磐梯酒造
代表銘柄:磐梯山・乗丹坊
福島県
FUKUSHIMA
1890年創業
福島県耶麻郡磐梯町にて1890年(明治23年)に創業した酒蔵です。名峰・磐梯山の麓に位置し、日本名水百選に選ばれた「磐梯西山麓湧水群」の清冽な伏流水を仕込み水に使用しています。創業以来、地元で親しまれ続けている地酒「磐梯山」を看板銘柄とし、会津仏教文化発祥の地である慧日寺の宗徒頭の名を冠した上位ブランド「乗丹坊(じょうたんぼう)」を立ち上げました。乗丹坊は2024年の福島県春季鑑評会で純米酒の部の金賞に選ばれています。
酒造りでは質の良い酒を目指し、圧搾には佐瀬式を採用するほか、冬の冷気でゆっくり冷ます自然放冷など、手仕事と最小限の機械化による丁寧な造りを徹底しています。また、会津産古代米(黒米)を用いた赤い酒「会津桜」や地元産リンゴを使った日本酒ベースのリキュール「Bandaisan Apple x Sake」の開発など、伝統を守りつつ柔軟な挑戦も続けています。
磐梯酒造の歩み
磐梯酒造は、1890年(明治23年)に名峰・磐梯山の麓、現在の福島県耶麻郡磐梯町にあたる地で創業した酒蔵です。会津若松市の北東、猪苗代湖と会津盆地の中間に位置する高原の町にあり、先祖代々受け継いできた土蔵造りの蔵で酒を醸しています。当代の桑原大さんは5代目で、代表取締役として蔵を率いています。2025年時点では桑原さん自身が杜氏を務め、酒造りの現場に立っています。3代目は会津の俳人としても知られた「兆堂」で、「降る雪の 翳(かげ)しんしんと 酒湧けり」という句を残しました。
会津の気候と風土、伝統的な醸造、そして3代目の酒造りへの一途な姿勢を詠んだ句で、その教えは今も蔵人たちに伝えられています。
桑原さんは1963年生まれで、東京の大学で化学を学び、研究職を経て1990年に家業へ入りました。当時は会津若松市や新潟県からも杜氏や蔵人が通っていましたが、高齢による引退や人手不足が重なり、入社から5年後には専務杜氏として製造計画を任されるようになりました。2000年には代表取締役に就任しています。祖父は磐梯町長を20年務めた人物で、桑原さん自身も商工会などの地域活動に積極的に関わっています。
看板銘柄の「磐梯山」は創業当初から地元で親しまれてきた酒で、「会津桜」も昔からある伝統銘柄です。会津桜は、磐梯町の農家が「この米で酒を造ってほしい」と黒米(古代米)を蔵に持ち込んだことをきっかけに、試行錯誤を重ねて2002年に会津産古代米を使った赤い酒として生まれ変わりました。赤い色は黒米に含まれる天然色素(アントシアニン)によるもので、紅麹は使っていません。
福島の酒蔵にとって、東日本大震災とコロナ禍は大きな試練でした。蔵や機械、タンクに大きな破損はなく酒造りは続けられましたが、震災後は、東京の百貨店に置かれていた棚が気づけばなくなり、福島の酒を控える風潮による風評被害が大きな打撃になりました。その後のコロナ禍では約3年にわたって出荷量が大きく落ち込み、土蔵の中に酒が残る状況になりました。2022年10月にはクラウドファンディングを始め、目標80万円に対して127人から999,799円が集まり、2023年1月15日に終了しました。
集めた資金は、蔵人の育成・雇用と、老朽化した貯蔵用の木桶や冷蔵設備の購入に充てる計画でした。
近年は新しい挑戦も続けています。2022年には、日本酒の楽しみ方を20代・30代に伝える「PON酒女子」と組んで、純米吟醸酒「@Party(アットパーティー)」を完成させました。磐梯町産のりんごを使った日本酒ベースのリキュール「Bandaisan Apple x Sake(磐梯山りんご酒)」や、磐梯町産の酒米だけで醸す上位ブランド「乗丹坊」も、地元の素材を生かす取り組みです。乗丹坊は2024年(令和6年)の福島県春季鑑評会で、純米酒の部の金賞に選ばれています。
2025年からは長男の大和さんが正社員として蔵に入り、次期6代目として父とともに酒造りを学んでいます。社是は「和醸良酒」で、蔵人が力を合わせて良い酒を醸し、飲む人に和みの時間を届けるという意味が込められています。
