鶴野酒造店
代表銘柄:谷泉・登雷
石川県
ISHIKAWA
1789年創業
石川県能登町鵜川に位置し、江戸後期の寛政から享和の頃(1789年〜1804年頃)に創業した酒蔵です。代表銘柄は「谷泉(たにいずみ)」と「登雷」です。
被災前は、地元の山水と酒米を使い、木のこしきでの蒸米や槽搾り(ふなしぼり)など昔ながらの手造りで仕込み、できる限り火入れをしない生まれたままの酒を届けていました。14代目の鶴野晋太郎氏と、妹で杜氏の鶴野薫子氏の兄妹が造りを担っています。
2024年(令和6年)1月の能登半島地震で酒蔵・店舗・住居が全壊しました。その後は金沢の福光屋との共同醸造や、全国の酒蔵と組む「能登の酒を止めるな!」への参加を通じて、各地の蔵で酒造りを続けています。2026年4月には福光屋との3期目の共同醸造酒「鶴と福 2026」「谷泉×加賀鳶 2026」を発売しました。
鶴野酒造店の歩み
鶴野酒造店は、石川県能登町の東海岸、富山湾に面した鵜川地区の蔵元です。創業は寛政から享和にかけての1789年から1804年ごろで、現在の能登町鵜川にあたる地で酒造りを始めました。当主は14代目の鶴野晋太郎さんで、妹の薫子さんが杜氏を務め、兄妹で「谷泉」と「登雷」を醸してきました。晋太郎さんは1989年生まれで、IT企業でプログラマーとして働いたのち、2019年に家業へ戻りました。薫子さんは大学卒業後に家業の酒造りを担うことになり、石川県酒造組合連合会が開く石川県清酒学校で酒造りの基礎を学びました。
蔵は能登杜氏の流れを汲む酒造りを江戸時代から続け、辛口でしっかりした味わいの地酒として、地元の漁師にも親しまれてきました。全国新酒鑑評会では、平成15酒造年度から平成18酒造年度まで4年続けて入賞し、平成15・16・18の3酒造年度は、商標「谷泉」で金賞を受けました。金沢国税局の酒類鑑評会でも、平成17酒造年度に優等賞を受けています。
2024年1月1日の能登半島地震で、酒蔵と併設の店舗、住居がすべて全壊しました。当日の午前中には酒母を仕込んでいました。晋太郎さんは1月3日から5日にかけて、地元の有志の協力を得て、崩れた蔵の瓦礫の中から2,000キロを超える酒米を手作業で運び出し、知人の倉庫に移しました。蔵のあった鵜川地区では建物の多くが倒壊し、晋太郎さんは約3か月、避難所で暮らしました。その間に、白山市の吉田酒造店や金沢市の福光屋の蔵元から電話があり、自分たちの蔵で酒造りをするよう申し出を受けました。
福光屋との共同醸造は、金沢の醸造蔵「壽蔵」で行いました。2024年2月に福光屋の福光太一郎さんが救出した酒米の存在を知り、3月5日の打ち合わせから7月1日までの118日間、薫子さんと福光屋の杜氏・板谷和彦さんらが、救出米計2,196キロを使って仕込みました。谷泉の特別純米と純米大吟醸「鶴と福」(2024年6月25日発売・2,300本限定)を仕込み、特別純米に福光屋の「加賀鳶」を1対1で合わせた「谷泉×加賀鳶」純米吟醸も出しました。
同じ年には、被災した能登の酒蔵と全国の酒蔵が組む共同醸造プロジェクト「能登の酒を止めるな!」が動き出し、石川県の吉田酒造店が立ち上げて2024年1月31日からクラウドファンディングを始めました。鶴野酒造店は第1弾から第4弾まで参加しました。第1弾は長崎県の福田酒造、第2弾は長崎県の森酒造場と石川県の吉田酒造店、第3弾は秋田県男鹿市の稲とアガベ、第4弾は新潟県佐渡市の天領盃酒造と組んでいます。第3弾と第4弾は、相手の蔵とのコラボレーション酒だけを造る形でした。
福光屋との共同醸造は2025年6月24日発売の「鶴と福 2025 純米」(1,800本)、2026年4月27日発売の「鶴と福 2026」(1,000本)と「谷泉×加賀鳶 2026」(865本)へと3期続いています。3期目では、倒壊した蔵から救い出した約10種の酵母から約2年かけて選んだ酵母を初めて使いました。2025年2月には、晋太郎さんが全国の酒蔵と組んだ能登の酒造りの取り組みを発表し、ICC FUKUOKA 2025のクラフテッド・カタパルトで優勝しています。
