丸世酒造店
代表銘柄:勢正宗・旭の出乃勢正宗
長野県
NAGANO
1870年創業
丸世酒造店は長野県中野市に位置する1870年(明治3年)創業の酒蔵です。「世の中が丸くなりますように」という初代・関申七郎の願いを込めて「丸世」と名付けられました。代表銘柄は「勢正宗」「旭の出乃勢正宗」です。
家族で醸す小さな蔵で、現在は五代目の関晋司が杜氏を務めています。醸造の大きな特徴は、全国的にも希少な伝統技法である「もち米熱掛四段仕込み(もち米四段仕込み)」を採用している点です。発酵の後半に蒸したもち米を熱いまま仕込むことで、もち米由来の旨みとコクのある味わいを生み出しています。原料には長野県産米と地元の清らかな水を使用し、昔ながらの道具と伝統製法を守りながら地酒を手造りで醸しています。
丸世酒造店の歩み
丸世酒造店は、明治3年(1870年)に現在の中野市にあたる地で創業しました。この年は中野県が発足して県庁が置かれた年で、同じ年に中野騒動と呼ばれる大規模な農民一揆が起き、県庁が焼失・移転し、多くの人家も被災するなど、世情が大きく揺れていました。そのただ中で、初代の関申七郎が「世の中が丸くなりますように」との願いを込めて「丸世」と名付けました。
中野は古くから果樹栽培や稲作が盛んな農村地帯で、酒造りも盛んな土地でした。1700年代から酒の造石量も消費量も増え、明治元年(1868年)には現在の中野市域に16軒の酒蔵がありましたが、いま酒を醸しているのは3軒です。丸世酒造店は、信州中野駅から徒歩約10分の町なかで、家族で酒を醸す小さな蔵として歩んできました。従業員は4名で、社長は関康久、製造責任者は関晋司です。かつては社長で四代目の康久が自ら杜氏を務め、家族ぐるみで年に150石ほどを醸していました。
平成23酒造年度に息子の晋司が蔵に戻って造りに加わり、平成27年ごろからは晋司が杜氏として造りを担っています。
代表銘柄の「勢正宗」の「勢」は、鯉の滝登り(登竜門)の故事に由来します。ラベルにはこの鯉の滝登りがあしらわれ、三代目の頃から長く蔵のシンボルとして親しまれてきました。晋司の代になってからは、次世代の酒として「勢正宗 Carp Series」を発売し、切り抜かれた鯉が躍動するラベルを目印にしています。令和2年(2020年)12月には信州大学との取り組みが始まり、令和3年(2021年)7月には、信州大学の名を冠した初の日本酒「勢正宗 信大仕込」が発売されました。
同じ昭和59年度生まれの長野県の蔵元後継者5人によるユニット「59醸」にも加わり、オリジナルの日本酒を造っているほか、中野市産のはちみつやりんご、シャインマスカットを副原料にした「白と果」も手がけています。
全国新酒鑑評会では、平成14酒造年度以降に限っても4回入賞しており、そのうち平成17酒造年度は金賞です。入賞は平成16酒造年度の勢正宗、平成21酒造年度と平成23酒造年度の手造り勢正宗大吟醸でした。関東信越国税局酒類鑑評会では、第73回(平成14年)から受賞を重ね、第78回(平成19年)は燗審査の部で旭の出乃勢正宗が選ばれました。純米酒の部では第81回(平成22年)から第87回(平成28年)までに5回優秀賞を受け、第83回は吟醸酒の部でも優秀賞でした。第93回から第96回(令和4〜7年)は4回続けて受賞しています。
第93回と第95回は純米酒の部の優秀賞、第94回は純米酒の部の特別賞、第96回は純米吟醸酒の部と純米酒の部の2部門で優秀賞でした。
広い敷地を持ち、井戸から雪溶け水が豊富に汲み上げられる酒蔵は、日頃から人が憩い、非常時には人々が身を寄せ合って集まれる場所になり得ると、蔵では考えています。町なかで醸し、町とともに生きる酒蔵として、安心して暮らせる町づくりにも取り組んでいく姿勢を掲げています。
酒造りの特徴
丸世酒造店の酒造りの最大の特徴は「もち米四段仕込み」です。酒造りでは、酒母と麹を造ったうえで、酒母・麹・蒸し米・水を4日間に3回に分けて加えてもろみを仕込む三段仕込みが一般的です。もち米四段仕込みでは、この三段仕込みのあとに、4回目として蒸したもち米を加えます。戦前まで多くの酒蔵が行っていた日本古来の醸造方法ですが、現在、長野県で取り組んでいるのは丸世酒造店だけで、全国でも数蔵にとどまります。蔵ではこの製法の酒が持つコクと飽きのこない味わいに惚れ込み、通常商品のほとんどをもち米四段仕込みで造っています。
