東北銘醸
代表銘柄:いなほ・初孫
山形県
YAMAGATA
1893年創業
東北銘醸は明治26年(1893年)、廻船問屋を営む初代が「金久」の銘柄で酒造りを始めたことに遡ります。昭和初期、当主に長男が誕生したことを機に、皆に親しまれ愛される酒にと銘柄を「初孫」へ改めました。酒造りの最大の特徴は、創業以来一貫して引き継ぐ伝統手法「生酛(きもと)造り」です。空気中の自然な乳酸菌を活用する手間のかかる伝統技法を守り、全量を生酛造りで仕込んでいます。手作業の技術を守りつつ近代的な醸造設備を導入・融合させ、深いコクとすっきりとしたキレを両立した酒造りを行っています。
醸造技術の評価は高く、全国新酒鑑評会で数々の賞を獲得しているほか、2018年の「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」では日本酒部門の年間最優秀酒蔵賞(サケ・ブリュワリー・オブ・ザ・イヤー)を受賞しました。
東北銘醸の歩み
東北銘醸株式会社は1893年(明治26年)、廻船問屋を営んでいた佐藤久吉が「金久」の銘柄で酒造りを始めたことに始まります。当時の酒田は北前船交易で栄えた港町で、佐藤久吉は米や紅花といった酒田の名産品を船で全国に運んで商うかたわら、仕入れた酒を蝦夷地へ売ることでも利益を得ており、そうした商いのなかで庄内藩主酒井家の子孫が酒造りをしていることを知り、みずから酒を醸すようになりました。創業の地は、現在の酒田市中心部にあたる旧市街地でした。
昭和のはじめ、創業者に初孫となる男の子が生まれたことを機に、初孫のように皆から親しまれ愛される酒にしたいとの願いを込めて、酒銘を「金久」から「初孫」へと改めました。
創業から100年ほどは酒田の中心部で酒造りを続けていましたが、手狭になったことから、水源に恵まれた砂丘地への移転を検討しました。生酛造りには、その土地に酒母を育てるための微生物が生息していることが欠かせないため、移転に先立つ1970年代から井戸を掘って水質を分析し、その土地で試験醸造と貯蔵熟成を重ねて官能評価を行うなど、入念な調査を重ねました。水質と微生物環境の条件が整っていることが確認されたことから、1994年(平成6年)に酒田市十里塚に新たな社屋と主力工場を構えました。
十里塚はかつて漁師が冬場に酒造りへ出稼ぎに赴いた「蔵人の村」でもあった土地で、松林に囲まれた敷地に長さ100メートルの醸造棟が整然と配されています。
現在の代表取締役社長は佐藤雅士です。杜氏を務めるのは取締役製造部長の後藤英之で、東京農業大学農学部醸造学科を卒業後、山形県工業技術センターでの研修を経て、1981年(昭和56年)に初孫本店(現・東北銘醸株式会社)へ入社し、以来生酛造り一筋に酒造りを担ってきました。全国新酒鑑評会での連続入賞に加え、全国選抜品評会で全国第一位に輝いた実績も持つ、山形県を代表する名杜氏の一人です。
酒造りの特徴
東北銘醸最大の特徴は、創業以来一貫して受け継ぐ「生酛(きもと)造り」です。空気中の自然な乳酸菌を取り込んで酒母を育てる伝統技法で、乳酸を人工的に添加する速醸造りに比べて酒母の完成までに1か月ほどの時間と高い技術を要します。日本には1,100ほどの酒蔵がありますが、そのすべてを生酛で仕込む蔵は全体の1%に満たない10蔵ほどしかありません。本醸造から純米大吟醸、スパークリングまで幅広いラインナップを生酛で仕込む蔵は、全国でも多くありません。
生酛で育った酵母はアルコール耐性や低温での活動性が高く、酵母の死骸に由来する雑味が少ないため、コクと深みを保ちながらキレのある辛口の酒質に仕上がります。
使用する酒米は、山形県産の「出羽燦々」「出羽の里」「美山錦」「雪女神」など、地元で収穫されたものが中心です。雑味が少なく香り豊かな出羽燦々、甘みがありすっきりとした出羽の里、軽やかでキレのある美山錦、精米歩合35%まで磨き上げた純米大吟醸に使う雪女神と、それぞれの米の個性を生かした造り分けを行っています。