蔵の再建は、元の場所での再開を望む声がある一方、2025年夏の時点では、仕込み水に使っていた山水の水質悪化、約10億円の再建費用、海に近い立地の津波リスクがあり、同じ場所で再建するか移転するかは決まっていません。2026年4月には福光屋との3期目の酒を発売しており、鶴野酒造店は能登での再建を目指して、各地の蔵での醸造を続けています。
酒造りの特徴
被災前の鶴野酒造店は、昔ながらの手造りを大切にしていました。米を蒸すときは木のこしきを使い、搾りはもろみを酒袋に入れて槽(ふね)に並べ、手作業で搾る槽搾り(ふなしぼり)でした。仕込んだタンクごとの味を楽しんでもらうために、酒をブレンドせず、無理に味を統一することもしませんでした。酒は生または生詰め(火入れ1回)で、火入れによる酵素の失活を避けるため、できる限り火入れ殺菌をせず、すべてマイナス5度と0度の冷蔵庫で保管していました。仕込み水は近くの山間から湧き出る水で、酒米は地元の農家が育てた米を使っていました。
商品は、精米歩合50%の辛口の特別純米、筆文字で手書きしたラベルの純米大吟醸「愛」、石川県が開発した酒米「百万石乃白」の純米吟醸、無濾過生原酒の「Orange」「Green」「Sweet Harmony」「Blue」、石川県一斉発売の「夏にごり」などがありました。「登雷」は超辛口の酒で、母と娘がそれぞれ別のタンクで醸し、2種類がありました。薫子さんが初めて酒造りにトライした酒であることと、冬の能登で見られる、海から上空へ登っていく雷にちなんで名づけられています。
2024年の福光屋との共同醸造では、救出した酒米だけを使い、谷泉の特別純米はできるだけ本来の仕込み配合に忠実に造りました。純米大吟醸「鶴と福」は、登雷などに使う協会1401号酵母と福光屋の吟醸酵母を使い、薫子さんにとって初めての2種類の酵母による香りの綺麗な酒にしました。2025年夏の時点では、谷泉は代々受け継いできたレシピで石川県産の米と酵母を使い続けるものと、新しい味わいへの挑戦の二本立てで造っています。薫子さんと晋太郎さんは同じ蔵に入るのが難しいため、別々の蔵で仕込みをしています。
福光屋との2期目の「鶴と福 2025 純米」は、兵庫県産山田錦100%を扁平精米で精米歩合70%に磨き、アルコール分14度に仕上げています。3期目の「鶴と福 2026」は純米吟醸で、精米歩合60%、鶴野酒造店の酒母から救出したT酵母を使いました。稲とアガベとの「稲とアガベと谷泉」(2025年3月24日発売・1,550本)は、2025年1月に晋太郎さんが秋田県男鹿市の醸造所を訪ねて開発した、米と麹に能登町ひらみゆき農園のブルーベリーを加えて発酵させたクラフトサケです。
代表銘柄
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谷泉
鶴野酒造店の代表銘柄です。被災前は、精米歩合50%の辛口の特別純米や純米吟醸、筆文字ラベルの純米大吟醸「愛」、無濾過生原酒のシリーズなどを造っていました。地震後は、福光屋をはじめ「能登の酒を止めるな!」に参加する各地の蔵で醸しています。2025年夏の時点では、代々受け継いだレシピで石川県産の米と酵母を使う谷泉と、新しい味わいへの挑戦の二本立てです。
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超辛口の酒で、読みは「とらい」です。薫子さんが初めて酒造りにトライした酒であることと、冬の能登で見られる海から上空へ登る雷にちなんで名づけられました。被災前は母と娘が別々のタンクで醸し、2種類ありました。黒ラベルの娘バージョンは純米吟醸で、日本酒度はプラス21でした。
見学・購入
- 蔵見学
- なし
- 直売所
- 「鶴と福」は福光屋の直営店と通販で、谷泉の各商品は全国の一部の酒販店で扱われています。
- 補足
- 酒蔵と併設の店舗は地震で全壊しており、蔵の見学はできません。各地の蔵で醸した酒を、イベントなどを通じて届けています。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 石川県鳳珠郡能登町鵜川19-64
- 創業
- 1789年
- 公式サイト
- www.taniizumi.com
出典
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