かつてはもち米を甘酒にしてからもろみに加えていましたが、平成18年(2006年)からは、蒸したての熱々のもち米を入れる「もち米熱掛四段仕込み」に切り替えました。もろみの温度が上がることで酵母が再び動き出し、さらなる発酵が進んで、より複雑な味わいが生まれます。そのぶん温度管理などの高い技術が求められますが、より個性のある酒を求めての変革でした。かつて四代目の康久が理想の酒として「舌先でほんのり甘みを感じる辛口」と語ったように、蔵の基本は辛口です。
もち米の旨みとコクが味わいの中心にあって骨格がしっかりしているため、冷やはもちろん、燗でもおいしくいただけます。
酒造好適米は、ひとごこち、金紋錦、山恵錦の3種で、いずれも長野県で生まれた品種です。ひとごこちは丸世らしさをよく表す米、金紋錦は醸造が難しいものの旨みと個性のある味わいが特徴の米、山恵錦は磨きやすく安定した酒質を実現しやすい米と、それぞれ個性が異なります。栽培を担うのは地元の中野市や北に隣接する信濃町などの契約農家で、標高約400mから800mの涼風が吹き抜ける田で健全な米が育っています。もち米は、信濃町で栽培される長野県の奨励品種「ヒメノモチ」を用います。
中野市の米農家の小柳農園は、蔵の酒造りから出る酒粕を酒米づくりの肥料の一部に使い、その米をまた蔵が酒造りに使うという循環も生まれています。
仕込み水は、志賀高原の雪溶け水を井戸で汲み上げ、さらに「信大クリスタル」で濾過した水です。信大クリスタルは信州大学の研究から生まれた機能性無機結晶材料で、水の中の特定の物質だけを取り除けます。蔵の井戸水は酒造りに向いたミネラルの多い硬水ですが、鉄分があると酒が酸化しやすくなります。通常の浄水器では鉄分以外の有用な成分まで除いてしまいますが、信大クリスタルでは残したい成分と除きたい成分を細かく設定できます。造りは全ての作業を手仕込みで行っています。搾りは、2021年時点では昭和初期の機械が現役で動く佐瀬式でした。
その後、築60年以上の木造だった麹室をステンレス製に改修し、土蔵の中には冷蔵プレハブを導入しています。搾りにも、醪への負担を抑える機械を導入しました。酒が紫外線で傷むのを避けるため、蔵には北向きの窓しかありません。
代表銘柄
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勢正宗
蔵の代表銘柄で、読みは「いきおいまさむね」です。定番は、醸造アルコールを加えた普通酒、本醸造、しぼりたて生原酒、生貯蔵酒で、創業当初から続くもち米四段仕込みの酒です。普通酒と本醸造は精米歩合70%、アルコール度数15%で、本醸造は冷やでも燗でも、普通酒は燗がすすめられています。鯉の滝登りにちなむ「Carp Series」では、Carpがひとごこちともち米を全量長野県産で仕込んだ精米歩合70%の純米酒、Goldcarpは山恵錦ともち米による精米歩合50%の純米大吟醸です。
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読みは「ひのでのいきおいまさむね」です。酒販店向けに販売する、地元流通を主体とした銘柄です。純米酒は蔵では珍しい三段仕込みで、精米歩合59%、アルコール度数15%の、すっきりしながら米の旨みを感じる酒です。もち米熱掛四段仕込みの純米原酒は精米歩合70%、アルコール度数16%で、火入れと生があり、Carp Seriesが生まれる原点の酒です。
見学・購入
- 蔵見学
- あり(要事前確認)
- 直売所
- 蔵の店頭とオンラインショップで販売しています。蔵の定休日は毎週日曜日と1月1日です。
- 補足
- 酒蔵見学は醸造期を外した4月から9月に限って受け付けており、事前予約制です。試飲は無料です。最寄りは長野電鉄の信州中野駅で、徒歩約10分です。駐車場は5台分あります。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 長野県中野市中央2-5-12
- 創業
- 1870年
出典
jreast.co.jp / marusesyuzouten.co.jp / japansake.or.jp / shinshu-nakano.jp / city.nakano.nagano.jp / jizakeyakodama.com / nrib.go.jp / nta.go.jp / shinshu-u.ac.jp / akomeya.jp / go-nagano.net / nihonshu-tourism.com
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