹米の割合を一般的な約2割の2.5倍にあたる5割まで高める「五割麹」です。仕込みは総米600kgの小仕込みで、2024年のOrigineではこのうち300kgを麹にしています。麹室が小さく一度に仕込めるのは最大90kgのため、麹づくりを4回に分け、1回14日、合計56日をかけました。続く酒母づくりに19日、三段仕込みから発酵まで72日、搾りに14日を要し、一般的な仕込みの約3〜4倍の時間と手間がかかります。
低アルコールの酒は未熟な成分の分解に時間がかかるため、醪の状態で味を見て、苦味や渋味がなくなるまで発酵を続けます。一般的には早ければ15日ほどで搾れる醪でも、岩清水では60日ほどの発酵期間を設けています。
純米酒は無濾過の生原酒を基本とし、搾ったあとに加水して度数を下げるのではなく、原酒のまま低アルコールに仕上げます。多くの商品でアルコール度数は10〜13%ほどで、一般的な原酒の16〜18度より低くしてあります。Origineの搾りは最初に袋吊りを行い、その後は槽で圧力を少しずつかけます。槽から出る酒はそのまま瓶詰めする直汲みで、毎日その時に出る分だけを詰めながら約14日かけて優しく搾ります。
袋吊り、オリがらみのSouplesse、クリアなHarmonie、しっかりしたCorseなど、搾り方や部分ごとに味わいを分けて商品化する銘柄もあります。搾る工程から保管まで、生酒は-5℃以下で管理しています。酒母室、もろみ発酵タンク、槽場は冬と同じ低温に管理できる設備を備え、一年を通じて仕込めます。
ペアリングを軸に、麹の割合や酵母、仕込み方を変えた銘柄がそろいます。惑星シリーズは、麹2割のEARTH、約3.5割のJUPITER、5割のMARS、約8割のVENUSの4本です。ほかに、リンゴ酸を多く生む酵母を使ったGOWARINGO(5割麹)、NIWARINGO(2割麹)、SUNQRINGO(麹歩合39%)があります。仕込み水を極端に減らす「濃縮仕込」で、デザート用のNEW SUNSETと食前酒用のNEW SUNRISEも造りました。
2008年に搾った酒を生のまま-5℃で貯蔵して火入れしたKISEKIのように、長期の低温熟成を経た酒もあります。岩清水では、先入観なく味わってほしいという考えから、特定名称と精米歩合をラベルに表示しない方針です。
代表銘柄
岩清水
蔵の代表銘柄で、Origine、MARS、GOWARINGOなど蔵の商品名はいずれも「岩清水」ブランドの中に並びます。純米酒は無濾過の生原酒を基本とし、アルコール度数は多くの商品で10〜13%ほどと低めで、酸とうまみを生かした味わいです。肉料理から洋食、中華まで幅広い料理との相性を意識して造られ、搾りから保管まで-5℃以下で管理されています。
見学・購入
- 直売所
- 蔵の直売所で販売しています。WEB販売は期間と数量を限定して受け付けています。取扱いの酒販店は、蔵のウェブサイトに掲載されています。
- 補足
- 蔵は、生酒の品質管理ができる酒販店と飲食店にのみ卸す方針です。アクセスは、長野電鉄の信州中野駅から約1.0km、徒歩15分です。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 長野県中野市大字中野1597
- 創業
- 1853年
- 公式サイト
- igayasyuzou.com
出典
igayasyuzou.com / ameblo.jp / jp.sake-times.com / nagano-sake.or.jp
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