佐々木酒造店
代表銘柄:閖
宮城県
MIYAGI
1871年創業
明治4年(1871年)創業、宮城県名取市閖上(ゆりあげ)に位置する150年以上の歴史を持つ酒蔵です。代表銘柄は「宝船浪の音」で、地元の米と名取川の伏流水を使用し、地元の暮らしや食に寄り添う地酒造りを理念としています。
2011年の東日本大震災では、津波により酒蔵や店舗が全壊・流出する被害を受けました。しかし、奇跡的に残った2本のタンクの酒を瓶詰めし、閖上の再起の誓いを込めて生まれたのが「閖(ゆり)」です。翌2012年からは仮設工場での酒造りを開始し、厳しい環境下で新商品の開発にも挑戦しました。復興が進んだ2019年10月には、創業の地である閖上に新しい酒蔵を再建して現地復活を果たしました。
「ミラノ酒チャレンジ2023」において「吟のいろは」が金賞を受賞するなど受賞歴も有し、伝統を守りながら地域の魅力を伝える酒造りを続けています。
佐々木酒造店の歩み
佐々木酒造店は、明治4年(1871年)に初代の佐々木新助が運送業から事業を広げる中で興した蔵です。創業の地は、かつて伊達藩の御用港として栄えた現在の名取市閖上にあたります。屋号は「浪の音」、銘柄は「宝船浪の音」で、閖上の海辺で絶えず聞こえる浪の音と、その音とともに宝船が幸せを運んでくれるようにという願いに由来します。「地酒はその土地の液体化」という考えが初代から受け継がれ、二代目の佐々木多利治は東多賀村の村長も務めて地域に尽くしました。
2022年時点で、代表取締役は佐々木加知枝さんで、5代目の佐々木洋さんは専務取締役を務めています。
2011年3月11日、東日本大震災で閖上は8メートルを超える津波に襲われ、町の多くが流されて700人以上が亡くなりました。蔵の創業時からの木造家屋と酒蔵、煙突は地震で倒壊し、津波で製造設備や貯蔵していた酒、在庫製品のほとんどが流失しました。石造りの蔵と、1978年の宮城県沖地震のあとに建て替えた鉄筋コンクリート造の酒蔵も、躯体は残ったものの庫内にがれきが流れ込み、タンクは横転しました。洋さんはこの鉄筋コンクリート造の酒蔵の屋上へ避難して無事でしたが、震災の前年に耐震工事を行っていたため、大きな債務も残りました。
それでも洋さんは、津波が町をのみ込む光景を前にして、同じ場所で酒造りを続けると決意しました。
破損も流出もなかった密閉タンクの酒は、仙台市の森民酒造本家の設備を借りて瓶詰めされ、震災からちょうど1年後の2012年3月11日に「閖(ゆり)」の名で売り出されました。同年2月には名取市復興仮設商店街の「閖上さいかい市場」で店舗の営業を再開しています。酒造りの再開に向けては、中小企業基盤整備機構が整備した名取市復興工業団地に仮設蔵を構えました。宮城県酒造組合や宮城県産業技術総合センターの呼びかけに応え、阪神・淡路大震災で被災した神戸の櫻正宗、鹿児島の若潮酒造、白玉醸造、森伊蔵酒造など全国の蔵から設備が届きました。
2012年12月17日に仕込みを始め、翌2013年1月14日に最初の酒を搾っています。仮設環境での酒造りは日本の醸造史上初といわれます。
地震で自社の水源の水質が変わり、仕込み水は名取のせり田の水に切り替えました。主に使っていた酒造好適米「蔵の華」の契約農家も被災し、食用米の「ひとめぼれ」で初めて酒を仕込んでいます。そうした環境でも酒質は評価され、第20回(平成30年度)の宮城県清酒鑑評会では一般純米酒の部で宮城県酒造組合会長賞を、平成30年の東北清酒鑑評会では純米酒の部で優等賞を受賞しました。全国新酒鑑評会でも、仮設蔵で醸した平成26酒造年度と平成29酒造年度の酒が入賞しています。
2023年のミラノ酒チャレンジでは、純米吟醸「吟のいろは」が金賞に選ばれました。
閖上では区画整理とかさ上げが進み、2017年に洋さんたちは本格的な再建を考え始めました。各地の蔵で学んだうえで弟の淳平さんとともに設計図を引き、2018年12月25日に地鎮祭を行いました。2019年4月に商業施設「かわまちてらす閖上」が開業し、その通りをはさんだ場所に新しい酒蔵が完成します。2019年10月1日の「日本酒の日」に蔵開きを行い、約8年半ぶりに創業の地へ戻り、蔵の本格的な再建を果たしました。洋さんは、かわまちてらすが蔵の前に来たのではなく、蔵が元の場所に戻ってきたのだと話しています。
