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水谷酒造

代表銘柄:千瓢・千実

愛知県

AICHI

愛知県愛西市に所在する酒蔵で、代表銘柄は「千瓢」と「千実」です。江戸時代末期に地元で庄屋を務めた水谷治右衛門によって創業されました。豊臣秀吉の馬印である千成瓢箪に由来する銘柄「千瓢」の「純米大吟醸 奏」は、平成28年度愛知のふるさと食品コンテスト優秀賞を受賞しています。火災前には、名古屋で回収した食品残渣から作った有機肥料で育てたお米「あいちのかおり」を使い、リユース瓶(Rマークびん)に詰めた純米酒「めぐる」も造っていました。

2024年5月に火災で酒蔵が全焼する被害を受けましたが、他酒蔵の協力による「共同醸造」という形で酒造りを続けています。2026年1月には立松豊大さんが代表取締役に就任し、水谷政夫さんは会長兼杜氏となりました。新蔵は2027年5月からの試運転を予定しています。

水谷酒造の歩み

水谷酒造は、愛知県愛西市鷹場町久田山にある酒蔵です。創業は江戸時代末期で、現在の愛西市鷹場町にあたる地で庄屋を務めていた水谷治右衛門が始めました。治右衛門は地域の農業を安定させるために用水路の造成に力を尽くした人物で、その功績を刻んだ開渠記念碑が今も残されています。水谷家は1600年代からこの地に根を下ろし、治水や開墾を通じて地域の農業と関わってきた家で、当主の水谷政夫さんは5代目にあたります。

主力銘柄の「千瓢」は、戦国時代に天下統一を果たした郷土の英雄、豊臣秀吉の馬印「千成瓢箪」にちなむ名前です。蔵ではかつて越後杜氏が酒造りを担い、蔵の沿革は平成8年度の全国新酒鑑評会での金賞受賞を挙げています。平成10年に桶売りをやめ、高齢の杜氏らが引退した後は、水谷政夫さんが蔵元杜氏として一人で造る体制となり、社員1名で蔵を営んできました。火災に遭う前は、創業当時の建物の一部が残り、2022年時点では江戸・大正・昭和に建てた蔵がすべて現役で使われていました。

2015年からは、愛知県が開発した酒造好適米「夢吟香」と愛知県酵母を使い、一般の人も田植えや稲刈り、酒造りに参加できる「米づくりと酒づくり食育体験」を始めました。夢吟香を育てたのは、地元の農業法人アグリ:サポートの立松豊大さんです。この取り組みから生まれた純米大吟醸「千瓢 奏」は、平成28年度の愛知県ふるさと食品コンテストで優秀賞を受賞しました。2021年には名城大学で日本酒を学んだ後藤実和さんが入社し、酒質設計から手がけた新ブランド「千実」を立ち上げています。

2024年5月9日の午後2時20分ごろ、仕込み蔵で火入れ作業をしていたときに出火し、酒蔵と家屋が全焼しました。従業員や近隣の方に怪我はありませんでしたが、醸造設備と貯蔵していた酒のほぼすべてを失いました。同年6月に再建を目指す方針を公表し、同じ愛西市の山忠本家酒造(義侠)の協力で共同醸造という形で酒造りを再開しました。2025年2月までの約6か月は後藤さんが山忠本家酒造で修行し、同年3月には山崎合資会社で「千実」を仕込んでいます。

令和6酒造年度には、山忠本家酒造や山崎合資会社のほか、鶴見酒造(津島市)で「千瓢 純米 あいちのかおり vol.2」を、関谷醸造(豊田市・設楽町)でも仕込みました。令和7酒造年度は、鶴見酒造、丹生酒造(福井県越前町)、関谷醸造の3蔵と共同醸造を行うと公表しています。

再建に向けて2025年6月30日から8月28日までクラウドファンディングを実施し、目標の2,000万円を超える合計2,375万円が1,002名から寄せられました。2026年1月1日には立松豊大さんが代表取締役に就任し、水谷政夫さんは会長兼杜氏となって、経営と製造を分担する体制になっています。同年9月4日には鷹場町の建設予定地で新蔵の地鎮祭を行い、2027年4月末ごろの建物引渡しと、5月からの試運転・試作を予定しています。再建のコンセプトは「希望を灯す共創の地酒」で、新蔵では後藤実和さんが杜氏を務める予定です。

