SAKE BREWERY — AICHI
萬乗醸造
紹介
1647年に創業した愛知県名古屋市緑区の老舗酒蔵です。15代目当主の久野九平治氏のもと、1997年に代表銘柄「醸し人九平次」の出荷を開始しました。熟れた果実のような味わいや品のある酸味を活かしたエレガントな仕上がりが特徴で、フランス・パリの三ツ星レストランで提供されるなど海外でも高い評価を得ています。原料への強いこだわりから、自社で米作りから手がける「ドメーヌ」の思想を導入し、兵庫県黒田庄町で酒米「山田錦」の栽培に取り組んでいます。2024年には黒田庄に自社栽培米をその場で醸造する新蔵を建設しました。さらにフランス・ブルゴーニュにおけるワイン醸造や現地での酒米栽培など、従来の枠にとらわれない革新的な酒造りを展開しています。なお、本社にある主屋などの建築物は国の登録有形文化財に指定されています。
歴史
萬乗醸造の当主は、代々「九平治」の名を襲名する久野家が務めてきました。久野家はもともと名古屋・大高村の庄屋を務めた家柄で、江戸時代の1647年に酒造りを始めたと伝えられています。15代目の久野九平治氏は、大学時代は演劇の世界に身を置いていましたが、その後家業である酒造りの道に入りました。
継承した当時の蔵は、大手酒造メーカーの下請けとして安価な酒を大量生産する機械化された蔵でした。九平治氏は「自分の酒は自分の顔で世に出したい」との思いから経営方針を転換し、伝統的な杉製の甑による蒸米工程に着目します。杉甑を用いることで、米の中心まで水分がしみ込みすぎず、ふっくらとした蒸し上がりを得られることを見出し、酒質の底上げにつなげました。
1997年には自社のオリジナルブランド「醸し人九平次」の出荷を開始し、2002年には仕込みを吟醸酒・大吟醸酒に限定する専門蔵へと転換しました。転機となったのはパリのホテルで開かれたイベントで、九平治氏の酒を口にしたフランス人から「手づくりの味がする」と評価されたことでした。この経験から日本酒がフランスでも受け入れられる手応えを得て、以後パリを中心に販売活動を重ね、現地のミシュラン三ツ星レストランでも供されるようになりました。
原料米への関心を深めた九平治氏は、パリでのワイン営業を通じて、ワインが毎年のブドウの出来を語る「ビッグヴィンテージ」の文化を持つ一方、日本酒の造り手の多くが米の生育に向き合っていない現実に気づきます。「田んぼを知らずして日本酒を語っていいものか」という自問から、2010年に兵庫県西脇市黒田庄町で酒米・山田錦の自社栽培に着手し、2011年には自社栽培米のみで仕込んだ「黒田庄に生まれて、」を初リリースしました。2013年には地元から田んぼの譲受を持ちかけられ、2014年には農業法人を設立して栽培体制を整えています。
本社に残る主屋をはじめとする建造物群は、2007年7月31日付で国の登録有形文化財に登録されています。現在、醸造の現場は九平治氏の友人である杜氏の佐藤彰洋氏が担っています。
酒造り
醸し人九平次の酒造りでは、一般に嫌われがちな苦味や渋味、そして酸味を過度に取り除かず、あえて残すことを大切にしています。九平治氏は酸を「人の背骨のようなもの」と表現し、酸があることで熟した果実のような旨味や香りに輪郭が生まれると考えています。
原料米については、リリースする商品の米すべてに造り手として責任を持つとの考えから、兵庫県黒田庄町や岡山県で自社栽培に取り組んでいます。黒田庄では現在、約1ヘクタールの自社田で山田錦を育て、栽培期間中はスタッフ6名が現地に移住して稲の生育に向き合うなど、栽培から醸造、瓶詰めまでを一貫して手がける「ドメーヌ」の思想を実践しています。
こうした姿勢は日本酒だけにとどまらず、2016年からはフランス・ブルゴーニュにおいて「ドメーヌ・クヘイジ」としてワイン醸造にも乗り出しました。現地で自ら畑を持ち、ブドウ栽培からワイン造りまでを手がけることで、米作りとブドウ作りの両面からテロワールを酒質に反映させる試みを続けています。2024年春には、黒田庄の自社田に隣接する形で、収穫した米をその場で仕込める新しい醸造所「Domaine Kurodasho」を稼働させました。
蔵データ
代表銘柄
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醸し人九平次
1760円
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- Eye collection
醸し人九平次:主力銘柄で、山田錦や雄町を用い、精米歩合35〜50%の純米大吟醸を中心に展開しています。白ワインにも例えられる味わいが特徴で、熟した果実を思わせる香りと、意図的に残された苦味・渋味とエレガントな酸味が層をなします。Collection シリーズには『別誂』『彼の地』『human』があり、ラベルには米の収穫年を記載しています。
Eye collection:「醸し人九平次」のCollectionシリーズの中で、かつて限定的に展開されていた大吟醸です。発酵を終えたもろみを袋に入れて吊るし、一切加圧せず重力のみで搾る「袋取り」という手法で仕込まれていました。裏ラベルには、雫となって落ちる一滴一滴を眺めていると「澄んだ瞳」に吸い込まれるような錯覚を覚える、という由来が記されており、銘柄名の「EYE」はこの情景に由来します。味わいはきめ細やかな引き締まりと、熟成を思わせる丸みを併せ持ち、余韻を残しながら穏やかに収束していく仕上がりとして造られていました。
見学・購入
日本酒とフランス産ワインの両方を扱う公式オンラインショップ「LA CAVE de Kuheiji」で購入できるほか、ディナーイベントのチケット販売も行われています。
一般向けの酒蔵見学については、公式サイト上に案内が見当たらず確認できませんでした。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
同じ愛知県の酒蔵
出典
sake-times.com / kuheiji.co.jp / anchorman-inc.tokyo / wikipedia.org / beautifulsake.jp / discoverjapan-web.com / sunfrt.co.jp / jp.sake-times.com / online.bunka.go.jp / yukinosake.com / shop.kuheiji.co.jp
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