酒造りの特徴
仙台平野の米とこの土地を潤す清流、そして南部杜氏の技術を一体にすることが、蔵の酒造りの柱です。震災後はせり農家のせり田を潤す名取市下余田の清水を分けてもらい、2022年時点でもこの清水を酒造りに使っています。純米酒「閖」は、名取産の米を60パーセントまで磨き、名取川の伏流水を仕込み水にしています。2021年時点で、杜氏は専務の洋さんの弟の淳平さんが務めています。
仮設蔵は、壁や天井が薄い鉄板でできたガレージのような建物で、すべての工程が仕切りのない同じ床に並んでいました。温度管理のため壁面を断熱ウレタンで覆い、酒母専用の部屋を設けられなかったため、酒母は速醸酒母から、より短期間で仕上がる高温糖化酒母に切り替えました。麹室の乾湿差をつけるために除湿器を持ち込み、醪の温度を保つために仕込みタンクに冷水ジャケットを回すなど、手探りの工夫を重ねています。この時期に「純米大吟醸 浪庵」や「純米吟醸 玲瓏」が生まれました。
2019年に完成した新しい蔵の醸造棟は、総床面積757平方メートルの鉄骨2階建てです。全体に空調が入り、部屋ごとに室温を設定できます。入り口にはエアシャワー室があり、製造現場の壁と天井はすべてステンレス製で、100年先を見据えた設計です。圧搾機は仮設蔵の佐瀬式に加えて薮田式を導入して2台体制とし、欧州製のワイン用瓶詰め機も備えました。仮設蔵で使った設備も新蔵へ運び、3季醸造でゆとりを持った酒造りができる体制です。
商品は、山田錦を40パーセントまで磨いた純米大吟醸「浪庵」、岡山県産雄町の純米大吟醸、宮城県産の蔵の華を使った純米大吟醸と特別純米酒、宮城の酒米「吟のいろは」の純米吟醸、四段仕込みの本醸造、精米歩合90パーセントの純米無濾過生原酒まで幅広く揃います。米や精米歩合、酵母を銘柄ごとに使い分け、地元の食に寄り添う酒を目指しています。
代表銘柄
閖
「閖」は、津波を免れたタンクの酒を瓶詰めし、震災から1年後の2012年3月11日に売り出された復興の酒です。名は閖上の地名にちなむ一字で、復興へ歩む町の思いが込められました。現在の純米酒は名取産の米を60パーセントまで磨き、名取川の伏流水で仕込みます。口当たりは軽く、後味はキレのあるすっきりした飲み心地です。仮設蔵の時代も、元の場所に戻った今も出荷が続いています。
見学・購入
- 蔵見学
- あり(要事前確認)
- 直売所
- 蔵に併設された直営店で、スタッフの説明を聞きながら試飲ができ、気に入った酒をその場で購入できます。限定グッズもあり、全国への発送にも対応しています。
- 補足
- 酒蔵見学は繁忙期を除いて受け付けています。料金は1人1,100円(税込)、所要時間は約1時間で、蔵の歴史と震災の話を聞いたあと、新しい酒蔵を見学し、直営店で試飲します。申し込みはお問い合わせページから行います。見学の前日から納豆とヨーグルトを控え、強い香りの香水を避け、ピアスなどを外し、ヘアキャップを着けることが求められます。蔵元は、仙台空港から最も近い場所にある酒蔵だと語っています。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 宮城県名取市閖上中央一丁目12番地の3
- 創業
- 1871年
- 公式サイト
- housen-naminooto.com
出典
housen-naminooto.com / kankou.natori.miyagi.jp / reconstruction.go.jp / miyagisake.jp / jp.sake-times.com / tohoku360.com / serai.jp / otokonokakurega.com / makuake.com / nta.go.jp / nrib.go.jp / milanosakechallenge.com
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