菊勇
代表銘柄:三十六人衆・出羽の里
山形県
YAMAGATA
1897年創業
山形県酒田市にある菊勇(きくいさみ)株式会社は、1897年創業の菊勇酒造を前身とし、1973年に3社4蔵が合併して設立された酒蔵です。仕込み水には月山からの赤川伏流水(中硬水)を使用し、特定名称酒以上では手作業の「蓋麹造り」にこだわる酒造りを行っていました。
代表銘柄には社名を冠した「菊勇」のほか、地元酒田の歴史的自治組織に由来する特約店限定酒「三十六人衆」、山形県産米を用いた「出羽の里」などがあります。全国新酒鑑評会での金賞受賞をはじめ、IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)でもゴールドメダルを受賞するなど高い品質評価を受けていましたが、2024年9月に自己破産を申請し事業停止となりました。
菊勇の歩み
菊勇株式会社の前身にあたる菊勇酒造は、1897年(明治30年)に創業しました。1973年(昭和48年)2月15日には、地元酒田の菊勇酒造を中心に、ほていや酒造店、舞鶴田中酒造店を含む3社4蔵が合併し、現在の酒蔵の母体となる会社が発足しました。本社は山形県酒田市黒森字葭葉山にあり、最上川が運ぶ砂から町を守るために黒松の森が築かれた「黒森」の地に、鳥海山、月山、最上川を一望できる立地で蔵を構えていました。
主力銘柄は社名を冠した「菊勇」のほか、特約店だけに卸す限定流通の「三十六人衆」がありました。この名は、文治5年(1189年)に奥州藤原氏が滅んだ際、一族ゆかりの女性を守って庄内へ落ち延びた三十六人の家臣に由来します。彼らは酒田に住み着いて回船問屋などを営み、後に月番三人ずつが12か月で町政を担う自治組織「三十六人衆」となりました。
筆頭格の豪商・鐙屋(あぶみや)は井原西鶴の「日本永代蔵」にも名を残すほどの米問屋で、1622年(元和8年)に酒井家が庄内藩主として入部した後も、三十六人衆による自治は明治維新まで続きました。菊勇はこの故事にちなみ、辛口で燗をしても味が崩れにくい「三十六人衆」を、品質維持に協力的な特約店にのみ卸してきました。
全国新酒鑑評会では、平成15酒造年度から平成17酒造年度にかけて「栄冠菊勇」が3年連続で金賞を受賞したのをはじめ、平成20酒造年度、平成21酒造年度、平成23酒造年度、平成24酒造年度、平成26酒造年度、平成29酒造年度、平成30酒造年度、令和2酒造年度にも金賞を重ね、令和4酒造年度には「三十六人衆 飛天」で金賞を受賞しました。平成19酒造年度、平成22酒造年度、令和元酒造年度にも入賞しました(令和元酒造年度は新型コロナウイルス感染症の影響で最終審査が行われず、その年度に限り金賞そのものが選定されませんでした)。
全国新酒鑑評会では、平成2酒造年度から令和4酒造年度にかけて通算17回の金賞を受賞したとしており、この中には平成14酒造年度以降の12回に加え、それ以前の受賞も含まれます。
IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)では、2011年の吟醸酒・大吟醸酒の部で「菊勇 大吟醸 秘伝」が部門一位トロフィーとゴールドメダルを、2014年の同部門で同じ「菊勇 大吟醸 秘伝」が酒田トロフィーとゴールドメダルを、2019年の純米大吟醸酒の部で「栄冠菊勇 雪女神」が山形・純米大吟醸トロフィーとゴールドメダルを受賞し、通算でトロフィー3回を数えました。全米日本酒歓評会では大吟醸Aの部で8回、純米の部で5回、それぞれ金賞を受賞しました。
しかし清酒消費の減少に新型コロナウイルス感染症による打撃が重なって資金繰りが悪化し、2024年9月2日、山形地方裁判所酒田支部に自己破産を申請して事業を停止しました。負債額は約9700万円で、従業員7人が解雇されました。127年余り続いた酒蔵の歴史はここで幕を閉じ、事業を引き継ぐ蔵元は現れていません。
酒造りの特徴
仕込み水には、月山を水源とする赤川の伏流水である中硬水を、自社井戸から汲み上げていました。
麹造りには、蓋麹(ふたこうじ)と呼ばれる浅い木箱を積み重ねて手作業で温度管理する製法を用い、特定名称酒以上でこの製法を貫いていました。杜氏が培った技によって0.1度単位の細やかな温度調整を行う、手間のかかる造り方です。
原料米は、山田錦や美山錦、山形県産の出羽の里、雪女神などを酒質に応じて使い分けていました。出羽の里は酒田市本楯地区の農家との契約栽培によるもので、心白が大きく、精米歩合65%程度でも吟醸香とすっきりした甘みを引き出せる品種です。
「品質第一」を掲げ、地元酒田の人々の生活に根差した辛口ですっきりとした味わいを目指し、地元出身の蔵人が酒を醸していました。
代表銘柄
三十六人衆
奥州藤原氏の滅亡後、庄内へ落ち延びた三十六人の家臣に由来する銘柄で、彼らは酒田に自治組織「三十六人衆」を築いた歴史にちなみます。品質維持に協力的な特約店にのみ卸す限定流通の酒で、香りだけを追わず、燗をしても味が崩れにくい辛口でキレのよい味わいを目指していました。看板の大吟醸「飛天」は山田錦を35%まで磨いた酒で、令和4酒造年度の全国新酒鑑評会で金賞を受賞しました。
出羽の里
山形県産の酒米「出羽の里」を100%使用した純米酒で、三十六人衆シリーズの一つとして造られていました。心白が大きいため精米歩合65%程度の低精白でも吟醸香とすっきりした甘みを引き出せるのが特徴です。市場に流通する手ごろな清酒を対象にした第5回日本全国美酒鑑評会のお燗部門で大賞を受賞したほか、IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)の純米酒部門で2017年・2018年にブロンズメダルを受賞しました。
見学・購入
- 蔵見学
- なし
- 補足
- 2024年9月の事業停止により、現在は蔵見学や直売を行っていません。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 山形県酒田市黒森字葭葉山650
- 創業
- 1897年
- 公式サイト
- www.kikuisami.co.jp
出典
sake-times.com / wikipedia.org / rakuten.ne.jp / tohoku-sakurakaido.jp / kigawaya.com / madonews.co.jp / exblog.jp / kotobank.jp / kikuisami.co.jp / web.archive.org / ja.wikipedia.org / kahoku.news / saketime.jp / 36guardians.com
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