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榎酒造

代表銘柄:華鳩・清盛

広島県

HIROSHIMA

1899年創業

榎酒造の煙突
榎酒造の煙突(2009年撮影)「Hanahato.jpg」 — 写真:ahomin / CC BY 3.0縮小・WebP変換

1899年(明治32年)に平清盛の伝説が残る広島県呉市音戸町で創業した酒蔵です。銘柄の「清盛」は地域の歴史に因み、「華鳩」は蔵の建つ地名「鳩岡」や昔の国語の教科書の最初の文章に由来します。1974年(昭和49年)には、仕込み水の一部に日本酒を用いて仕込む「貴醸酒」を全国で初めて商品化したことで知られます。

酒造りでは「たおやかでやさしい味わい」を目指し、仕込み水には中軟水、原料米には八反錦やこいおまちなどの広島県産米を主に使用しています。

受賞歴も豊富で、全国新酒鑑評会で多数の金賞を獲得しているほか、英国の国際酒類コンテスト「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」SAKE部門古酒の部において「華鳩 貴醸酒8年貯蔵」が金賞やトロフィーを多数受賞しており、2010年には古酒の部のチャンピオンに選ばれるなど国内外で高く評価されています。

榎酒造の歩み

榎酒造は、1899年(明治32年)に現在の呉市音戸町にあたる地で創業した酒蔵です。音戸町は広島湾の東南、呉市の南に位置する倉橋島の北側およそ3分の1を占める町で、呉市とは幅70メートルほどの海峡で隔てられています。この海峡の「音戸の瀬戸」は、平清盛が沈む太陽を扇で招き返し、一日のうちに開いたという伝説で知られ、赤いアーチ型の音戸大橋が町のシンボルです。蔵はその瀬戸の近くにあります。

音戸の町には平家の落人の子孫といわれる人が多く、蔵元の一家も平家の落人の子孫と伝わります。平家びいきの土地柄から、創業のころから「清盛」の銘柄も持っていましたが、当時は平清盛の歴史的な地位が高くなかったことなどから、メインの銘柄を「華鳩」とし、「清盛」はサブの銘柄として維持してきました。「華鳩」の名は、蔵が建つ「鳩岡」の地名に由来します。昔の国語の教科書の最初の文章が「ハナ、ハト、マメ、マス」だったことから、誰でも知っている「はなはと」としたと言われています。

榎酒造を語るうえで欠かせないのが貴醸酒です。貴醸酒は、迎賓館などで海外の賓客を日本酒で乾杯してもてなす酒として、国税庁醸造試験所で1973年に佐藤博士らが開発した酒で、「貴腐ワインに比較されるタイプの高級日本酒」として名付けられました。榎酒造はこの製法をもとに、1974年(昭和49年)に全国で初めて貴醸酒を商品化しました。取り組んだのは、のちに会長となる榎徹です。

「誰も飲んだことのない新しい酒にチャレンジし、日本酒の幅を広げたい」という思いで始めたものの、造り始めのころは「こんな色のついた甘い酒は日本酒ではない」と酷評されもしました。それでも試行錯誤を重ね、食文化の多様化とともに貴醸酒が受け入れられる土壌が育っていきました。

品評会での実績も残しています。蔵の発表では、戦前に全国品評会で名誉賞を受け、昭和50年代以降は全国新酒鑑評会で金賞を16回受賞しています。平成13酒造年度には、全国新酒鑑評会の金賞、広島国税局主催新酒鑑評会の優等賞(広島県第一位)、広島県酒類品評会第一位、広島杜氏組合の自醸酒品評会第一位の4冠を、広島の蔵として初めて達成しました。全国新酒鑑評会は、平成14酒造年度以降に限っても14回入賞し、うち金賞は平成15酒造年度と、連続した平成21・22酒造年度の3回です。

広島国税局の清酒鑑評会では、平成14年から18年まで毎年入賞し、平成14・15・17・18年は優等賞です。平成19年以降は優等賞を計15回受けています(平成20・28・29年・令和3年を除く)。平成19年は吟醸酒・純米酒・本醸造酒の3部門で優等賞に入り、平成30年以降は純米酒部門と燗酒部門での受賞が中心です。海外では、ロンドンのIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)SAKE部門古酒の部で「貴醸酒8年貯蔵」が評価され、2011年に金賞を受けました。

蔵の発表では2008年から2024年までに計12回トロフィーを受賞しており、このうち2023年・2024年は古酒部門のトロフィー、2013年・2015年・2020年は広島の古酒を対象とする地域トロフィーです。2010年には古酒の部のチャンピオンにも選ばれました。フランスのKura Masterでは、2024年に古酒部門で金賞、2026年には古酒部門でプラチナ賞と審査員賞を受けています。現在は榎俊宏社長と、宮崎県出身の広島杜氏である藤田忠杜氏を中心に、「ホッとやすらぐ酒。」を掲げて酒造りを続けています。

