布屋 原酒造場
代表銘柄:元文
岐阜県
GIFU
1740年創業
岐阜県郡上市に位置する布屋 原酒造場は、江戸時代の元文5年(1740年)に創業した清流・長良川沿い最北の酒蔵です。代表銘柄である「元文(げんぶん)」は、創業時の年号にちなんで名付けられました。仕込み水には自家敷地内から汲み上げる白山水系の伏流水を使用し、原料には岐阜県産米を採用。12代目当主自らが杜氏を務めて酒造りを行っています。酒造りの大きな特徴は、自然界の花から採取された天然の「花酵母」を用いた全量花酵母仕込みを行っている点であり、「さくら」や「月下美人」「菊」などの花酵母を生かした芳醇な酒を手掛けています。
受賞歴も数多く、「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2026」で「元文 花酵母 さくら」が金賞を受賞したほか、「全国燗酒コンテスト2025」金賞や「美酒コンクール2024」ライト&ドライ部門・リッチ&ウマミ部門での金賞など、各地で評価を獲得しています。
布屋 原酒造場の歩み
布屋 原酒造場は、江戸時代の元文5年(1740年)、八代将軍・徳川吉宗の時代に、現在の郡上市白鳥町白鳥にあたる地で創業しました。清流・長良川の最上流に位置する、長良川沿い最北の酒蔵です。屋号の「布屋」には由来が伝わっています。先祖が1186年に近江国八幡の惣市で手に入れた白布が、持つ者に幸運をもたらす縁起物だったことにちなみ、創業時の当主が「布屋」と名付けたというものです。銘柄の「元文」も創業の年号に由来します。現在の当主は原元文さんで、布屋としては12代目、原家としては39代目にあたります。
創業時に建てられた蔵は、いまも仕込みに使われています。白鳥の町は明治と大正の2度にわたる大火に見舞われ、母屋は焼失しましたが、蔵は延焼を免れました。正面の主屋は大正11年の大火の後に建て替えられたもので、袖壁を従えた間口の広い町家建築です。岐阜県の「時代を伝える身近な歴史的建造物」にも数えられています。
原さんは東京農業大学醸造学科の卒業論文で、抗菌性物質「イーストサイジン」の研究に取り組みました。その後、恩師の中田久保教授がイーストサイジンを応用して花から優良な清酒酵母を分離することに成功し、原さんは花酵母の酒造りに関わるようになります。毎月、岐阜から東京農大へ通って試験醸造の発酵状態を見守り、4年後に自社の酒をすべて花酵母で仕込むと決めました。それまではきょうかい酵母で造っていました。
切り替えの1年目は従来の造りを引きずって思うような酒にならず、2年目から花酵母用の造りを徹底し、4〜5年ほどで手応えを得たそうです。原さんは東京農大花酵母研究会の3代目会長も務めました。
花酵母の酒を知ってもらうため、原さんは仕上がりを競う新酒鑑評会ではなく、消費者が普段飲む酒を対象にした全国酒類コンクールへ出品しました。2019年ごろの時点で、初めての出品から約10年がたっていました。最初の数年は10位以内に入っても上位には届かず、思い切って花酵母らしい酒を造った翌年に第1位を得て、それから続いていると原さんは話しています。
蔵が公表している結果では、全国酒類コンクールの第1位が2016年秋季から2022年秋季までに延べ15回あり、さくら、つつじ、月下美人、菊、アベリア、「布屋蔵出し」、新酒しぼりたて生原酒が受賞しています。2016年秋季は元文・花酵母のつつじが本醸造部門で第1位、さくらが第2位、菊が吟醸・大吟醸部門で第2位で、2016年春季には月下美人が純米酒部門で第2位でした。2018年春季は月下美人が純米酒部門で第1位、2018年秋季は第1位特別優秀賞です。
2019年は春季に月下美人が純米酒部門で第1位特賞、秋季にさくらが本醸造部門で第1位特賞でした。2020年春季は、菊が吟醸酒・大吟醸酒部門で第1位特賞、月下美人が純米酒・特別純米酒部門で第1位、さくらとつつじが本醸造酒・特別本醸造酒部門で同点の第1位で、同年秋季には「布屋蔵出し」と新酒しぼりたて生原酒が第1位でした。
2021年春季と2022年春季には、さくらが本醸造酒・特別本醸造酒部門で第1位最優秀賞を重ね、2022年秋季にはアベリアが純米吟醸酒・純米大吟醸酒部門で第1位最高賞、菊が吟醸酒・大吟醸酒部門で第1位優秀賞を得ています。ブレンドの「布屋蔵出し」と新酒しぼりたて生原酒は、全国レギュラー酒コンクールでも、2016年に「布屋蔵出し」が第1位、新酒生原酒が特賞の第1位、2018年に「布屋蔵出し」が第1位、2019年度に「布屋蔵出し」が第1位、新酒しぼりたて生原酒が第1位特賞でした。