酒造りの特徴

酒造りに使う水は、木曽・長良・揖斐の木曽三川がもたらす伏流水です。蔵のある濃尾平野は良質な米が穫れる土地で、冬には伊吹山から吹き下ろす「伊吹おろし」で冷え込むことも、蔵は酒造りに適した条件に挙げています。原料米には、愛知県が開発した「あいちのかおり」を1986年から使ってきました。蔵の周囲の田んぼで多く栽培されている米で、アグリ:サポートが農薬の使用量を通常の半分以下に抑えて育てています。

目指す酒質は、飲み飽きせず朗らかな気持ちでずっと飲んでいられる、優しいお酒です。火災前の2021年ごろには、あいちのかおりを精米歩合70%で使い、30年以上変わらない設計で醸した21度のキレのある甘口「千瓢 原酒」や、熟成したもろみを酒袋に吊るして自然に滴り落ちる酒だけを取る「千瓢 純米大吟醸 雫取り」(兵庫県産特等山田錦35%、16度)、夢吟香を40%まで磨き愛知県酵母のFIA3で醸した「千瓢 奏」を造っていました。

2022年時点では温度管理のできるタンクなどの新しい設備は持たず、米やもろみの様子をよく見て、くみ出しにも大きなひしゃくを使い、手作業で丁寧に造っていました。

火災前には、資源が循環する社会を目指した純米酒「千瓢 めぐる」も出していました。名古屋で回収した食品残渣から作った有機肥料で育てた愛知県産のあいちのかおりを使い、愛知県酵母のFIA1で精米歩合65%、アルコール分15度の淡麗辛口に仕上げ、「R」のマークがついたリユースびんに詰めて、飲む人、造る人、売る人、返す人が一つの輪になる酒として売り出しました。蔵ではほとんどの商品にリユースできるびんを使っていました。

共同醸造の期間は、受け入れ先の設備や環境に合わせて酒造りを組み立て直しています。鶴見酒造との共同醸造で生まれた「千瓢 純米 あいちのかおり 橙(daidai)」は、愛西市産のあいちのかおりを精米歩合60%で使い、協会15号酵母で醸した火入れの純米酒で、アルコール分は16度です。ほかに、ひだほまれを使った「千瓢 純米」と「千瓢 純米吟醸」、「千瓢 夜涼み うすにごり」、「千実」シリーズの「紅掛空」「不言」などを造っています。

「千実」では令和6酒造年度に10号酵母を初めて使うなど、後藤さんが新しい酵母や製法に取り組んでいます。

代表銘柄

千瓢

水谷酒造の主力銘柄で、豊臣秀吉の馬印「千成瓢箪」にちなむ名前です。火災前は原酒や純米大吟醸の雫取りなども造っていました。共同醸造期の現行品には、あいちのかおりを使った純米と純米吟醸の橙・紺、ひだほまれの純米と純米吟醸、夜涼み うすにごりがあります。

千実

後藤実和さんが酒質設計から原料選び、製造計画まで初めて自ら手がけたブランドで、令和5酒造年度の千実は夢吟香を精米歩合55%で使う純米吟醸でした。名前には千ほどもの実りある経験や出会いを重ねたいという思いが込められています。火災後も共同醸造先で「紅掛空」などを醸し、令和6酒造年度には10号酵母にも挑みました。

見学・購入

直売所
県内外の酒販店で取り扱っています。
補足
酒蔵は再建工事中で、新蔵では2027年5月から試運転を始める予定です。蔵を訪れる体験として、田植えや稲刈りに参加できる食育体験などのイベントを開いてきました。

見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。

蔵の基本情報

所在地
愛知県愛西市鷹場町久田山12
公式サイト
www.mizutanishuzou.jp

出典

sakedata.jp / mizutanishuzou.jp / oishiisake.jp / revive.inc / es-net.jp / sakagura-press.com / prtimes.jp / makuake.com / saketomo.tv-aichi.co.jp / web.archive.org

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