酒造りの特徴

目指す味わいは、たおやかでやさしい酒です。自然で深い味わいを大切にし、特定名称酒はこざっぱりとした酸味のやさしい飲み口に仕上げます。疲れたときに飲んでホッとできる、やすらぎのある酒を掲げています。水質は中軟水で、島の裏山から湧く水と井戸水を使います。温暖な音戸での酒造りでは温度管理が欠かせないため、仕込みから貯蔵まで冷やすことを意識し、急冷や冷蔵保管で酒質を保っています。

平均精米歩合は60%です。大吟醸には兵庫県吉川町(特A地区)の山田錦を使い、それ以外は全量が広島県産米です。特定名称酒には八反錦とこいおまちを主体に、高精白や扁平精米で醸します。2016年時点では雄町や千本錦も使われていました。藤田杜氏が音戸で育てた「吟のさと」を100%使い、音戸産だけで仕込む特別純米酒もあります。生もと造りにも取り組んでおり、温暖な地でも冷蔵庫を使って温度を管理しながら、技術研究とデータ分析を重ねて造っています。生もとの酒母は、普通の酒の2倍以上の時間と人手がかかる昔ながらの造り方です。

貴醸酒は、三段仕込みの最後の留添えで、仕込み水の代わりに純米酒を使って仕込みます。酒で醸すため酵母のアルコール発酵がゆっくり進み、エキス分の多い濃醇で香味豊かな酒になります。看板の「貴醸酒8年貯蔵」は、貴醸酒を20度以下の貯蔵庫で8年以上熟成させた古酒タイプで、原料米は広島県産の中生新千本、精米歩合は65%、アルコール分は16.5度、日本酒度はマイナス44です。

シェリー酒やマディラ酒、上等の紹興酒のようと言われる、トロリと甘く熟成のまろやかさを感じる味わいで、熟成貴醸酒は瓶詰めの際に濾過しないため、澱が出ることがあります。熟成にあたっては、品質を一定にするためにシェリー酒のソレラシステムを採用しています。2023年のG7広島サミットで提供された日本酒の一つにも、「貴醸酒 10年熟成大古酒」が選ばれました。

貴醸酒の幅は広く、10年熟成大古酒や平均熟成年数30年以上の30年熟成大古酒、平成17年に純米大吟醸を仕込み水の代わりに使って造った貴醸酒をさらに仕込み水の代わりに使い、平成19年に雄町で仕込んで冷蔵庫で寝かせた「大累醸」などがあります。2000年に始めたオーク樽貯蔵に加え、令和5年12月から令和6年10月にかけてシェリー樽・バーボン樽・マディラワイン樽で熟成させた貴醸酒も商品化しました。

できたてを楽しむ生にごり酒、広島県が開発した酵母「ひろしまLeG-爽」を使ったさわやか貴醸酒、発泡タイプのスパークリングもあります。このほか「鳳の舞」の銘柄でも出品しており、令和5年は純米吟醸(八反錦)、令和6年は純米酒が、広島国税局清酒鑑評会の燗酒部門で優等賞になっています。

代表銘柄

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華鳩

華鳩は蔵のメイン銘柄です。冷蔵庫で温度を管理して造る生もとや、杜氏が音戸で育てた米で醸す特別純米酒、しぼりたてを瓶詰めした無濾過生原酒の「しぼり花ハト」シリーズ、熟成させた貴醸酒など、ラインナップは幅広くそろいます。看板の「貴醸酒8年貯蔵」は、IWCやKura Masterの古酒部門で評価されてきた一本です。

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清盛

清盛は創業のころから持つ銘柄で、華鳩に対するサブの銘柄として続けています。現行の「清盛 純米吟醸」は広島県産酒造好適米100%、精米歩合58〜60%、日本酒度プラス2.5で、熊本酵母で仕込みます。2012年の大河ドラマ『平清盛』の年には、延喜式にも貴醸酒と同じ造りが載っていることに着目した貴醸酒のにごり酒「平安濁酒」を発売し、今も造っています。

見学・購入

蔵見学
なし
直売所
榎酒造の小売部(呉市音戸町南隠渡2-1-15)。通常は平日9時から19時、土曜10時から18時で、日曜・祝日は休みです。
補足
通常は蔵の中を公開していませんが、2025年は4月29日から5月4日、2026年は4月29日から5月3日にゴールデンウィークの蔵開きを催し、約40種類のきき酒ができました。

見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。

蔵の基本情報

所在地
広島県呉市音戸町南隠渡2-1-15
創業
1899年
公式サイト
hanahato.ocnk.net

出典

meimonshu.jp / japansake.or.jp / ocnk.net / wikipedia.org / diamond.jp / hanahato.ocnk.net / nrib.go.jp / nta.go.jp / internationalwinechallenge.com / kuramaster.com / active-hiroshima.jp / jp.sake-times.com / kiyomori-ondonoseto.com / mofa.go.jp / sakesamurai.co.uk

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