酒造りの特徴
仕込み水には、日本名水百選の一つである「磐梯西山麓湧水群」の清冽な伏流水を使います。名峰・磐梯山の麓にある磐梯町は、高原にひらけた米どころでもあります。原料米は磐梯町や会津で育った酒造好適米を主に使い、乗丹坊は磐梯町産の酒米だけで醸しています。酵母には、福島県が開発した「うつくしま煌(きらめき)酵母」を乗丹坊の純米大吟醸などに使っているほか、国際宇宙ステーションに滞在した「うつくしま夢酵母」で醸した東北復興宇宙酒「無重力」も手がけています。
造りは機械化を最小限に抑えた手仕事が中心です。酒米は甑(こしき)で蒸し、蒸米を冷ます放冷は、機械で風を当てる蔵が多いなかで、冬の澄んだ冷気でゆっくり冷ます自然放冷を守っています。時間はかかりますが、小さな蔵だからこそできる造りだと桑原さんは考えています。
もろみを酒と酒粕に分ける搾りでは、佐瀬式の槽(ふね)を使います。もろみを入れた袋を槽に敷き詰め、二日間かけてゆっくり搾る方法で、搾るのはもろみ全体の8割ほどです。残りの2割は酒粕にして、苦味や辛味の成分を粕に残し、旨味の成分を中心に取り出します。酒の量は減りますが、その分おいしい酒になると考えています。2022年のクラウドファンディングでは、乗丹坊の純米大吟醸を袋吊りで搾った「しずく酒」も、新酒の時期だけの数量限定の返礼品として用意しました。
もろみを入れた酒袋を吊るし、圧力をかけずに重力だけで垂れた雫を集める搾り方です。
本醸造酒には「四段仕込み」を用います。三段仕込みのあとに自家製の甘酒を加える方法で、コクと旨味がありながらキレのある味わいになります。甘酒づくりには丸2日かかりますが、手間をかけても欠かせない工程です。貯蔵には調湿性の高い土蔵を使います。冬は雪の重みに耐え、夏は昼夜の気温差があっても蔵内の室温が低く、湿度も一定に保たれるため、酒の質を保ったまま貯蔵できます。蔵は桑原さん夫妻と息子さんを中心に営まれ、冬には数名の蔵人が加わります。お酒の8〜9割は福島県内を中心に流通しています。
代表銘柄
磐梯山
創業当初から地元で親しまれてきた看板銘柄で、食事によく合うバランスのよい味わいが持ち味です。本醸造酒、四段仕込本醸造、純米酒、特別純米酒、純米吟醸酒などがそろいます。純米吟醸酒は会津産酒造好適米を50%まで精米し、磐梯町出身の会津杜氏が醸しました。特別純米酒は精米歩合58%で、肉料理など脂のある料理に合い、常温やぬる燗で旨味が引き立ちます。
乗丹坊
約1200年前に実在した、会津の仏教文化発祥の地・慧日寺の宗徒頭の名を冠した上位ブランドです。特別純米、純米吟醸、純米大吟醸の3種で、磐梯町産の酒米だけを使います。純米大吟醸は会津産酒造好適米を45%まで精米し、うつくしま煌酵母で造ります。純米吟醸は精米歩合50%で、2月から5月には無ろ過生原酒を季節限定で出します。
見学・購入
- 蔵見学
- なし
- 直売所
- 蔵の店頭で販売しており、営業時間は9:30〜18:00、定休日は日曜・祝日です。公式のオンラインショップでも購入できます。
- 補足
- 酒蔵見学は行っていません。JR磐越西線の磐梯町駅から徒歩約13分、磐越自動車道の磐梯河東ICから車で約4分です。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 福島県耶麻郡磐梯町磐梯金上壇2568
- 創業
- 1890年
- 公式サイト
- bandaishuzou.com
出典
japansake.or.jp / aizusake.jp / gozzo-line.com / sakagura-press.com / bandaishuzou.com / aizubandai.jp / camp-fire.jp / tohobank.co.jp / tohoku-sakurakaido.jp / fukunosake.com / web.archive.org
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