釜屋
代表銘柄:ARROZ・雫滴
埼玉県
SAITAMA
1748年創業
埼玉県加須市に蔵を構える株式会社釜屋は、1748年(寛延元年)に創業した蔵元です。利根川の伏流水を仕込み水に使用し、伝統の技を受け継ぎながら酒造りを行っています。代表銘柄の「力士」のほか、徳島県産山田錦を使用した純米吟醸酒「雫滴(しずく)」や、ワイン酵母を用いて白ワインのような味わいに仕上げた新感覚の純米酒「ARROZ(アロス)」など、時代のニーズに合わせた革新的な銘柄も展開しています。
醸造技術への評価は高く、全国新酒鑑評会での金賞受賞歴を多数持つほか、IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)2019の古酒の部では「1994年醸造 特別本醸造 釜屋」が最優秀賞にあたるトロフィーを受賞しています。伝統を守りつつも、日本酒の新しい可能性に挑み続けている酒蔵です。
釜屋の歩み
寛延元年(1748年)、近江商人であった釜屋新八が、中山道と日光街道を結ぶ街道沿いの宿場町として栄えていた現在の埼玉県加須市騎西の地で酒造業を興しました。利根川と荒川に挟まれた関東平野の豊かな米どころに恵まれ、仕込み水には利根川の清らかな伏流水を用いて、釜屋は二百七十年を超える歴史を刻んできました。新八は、仕入れをおろそかにせず良質な品を薄利で売り、得意先の信用を得ることこそ家業を長く続ける道であるという教えを遺しています。
天明5年(1785年)には、初代新八の兄で二代目を継いだ小森久左衛門が、酒銘を「力士」と定めました。中国の詩人李白の詩に詠まれた酒器の一節にちなんだ名づけと伝えられており、以来この銘柄は釜屋を代表する顔であり続けています。天保5年(1834年)には宿場町を襲った大火で酒造庫を除く店舗や住居のほとんどを焼失しましたが、四代目久左衛門は落胆することなく復興に取り組み、代官所から用立てられた資金も元手に事業を立て直しました。
明治19年(1886年)には関東地方を襲った大飢饉に際し、総欅造り二階建て・建坪200坪という豪壮な貯蔵庫を建てて地域の難民救済に協力しました。この貯蔵庫は現在も酒の貯蔵庫として使われており、当時の人々からは「釜屋のお助け普請」と呼ばれ感謝されたと伝えられています。大正6年(1917年)には合名会社小森商店として組織を整え、大正14年(1925年)には清酒「力士」が宮内省への納品という栄誉を得ました。
関東大震災による打撃と震災不況で苦境に立たされた時期でしたが、昭和2年(1927年)の全国酒類品評会で一等賞を受賞したことが評価を押し上げ、経営を立て直す力となりました。
戦後は株式会社として組織を新たにし、昭和33年(1958年)には埼玉県清酒品評会で第一位知事賞を受賞しました。以後は小森家の当主が代々蔵元を継いでいます。平成元年(1989年)には「力士」を全量本醸造酒以上の品質に統一し、平成6年(1994年)には吟醸蔵を新設して吟醸造りの体制を整えました。平成26年(2014年)からは十三代目蔵元として小森順一が経営を担い、杜氏の松沼宏顕、蔵人の関口裕也とともに酒造りにあたっています。
平成31年(2019年)には、埼玉県内で初めて地元加須産の山田錦を使ったお酒「純米大吟醸 加須の舞」を発売し、地元産米を生かす取り組みを本格化させました。令和2年(2020年)には大型仕込みをやめて小・中量仕込みに切り替え、令和6年(2024年)には低温発酵・低精白・低アミノ酸の「三低製法」による新商品「新生力士」を発売するなど、伝統を守りながら新しい酒造りに挑み続けています。
酒造りの特徴
釜屋は「米・水・人が活きる酒」を酒造りの指針に掲げています。仕込み水には地下100メートルから汲み上げる利根川の伏流水を使い、ミネラル分を多く含む中硬水の性質を生かして酵母がしっかり働く旨口の酒に仕上げています。原料米には山田錦や五百万石といった酒米に加えて、ふだん食用にされる一般米も用いており、レギュラー酒では精米歩合68%程度、大吟醸では38%まで磨き上げて雑味の少ない味わいを追求しています。
令和6年に発売した「新生力士」では、発酵温度をおよそ7〜9度という低温に保ち、精米歩合90%程度という一般的な吟醸酒とは対照的な低精白の米を用いながら、アミノ酸の生成を抑える現代的な管理技術によって雑味を抑えた純米酒に仕上げています。精米歩合90%の米は吸水しにくいため、通常10分から30分程度とされる浸漬時間を一日近くまで延ばすなど、これまでの酒造りの常識にとらわれない工程を採用しています。原料米には地元埼玉県産の一般米を使い、関東平野の水田地帯という土地の恵みを生かす狙いも込められています。
