小山酒造(廃業)
代表銘柄:吟の舞
東京都
TOKYO
1878年創業
小山酒造は、東京都北区岩淵町に位置していた酒蔵です。創業者である小山新七が家業の手伝いで赤羽・岩淵の地を訪れ、酒造に適した湧水に着目したことをきっかけに、1878年(明治11年)に埼玉県の小山本家酒造から独立する形で創業しました。
仕込み水には地下130メートルから汲み上げた秩父源流の湧水を使用し、代表銘柄「丸眞正宗」(そのラインナップの一つに「吟の舞」)などを展開。「東京の地酒」として親しまれ、都心の都市化が進む中で、戦前から続く酒蔵としては東京23区内で唯一、酒造りを続けていました。
しかし、職人の確保が難しくなったことなどを背景に2018年(平成30年)2月28日をもって清酒製造事業から撤退(廃業)し、140年の歴史に幕を下ろしました。「丸眞正宗」ブランドの製造・販売は、遠縁にあたる埼玉県の小山本家酒造へ2018年に継承されました。
小山酒造(廃業)の歩み
小山酒造は、1878年(明治11年)に初代の小山新七が創業した酒蔵です。新七は埼玉の小山本家酒造の次男に生まれ、家業の手伝いで宿場町だった赤羽・岩淵を行き来するうちに、この地の湧き水が酒造りに適していると知り、水質を調べたうえで、独立して創業を決意しました。現在の北区岩淵町にあたるこの一帯は、埼玉から東京へ物資を運ぶ中継点で、荒川の船運にも恵まれていました。のちの国道122号にあたる街道を行く旅人に酒を出す店先は、ひとときの憩いの場になっていました。
代表銘柄の「丸眞正宗」は、「まるまる本物」の意味を込め、切れ味のよい名刀の正宗になぞらえて、キレの良い後味を表した名前です。蔵には「愛酒報國」の四文字が掲げられていました。二代目が作った言葉で、酒税が国の大きな財源だった時代に、国を愛するなら酒を飲もうという意味を込めたものです。2013年の時点でも、社屋の上部にこの四文字が残されていました。
明治のころには、東京23区内にも60軒ほどの酒蔵がありました。関東大震災や空襲で蔵が倒れ、地価の高い東京では再建が難しく、酒蔵は次第に減っていきました。昭和11年には東京の酒蔵が11社まで減りました。小山酒造も関東大震災では煙突が倒れる被害を受けましたが、戦災はまぬがれて酒造りを続け、戦前から続く酒蔵としては東京23区内で唯一の存在になりました。
平成14年(2002年)には、生産の効率化と、この地で酒造りを続けるために、蔵を建て替えました。敷地内に酒蔵と工場を新築して移し、空いた場所には9階建ての賃貸マンションを建てて、不動産賃貸業を併営しながら経営を続けました。売上高は1990年9月期の3億5,000万円をピークに下がり、2011年9月期には1億7,400万円と半減しましたが、2012年9月期から2016年9月期まで5期連続で増収となりました。
経営は5代目の小山周社長が担い、常務できき酒師の小山久理さんが蔵内のイベントや広報を手がけ、お酒と食べ物を組み合わせた催しを企画しました。2016年には、大正時代に小山酒造が名付けた銘柄「東京盛」を、純米大吟醸として約40年ぶりに復刻する取り組みを進めました。
2018年1月、小山酒造は書面で、同年2月28日をもって清酒製造業から撤退すると知らせました。創業から140年の歴史に幕を下ろし、東京23区内で最古の酒蔵は姿を消しました。職人の確保が難しくなっていたことが、背景にあったとみられます。丸眞正宗の銘柄は、オーナー家同士が遠縁にあたる、さいたま市の小山本家酒造が2018年に継承しました。小山本家酒造は1808年(文化5年)に創業し、世界鷹などで知られる酒蔵です。製造は小山本家酒造が担うことになり、東京23区内で造られる酒ではなくなりました。
東京盛の銘柄も、2020年に小山本家酒造が引き継ぎ、山田錦100%の純米吟醸を発売しました。
酒造りの特徴
仕込み水は、蔵の敷地にある自社井戸の地下130メートルから汲み上げる水です。秩父山系を源流とする浦和水脈の伏流水で、中硬水にあたり、すっきりした味わいで発酵させやすい水です。岩淵の一帯は昔から湧き水が豊富で、少し掘ると水が2メートルも噴き出したと伝わります。創業者が発見した湧水を、創業以来ずっと使い続けてきました。
酒造りは、創業のころから新潟の出稼ぎの職人を招いて行い、越後杜氏の流れをくんでいました。時代が進むと難しくなり、杜氏・蔵人制をやめて、社員が造る方式に切り替えました。蔵の建て替えと設備の一新も行いました。新しい蔵は鉄筋コンクリート造りで、創業以来続けてきた冬の寒さを利用した寒仕込みから、温度管理をした部屋での酒造りに切り替えています。造る量は2012年の時点で年間約400石で、2016年の時点では昭和50年ごろの5分の1ほどに減っていました。丸眞正宗の基本は変えず、時代の好みに合わせて米や酵母を選び直し続けました。
酒質は辛口淡麗で、キレの良さが持ち味です。食中酒として飲まれることを目的に、スッキリとしたタイプに仕上げ、料理と合わせたときに食事がおいしくなるよう考えて造っていました。吟醸辛口は爽やかな酸味とキレのある後味、純米吟醸はおだやかな吟醸香とまろやかな味わいが特徴で、ぬる燗が勧められていました。本格辛口は井戸水で仕込んだ普通酒で、常温でも熱燗でも冷やでも飲み飽きしない酒です。大吟醸は酒造好適米を高精白し、厳選した酵母で寒い時期に低温発酵させた最上級の酒でした。
このほか、純米大吟醸、荒川物語、ぎんから、冬季限定のしぼりたてなども並びました。
販売は、ほとんどが北区のある東京の城北エリアで売り切れるほどの地域密着でした。赤羽のおでん店の丸健水産では、丸眞正宗をおでんの出汁で割る「だし割り」が親しまれました。池袋のスパ施設では、2016年10月から毎月26日に丸眞正宗を使った日本酒風呂が行われました。蔵見学では、酒造りの工程を映像で説明し、試飲も楽しめました。
代表銘柄
吟の舞
丸眞正宗のラインナップの一つで、低アルコールの純米大吟醸でした。精米歩合は50%で、原材料は国産米と国産米の米麹、アルコール度数は13度です。さっぱりとカジュアルに楽しめる味わいで、贈答向けに専用の化粧箱が付いていました。720ml入りで、公式通販で販売されていました。
見学・購入
- 蔵見学
- なし
- 補足
- 2018年2月28日に清酒製造から撤退したため、蔵見学は行われていません。閉鎖前の蔵見学は平日に開かれ、酒造り工程の映像説明と試飲が中心でした。仕込みの時期(9月上旬から5月上旬)には、ガラス越しに作業を見られることもありました(2016年当時の案内)。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 東京都北区岩淵町26-10
- 創業
- 1878年
出典
wikipedia.org / tokyobussanten.jp / tsr-net.co.jp / sakura.ne.jp / tokyo-cci.or.jp / sakenomy.jp / koyamashuzo.co.jp / koyamahonke.co.jp / prtimes.jp / timeout.jp / hotpepper.jp / surugabank.co.jp / nihonmono.jp / dailyportalz.jp
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