橘倉酒造
代表銘柄:菊秀
長野県
NAGANO
1696年創業
長野県佐久市臼田に位置する橘倉酒造は、元禄9年(1696年)の創業より300年以上の歴史を誇る酒蔵です。屋号の「橘倉(きつくら)」は、蔵元の井出家の先祖が平安時代に橘姓だったことに由来し、明治期には自由民権運動で知られる中江兆民との交流もあったと伝えられています。
代表銘柄である「菊秀(きくひで)」は、寒冷な信州佐久の気候風土のもと、八ヶ岳山系・千曲川の清冽な伏流水と長野県産の美山錦などの原料米を用いて醸されています。機械化や合理化のみに依存せず、伝統的な手造り製法と原料の厳選を重んじ、米本来の旨味や個性を引き出す酒造りが特徴です。
銘柄には無濾過生原酒の「菊秀 無尽蔵」や純米大吟醸などの日本酒があるほか、そば焼酎や甘酒の製造、酒蔵に宿泊して酒造りを体験できる「クラビトステイ」など多様な事業も展開しています。全国新酒鑑評会においても入賞や金賞の受賞歴を有しています。
2026年7月に新たなオーナーのもとで新しい体制に移りました。
橘倉酒造の歩み
橘倉酒造は、長野県佐久市臼田にある酒蔵です。蔵に伝わる記録には、元禄9年(1696年)に村内で酒屋を営んでいたという記述があり、享保5年(1720年)には酒株の受け渡しをしたことを示す古文書も残っています。三百年以上の歴史を持つ、日本でも古い酒屋の一つです。屋号の「橘倉」は、先祖が平安時代に橘姓だったことにちなみ、「橘の酒倉」を意味します。長らく井出家が蔵元を務め、19代当主の井出平さんが社長、井出民生さんが会長を務めてきました。2026年7月、蔵は新たなオーナーのもとで新しい体制に移りました。
新しい代表者の氏名など、経営の詳細はまだ明らかになっていません。
蔵は、橘倉三百年の歴史を貫く横糸は「地域」、縦糸はそこで育まれた「民権」だと考えてきました。明治期の当主・井出五六は自由民権運動に関わり、孫文や中江兆民と親交がありました。明治初年には、自由民権運動で全国を遊説した中江兆民が橘倉で一夜を過ごし、「民重きを為す(民為重)」の書を遺していきました。こうした蔵の歴史資料を公開する場として資料室「不重来」を設けていますが、2026年10月時点ではリニューアル中のため、見学は休止しています。
江戸の頃に開かれていた新酒献上祭(お披露目会)は、芳名帳が残っています。蔵はこれを現代版の新酒披露の会として復活させ、例年11月下旬に地元の方々を迎えてきました。2020年はコロナ禍のため大勢での開催を見送り、ライブ中継とオンライン懇親会で行いました。また、臼田の小満祭に合わせて年に一度蔵を開放する「遊蔵楽酒」は、2018年に12回目を迎えています。
2020年は、春の全国新酒鑑評会(令和元酒造年度)、秋の長野県清酒品評会、第91回関東信越国税局酒類鑑評会のそれぞれで入賞を果たしました。関東信越国税局酒類鑑評会では純米吟醸酒の部で優秀賞を受賞し、蔵はこれを20年ぶりの三賞そろい踏みと位置づけています。翌2021年の第92回関東信越国税局酒類鑑評会でも、純米吟醸酒の部で優秀賞を受けました。
さらにさかのぼると、平成4年(1992年)の第55回関東信越国税局酒類鑑評会で首席優勝し、平成5年・6年(1993・1994年)には長野県清酒品評会で2年連続の首席優勝も果たしています。蔵は平成21年春の時点で、全国新酒鑑評会の金賞12回、関東信越国税局酒類鑑評会の優秀賞38回(連続14回を含む)を数えていました。
全国新酒鑑評会では、平成14酒造年度以降に限っても7回入賞しています。そのうち金賞は平成15酒造年度、平成16酒造年度、平成19酒造年度の3回です。ほかに平成18酒造年度、平成20酒造年度、平成22酒造年度、令和元酒造年度が入賞でした。令和元酒造年度は金賞の選定がなく、入賞酒のみが発表された年です。
酒造りの特徴