近年は、Japan Women's SAKE Award「美酒コンクール」の第1回で菊がフルーティー部門金賞、2024年はさくらがライト&ドライ部門、アベリアがリッチ&ウマミ部門でそれぞれ金賞を受賞しました。全国燗酒コンテストでは、2024年にさくらがプレミアム熱燗部門、2025年に月下美人がプレミアムぬる燗部門で金賞を受けています。2026年には「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2026」で「元文 花酵母 さくら」が金賞に選ばれました。
「布屋蔵出し」は俳優の六角精児さんのお気に入りの酒として知られ、雑誌「dancyu」2019年3月号の日本酒特集「2019注目の酒」にも掲載されました。
酒造りの特徴
酒造りはすべて天然の花酵母で行います。使う花酵母は、さくら、つつじ、月下美人、菊、アベリアなどで、花ごとに香りと味わいが異なります。主な商品は、さくらが精米歩合70%の本醸造、月下美人が精米歩合60%の特別純米酒、アベリアが精米歩合60%の純米吟醸、菊が精米歩合50%の大吟醸です。さくら、月下美人、アベリア、菊の酵母をブレンドして仕込む「布屋蔵出し」は精米歩合70%で、夏の季節限定酒「郡上乃涼風 冷酒」も天然花酵母仕込みです。
原さんは花酵母の魅力として、酒質が安定していること、熟成させてもひね香が出にくく、まろやかに仕上がることを挙げています。精米歩合70%でも吟醸クラスの酒ができ、きょうかい酵母のように高精米を求めないことも理由に挙げています。花酵母は発酵の勢いが強いため、もろみの活性を独自の方法でコントロールする必要があります。また、泡なし酵母なので、泡の噴き出しを防ぐ道具は使いません。2021年時点では、無菌室で寒天培地に植えた花酵母を培養液に接種し、恒温器で2〜3日培養していました。麹室はおよそ30年前に新しくしたものです。
原料には地元の岐阜県産米を使い、当主自らが杜氏を務めます。仕込み水は、霊峰白山の伏流水を敷地内からくみ上げていると蔵は説明しています。国税庁の令和2年度「日本産酒類のブランド化推進事業」で行われたテロワール・ブランディングの水質分析では、硬度22.97の軟水で、日本の名水百選のほとんどが入る範囲に含まれる水質でした。
花酵母の酒だけでなく、日本酒を配合した化粧石鹸や化粧水、手肌用美容液「ハンドセラム」も販売しています。当主は岐阜県の花であるれんげの花酵母を探し続けており、2021年時点で足掛け12年に及んでいました。
代表銘柄
元文
創業の年号にちなむ代表銘柄で、当主の名でもあります。すべての酒を天然花酵母で仕込み、「元文 花酵母 さくら」「月下美人」「アベリア」「菊」を造り分けています。さくらは本醸造、月下美人は特別純米酒、アベリアは純米吟醸、菊は大吟醸で、花ごとに香りと味わいが異なります。4種の酵母をブレンドした「布屋蔵出し」は、全国レギュラー酒コンクールで2016年、2018年、2019年に第1位を獲得し、2020年秋季の全国酒類コンクールでも第1位でした。
見学・購入
- 蔵見学
- なし
- 直売所
- 蔵(郡上市白鳥町白鳥991)で販売しています。定休日は土曜・日曜・祝日で、受付は2021年時点では平日9時から17時でした。地方への発送にも対応します。
- 補足
- 酒蔵見学は作業の都合により受け入れていません。長良川鉄道の美濃白鳥駅から徒歩2〜3分、東海北陸自動車道の白鳥ICから車で5〜6分で、駐車場は第1駐車場に20台分あります。臨時休業もあるため、来店前に電話での確認をおすすめします。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 岐阜県郡上市白鳥町白鳥991
- 創業
- 1740年
- 公式サイト
- genbun.sakura.ne.jp
出典
sake-times.com / sakura.ne.jp / nagaragawastory.jp / shinkin-takaramono.com / aun-web.jp / sakagura-press.com / genbun.sakura.ne.jp / tarutsuna.jp / tanoshiiosake.jp / genbun.sblo.jp / pref.gifu.lg.jp
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