柴田酒造場
代表銘柄:孝の司
愛知県
AICHI
1830年創業
愛知県岡崎市保久町神水に所在する柴田酒造場は、天保元年(1830年)に庄屋で地主でもあった柴田家が余剰米を用いて酒造りを始めたことに始まる老舗酒蔵です。明治31年(1898年)の蔵の火災で樽から酒が流れ出し、川を伝って下流まで届いたことで酒蔵の存在が知られたという逸話が残されています。
最大の特徴は、洗米から仕込みに至るまで全ての工程に、地名の由来でもある裏山から湧き出る硬度0.2の超軟水「神水(かんずい)」を使用している点です。地元・愛知県産の酒造好適米「夢山水」などを中心に用い、超軟水の特性を生かした雑味のない柔らかで綺麗な味わいの酒造りを行っています。
代表銘柄は「孝の司」で、ほかにも生酛・山廃造りの「众(ぎん)」や「神水」などを手掛けています。全国新酒鑑評会での金賞をはじめ、名古屋国税局酒類鑑評会やワイングラスでおいしい日本酒アワード、全国燗酒コンテストなど数々の鑑評会やコンテストで受賞歴があります。
柴田酒造場の歩み
柴田酒造場は、愛知県岡崎市北部の山あい、保久町神水に蔵を構える酒蔵です。標高は約350メートルで、夏は冷涼、冬は厳寒という気候の山里にあります。創業は江戸時代後期の天保元年(1830年)で、庄屋で地主でもあった柴田家が、余剰米を使って酒を造り、売り出したのが始まりです。
明治31年(1898年)8月9日の夜、蔵が火事に遭い、樽の中の酒が蔵近くの川を伝って、はるか下流の岡崎市まで流れ着きました。川沿いに暮らす人々がこの山奥に造り酒屋があることを知り、蔵の名が広く知られるきっかけになったという逸話が残っています。蔵は翌明治32年(1899年)に五代目の柴田類太が建て替え、その建物が現在も旧蔵として残っています。明治39年(1906年)に山保合資会社が設立されて酒造りを引き継ぎ、大正11年(1922年)に六代目の柴田清蔵がその権利を受け継いで、酒名「孝の司」を商標登録しました。
昭和の時代には、仕込み水の確保が課題でした。母屋と貯蔵蔵にあった井戸は水量が少なく、隣家の横を流れる川からも水を引いていましたが、工場の重油タンクから重油が流れ出して井戸が使えなくなったため、新たな水源を求めて井戸を掘ることになりました。掘った井戸は全部で七つあり、現在も主に使っているのは「松林」と「岩ノ上」の二つです。「松林」は昭和33年(1958年)に完成し、七代目の柴田卓男も村松杜氏や従業員とともに、素焼きの土管150個を山の頂上まで運びました。「岩ノ上」は平成15年(2003年)の完成です。
昭和48年(1973年)には、七代目が現在の分析場や瓶詰場のある鉄筋工場と貯蔵庫を建てました。
平成26年(2014年)からは生酛・山廃による酒造りに取り組んでいます。平成27年(2015年)に新しい蔵「众醸蔵」の建設に着工し、平成28年(2016年)に完成して、新ブランド「众(ぎん)」の製造が始まりました。「众」の字には、一つ屋根の下に人々が集まり、力を合わせて世界に誇れる酒を造るという思いが込められています。九代目の柴田佑紀は平成29年(2017年)に蔵へ入り、八代目の柴田秀和から代替わりして、令和5年(2023年)10月に代表に就いています(令和8年時点)。
令和6年(2024年)の夏には「孝の司」のラベルを一新するブランドリニューアルを行い、令和7年(2025年)の若手蔵元の催し「若手の夜明け」の審査会では、冷酒部門で1位、総合で2位に入っています。
全国新酒鑑評会では、平成7・10・11・12・13・20酒造年度の計6回、金賞を受けています。平成14酒造年度以降に限ると、平成18・19・20・21・24・27・29の各酒造年度と令和4酒造年度の計8回、「孝の司」の商標で入賞しており、金賞の平成20酒造年度はその1回にあたります。名古屋国税局酒類鑑評会では、平成16年の第52回以降、第53回と第62回を除くすべての回で優等賞以上を受けています。平成26年度の第63回から令和7年度の第74回までは12年連続です。
平成20年度と平成23年度は、吟醸酒・純米酒・本醸造酒の3部門すべてで優等賞に選ばれました。令和3年度は純米吟醸酒の部で「孝の司 純米大吟醸神水」が、出品67製造場の中から選ばれる名古屋国税局長賞を受け、令和5年度は吟醸酒の部で「大吟醸 神水仕込」が局長賞でした。令和の時代には、純米酒の部で「众 山廃純米原酒」、純米吟醸酒の部で「純米大吟醸 神水」、燗酒の部で「孝の司 夢山水 冷やおろし」「孝の司 純米吟醸」などが優等賞に入っています。
全国燗酒コンテスト2020では、プレミアム燗酒部門で「众 山廃純米原酒」が最高金賞、お値打ちぬる燗部門で「孝の司 心」が金賞でした。ワイングラスでおいしい日本酒アワードのプレミアム純米部門では、2021年に「孝の司 純米吟醸 夢山水 無濾過生原酒」が、2022年に「孝の司 純米大吟醸 生酒」が金賞を受賞しています。ほかに、IWC 2018で「众 生酛50%」がブロンズを受け、令和元年(2019年)の愛知県酒造組合の清酒きき酒研究会では本醸造の部の県組合会長賞に選ばれています。