仕込み水は、敷地内の地下130メートルの井戸から汲み上げる八ヶ岳山系の伏流水で、仕込みはすべてこの井戸水でまかなっています。蔵はこの水を千曲川の伏流水とも紹介しています。原料米については、全量を長野県産米で造ることを掲げています。米作り農家とともに原料の吟味と厳選に努め、杜氏をはじめ蔵人とは製法の純正さと伝統性を重んじて酒を醸す、というのが蔵の考え方です。酒は工業製品ではなく、麹菌と酵母がもたらす自然の賜物だとして、佐久の気候風土に根ざした酒造りを目指しています。
2021年からは、三百年の歴史で初めてとなる酒米の自社栽培に取り組み、金紋錦や美山錦なども育てています。2021年の関東信越国税局酒類鑑評会に出品した当時の杜氏は、井上嘉正さんでした。
「無尽蔵」は、菊秀の純米吟醸酒シリーズです。佐久の寒冷な気候のもと、寒仕込みで丹精込めて醸した純米吟醸を、無調整のまま瓶詰めした無濾過生原酒を柱にしています。季節ごとに変わる日本酒の味わいを旬の時期に楽しんでもらおうという企画で、極寒の寒仕込みの純米吟醸を謹封して夏用に一度だけ瓶火入れした「夏吟醸」や、夏の土用を越えて熟成した純米吟醸を生詰めにした「ひやおろし」も造っています。番外編として、生酒ならではのみずみずしさと超辛口のキレを楽しむ「超辛口」もあります。
このほか、新酒を生のまま低温で貯蔵して初夏の瓶詰め直前に一度だけ火入れする生貯蔵酒「本菊泉」、瓶内発酵させた発泡純米酒「たまゆら」、純米酒「秀峰浅間」などを醸しています。長野県産の美山錦を49%まで磨いた純米大吟醸「蔵」は、上品な香味で食中酒として料理に合わせやすい酒です。焼酎ではそば焼酎「峠」を造っています。
酒造りで培った麹の技を生かした商品もあります。あま酒は、酒造りで使う米麹と千曲川伏流水の井戸水だけで造り、添加物は使っていません。2023年のリニューアルで、米麹に使う米を精米歩合73%から70%までさらに磨いたものに替え、すっきりした甘さにしました。国産ゆずを合わせたゆず風味もあります。白瓜吟醸粕漬は、地元臼田の畑で社員が育てて収穫した白瓜を、純米酒粕だけで漬け込んだ品です。
地元の洋菓子店と開発した、菊秀の純米吟醸無尽蔵を練り込んだ日本酒のマカロンは、2016年9月の日本経済新聞社の特別版で日本酒のスイーツ特集の3位に選ばれました。
代表銘柄
菊秀
菊秀は、橘倉酒造の清酒の代表銘柄です。全国新酒鑑評会には菊秀の名で出品し、平成14酒造年度以降に7回入賞しました。そのうち平成15・16・19酒造年度は金賞で、令和元酒造年度の出品酒は「菊秀 蔵」の名でした。純米大吟醸「蔵」は全量長野県産の美山錦を49%まで磨き、アルコール分16度、日本酒度±0から+3、酸度1.0から1.3です。生貯蔵酒「本菊泉」も菊秀の名で出しています。「菊秀」は、昭和初期に中部日本主催の酒類鑑評会で首席優勝したことを機に、上級ブランドとして発売されました。
見学・購入
- 蔵見学
- あり(要事前確認)
- 直売所
- 蔵の敷地内に直営ショップ「酒楽」が併設されており、試飲と購入ができます。
- 補足
- 蔵見学は年末年始を除いて通年で受け付けており、1週間前までの予約が必要です。所要時間は約1時間で、蔵元の挨拶、蔵内見学、試飲の流れです。2026年10月時点の見学料は、3名まで3,000円からで、1名増えるごとに1,000円が加わります。見学の最後には試飲販売の時間があります。蔵の敷地内にある築百年の建物「広敷」には、酒造りを体験しながら滞在できる「クラビトステイ」があります。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 長野県佐久市臼田653-2
- 創業
- 1696年
- 公式サイト
- kitsukura.co.jp
出典
kitsukura.co.jp / sakenomy.jp / japansake.or.jp / meimonshu.jp / naganosake.jp / kurabitostay.com / sake-times.com / nrib.go.jp / nta.go.jp / nagano-sake.or.jp / sakagura-press.com
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