全国新酒鑑評会には、入賞酒目録で確認できる平成14酒造年度から令和7酒造年度までの間に18酒造年度で入賞しており、うち金賞を受けたのは平成14・15・18・20・21・24・25・27・30酒造年度、令和3・4酒造年度の11酒造年度です。平成14・15酒造年度は、本町蔵と本社工場の2製造場がそれぞれ出品し、ともに金賞を受けています。
海外の品評会でも高い評価を受けています。イギリスで開催される「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」では、2018年に本醸造酒部門で「初孫 伝承生酛」、2019年に吟醸酒部門で「初孫 冬のカノン」、2020年に大吟醸部門で「初孫 大吟醸」が、それぞれ部門の第1位に選ばれ、3年連続で高い成績を収めました。さらに2018年には、蔵として日本酒部門の最優秀酒蔵賞(Sake Brewer of the Year)を受賞しています。
2026年には、フランス人審査員が中心となるパリの日本酒コンクール「Kura Master」のクラシック酛部門で「初孫 伝承生酛」、純米大吟醸部門で「初孫 純米大吟醸 雪女神 磨き45」がそれぞれ金賞を受賞したほか、同年のIWCでは古酒部門「蔵探訪 熟成酒」が山形トロフィーを、純米大吟醸部門の「雪女神 磨き45」がGOLDを、吟醸の部の「摩漢」がBRONZEを受賞し、イタリアの「ミラノ酒チャレンジ」でも雪女神 磨き45がベストフードペアリング賞、蔵探訪熟成酒がプラチナ賞、純米吟醸「清空」がダブル金賞を受賞しています。
代表銘柄
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いなほ
「いなほ」は初孫の純米吟醸で、山形県産の酒造好適米・美山錦を、蔵がある砂丘地の井戸水で醸しています。ふくらみがあってまろやかな味わいが特徴で、やや甘みを感じながらもくどさがなく、米のコクと旨みを楽しめる一本です。出羽燦々100%で仕込む限定品「いなほ 生詰」は、インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)純米吟醸酒の部で2018年に金メダルを受賞しており、通常品の「いなほ」も2019年にブロンズメダルを受賞しています。
初孫
「初孫」は東北銘醸の看板銘柄で、昭和のはじめに創業者の初孫の誕生にちなんで名づけられました。看板の一本である純米本辛口「魔斬(まきり)」は、酒田の漁師が使った小刀にちなむ名で、キレ味の鋭い辛口が身上です。ほかに「伝承生酛」「純米大吟醸 雪女神 磨き45」「蔵探訪 熟成酒」「純米吟醸 清空」などがあり、2026年にはKura Masterで2部門の金賞、IWCで山形トロフィーとGOLD、ミラノ酒チャレンジでベストフードペアリング賞とダブル金賞を受賞しています。
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- 蔵見学
- あり(要事前確認)
- 直売所
- 敷地内の酒造資料館「初孫 蔵探訪館」に利き酒コーナーがあり、季節限定商品や館限定の販売商品を試すことができます。
- 補足
- 「初孫 蔵探訪館」はエントランスと展示室で酒造りの工程や郷土の民芸品を紹介する資料館で、入館は無料、営業時間は10時から16時30分、定休日は月曜日です。12月1日から1月19日ごろまでは冬期休館となります。問い合わせ先は0234-31-2320です。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 山形県酒田市大字十里塚字村東山125-3
- 創業
- 1893年
- 公式サイト
- www.hatsumago.co.jp
出典
yamagata-sake.or.jp / kigawaya.com / sake-times.com / kennan-syuhan.co.jp / hatsumago.co.jp / nihonmono.jp / sakeroman.com / yamagatakenjin.com / nrib.go.jp / jozo.or.jp
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