酒造りの特徴
仕込み水は、蔵の後ろの山から湧き出る井戸水「神水(かんずい)」です。保久町神水という地名の由来でもあり、硬度は0.2という極めてやわらかな超軟水です。洗米から仕込み、器具類の洗浄まで、酒造りのすべての工程にこの水を使っています。蔵の裏手は花崗岩の硬い岩盤で、雨水が深く染み込まずに地表近くを流れて集まるため、ミネラルをほとんど含まない水になります。ミネラルは酵母の栄養源になるので、発酵が進みにくい水でもあり、この水でどう発酵を導くかが蔵の技の見せどころです。
令和6年(2024年)のブランド刷新に合わせて、ミネラル添加剤は使わなくなりました。
原料米は、愛知県の山間部で栽培される酒造好適米「夢山水」が中心で、令和7酒造年度の仕込みからは「孝の司」の酒米を夢山水に統一しています。蔵は令和3年(2021年)から高齢化が進む地元の田んぼや棚田を引き継いで自社田で米を育てており、農薬と化学肥料を使わずに夢山水を栽培しています。肥料を極力抑えてタンパク質の少ない米に育てることで、深く削らずに雑味を抑え、超軟水では不足しがちなミネラルを米に残す狙いです。自社田の米で仕込む「自社米酒」も造っており、令和5酒造年度から令和7酒造年度まで毎年新酒が出ています。
酒造りは10月に始まり、翌年4月初めまで続く寒造りです。製造は杜氏の伊藤静香を中心にした少人数のチームで行い、全員が現場で議論しながら工程を見直しています。平成26年(2014年)からは日本古来の手法である生酛・山廃による酒造りにも取り組んでおり、「众」はその生酛・山廃で醸すブランドです。平成28年(2016年)に建てた「众醸蔵」に加え、近年はオールステンレスの麹室、対流を生むジャケットタンク、お酒に負荷をかけないサニタリーポンプ、高性能のろ過機などを導入し、超軟水の繊細な味わいを損なわない設備を整えています。
三段仕込みは4日間かけて行い、火入れをする酒は、貯蔵前と瓶詰め前の二度行います。目指すのは、柔らかくきれいでありながら、米の旨みや甘みも感じられるお酒です。
酒は愛知県内だけでなく全国に出荷され、アメリカ、中国、マレーシア、オーストラリア、台湾にも輸出されています。敷地内には、築130年を超える土蔵を蔵人たちの手で改装した「蔵cafe一合」があり、酒粕を使ったパンやスイーツなどが味わえます。令和3年(2021年)から毎年、田植えを体験できる「Tanbo Lab.」も開かれています。
代表銘柄
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孝の司
蔵の代表銘柄で、酒名は孝行息子が酒の湧き出る泉を見つける民話「養老の滝」にちなみます。祭礼や贈答にも欠かせない地酒として、「心」「超辛口」「しぼりたて」といった日常の酒から、純米吟醸の夢山水、純米大吟醸の神水まで幅広く揃います。仕込みはすべて硬度0.2の超軟水で、やわらかくきれいな味わいが特徴です。燗酒の評価も高く、2020年の全国燗酒コンテストでは「心」が金賞でした。
楽天で商品を見る見学・購入
- 蔵見学
- なし
- 直売所
- 蔵の敷地内の直売所で購入できます。営業時間は平日10時から16時、土曜は11時から16時で、日曜と祝日は不定休です。営業日は公式サイトの営業日カレンダーに掲載されています。
- 補足
- 酒蔵見学は行っていません。敷地内には「蔵cafe一合」があり、酒粕を使ったメニューなどを楽しめます。蔵の近くには、旧簡易郵便局を改装した一日一組限定の一棟貸し宿「脈(MYAKU)」が令和8年(2026年)1月に開業しました。車では東名高速の岡崎ICから約30分、公共交通機関では岡崎げんき館前からささゆりバスの下山地区線で約40分で、バスは平日のみの運行です。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 愛知県岡崎市保久町神水39番地
- 創業
- 1830年
- 公式サイト
- kounotsukasa.co.jp
出典
japansake.or.jp / shibatabrewery.com / pref.aichi.jp / imadeya.co.jp / oishiisake.jp / nta.go.jp / kansake.jp / finesakeawards.jp / nrib.go.jp / okazaki-kanko.jp / saketomo.tv-aichi.co.jp / note.com / okazaki-angle.com
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