現在の酒造りは、十三代目蔵元の小森順一のもと、杜氏の松沼宏顕と蔵人の関口裕也が中心となって担っています。麹菌や酵母菌が働きやすい環境づくりを第一に考え、伝統的な製法にとどまらず新しい酒質に挑む姿勢を貫いており、一本ごとの仕込みに向き合いながら、飲み飽きしない酒を目指した造りを続けています。
全国新酒鑑評会の金賞は平成6年(酒造年度でいう平成5酒造年度)の受賞にまでさかのぼり、平成14酒造年度以降に絞っても18回入賞、うち金賞は平成18・19・21・27・28・29・30の各酒造年度と令和2・3・4・6・7の各酒造年度をあわせた12回にのぼります。関東信越国税局酒類鑑評会でも平成19年以降にのべ17回優秀賞を受賞しており、うち平成27年から29年までと令和元年から3年までをあわせた6回は埼玉県内で最高位となる県一位も獲得しています。
埼玉県春季清酒鑑評会では令和元年・2年・5年・7年の各酒造年度に最高位の知事賞を受賞し、令和7酒造年度の第107回南部杜氏自醸清酒鑑評会でも「力士 大吟醸」が吟醸酒の部で2位、「力士 純米大吟醸」が純米酒の部で7位となり、3年連続の上位入賞となりました。
国際的な評価も高く、2019年にはインターナショナル・ワイン・チャレンジの古酒の部で「1994年醸造 特別本醸造 釜屋」が出品1500銘柄からゴールドメダルを受けた95銘柄の一つに選ばれ、さらに古酒の部でゴールドメダルを受けた6銘柄の中から最も優れた1本に贈られるトロフィーを受賞しました。同コンクールでは「力士 大吟醸」も2018年と2019年にゴールドメダルを、「純米大吟醸 加須の舞」も2020年にゴールドメダルを受けています。
フランスのKura Masterでも、2025年に「力士 大吟醸」が大吟醸酒の部で部門一位となる審査員賞を、2024年には「純米大吟醸 加須の舞」が金賞を、「純米大吟醸 明軽」がプラチナ賞を受けるなど、新しい酒質でも国内外のコンクールで結果を残しています。加えて、地元加須産の山田錦を50%まで磨いて仕込む「純米大吟醸 加須の舞 スパークリング」は、ワイングラスでおいしい日本酒アワード2026のプレミアムスパークリングSAKE部門で金賞を受けています。
代表銘柄
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ARROZ
ARROZ(アロス)は、国産米だけを原料にワイン酵母で仕込んだ純米酒です。名前はスペイン語で「米」を意味し、精米歩合68%の米を使い、アルコール度数は11度に抑えています。日本酒でありながらワイン酵母を用いることで、白ワインを思わせる甘みと酸味が生まれ、その中にも米ならではの旨みが感じられる味わいに仕上がっています。冷やして飲むのに向いたお酒で、日本酒に馴染みの薄い方にも親しみやすい一本として造られています。
楽天で商品を見る雫滴
「雫滴」は、徳島県産の山田錦を55%まで磨いて仕込む純米吟醸酒で、アルコール度数は17度です。春先に搾ったお酒を一度火入れしてひと夏静かに寝かせることで、丸みと旨みをのせた「冷やおろし」として毎年秋に発売されています。冷やしても、常温でも、ぬる燗でも楽しめる仕上がりで、初夏には無ろ過生貯蔵原酒や雫滴blueといった別仕込みも発売されており、季節ごとに異なる仕込みが楽しめます。
見学・購入
- 蔵見学
- あり(要事前確認)
- 直売所
- 蔵の敷地内にある直売所では、季節限定酒や市場にあまり出回らない商品を購入できます。営業時間は9時から12時、13時から16時までです。
- 補足
- 個別の蔵見学を受け付けていますが、5名以上の団体に限られ、事前の予約が必要です。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 埼玉県加須市騎西1162
- 創業
- 1748年
- 公式サイト
- www.rikishi.co.jp
出典
japansake.or.jp / rikishi.co.jp / kawaguchicci.or.jp / sakedata.jp / saisake.com / nrib.go.jp / sakenowa.com
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