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君の井酒造

代表銘柄:君の井・恵信

新潟県

NIIGATA

1842年創業

新潟県妙高市に所在する君の井酒造は、江戸時代の天保13年(1842年)に創業した酒蔵です。社名の「君の井」は、明治天皇への献上(君)と湧き出る良質な水(井)に由来すると蔵では推測しています。同蔵の醸造上の大きな特徴は、蔵内に生息する天然の乳酸菌を活用した伝統的な「山廃仕込み(蔵付乳酸菌仕込)」を長年追求・継承している点です。仕込み水には妙高山麓の雪解け水(伏流水)を使用し、地元妙高産の原料米を中心に据えて、豊かな旨味とコクを持つ食中酒を手掛けています。

また昭和初期には、全国に先駆けて琺瑯(ホーロー)タンクを導入し、縦型精米機も取り入れるなど、日本酒醸造の技術革新にも貢献してきました。代表銘柄には「君の井」のほか、晩年をこの地で過ごした親鸞聖人の妻に由来する「恵信」などがあり、Kura MasterやIWC(インターナショナルワインチャレンジ)をはじめとする国内外の品評会で受賞歴を持ちます。

君の井酒造の歩み

君の井酒造は、新潟県妙高市の旧北国街道沿い、新井宿に構える酒蔵です。北国街道は北陸の大名の参勤交代の道であり、佐渡で産出した金を江戸へ運ぶ輸送路でもありました。新井は降雪量が10メートル以上にもなる豪雪地で、冬は天然の冷蔵庫となり、妙高山麓に源を発する矢代川の伏流水にも恵まれて、酒造りに適した環境をなしています。創業は天保13年(1842年)です。蔵には当時の高田藩の酒造り128石の許可証が残り、そこに天保13年と記されていることから、この年を創業年としています。

新井は火災が多く、とくに明治の大火で過去の記録の多くが失われました。

「君の井」という名の由来を示す明確な記録は残っていません。ただ、明治のはじめに蔵の隣の東本願寺別院へ明治天皇が来られた際、酒を献上したことから、「君主に献上した酒」の意で「君」の字が使われ、「井」は良質な水が湧く井戸にちなむと、蔵は推測しています。かつては等級として、上位から「君の井」「桜誉」「金華山」の名で販売し、焼酎やみりんも造っていました。昭和26年に君の井酒造株式会社へ社名を改めるまでは「田中酒舗」として営業し、屋号は「田中屋」「酒田中」、当主は代々「大五郎」を名乗ってきました。

昭和初期の当主、田中大五郎は、品質を高めるにはまず高精米と考え、横型の精米機をやめて新型の縦型精米機を導入しました。昭和3年(1928年)には琺瑯タンクをいち早く取り入れ、昭和4年には当時としては珍しい鉄筋コンクリートの酒蔵を建てています。琺瑯タンクは、君の井酒造を含む新潟の4蔵が製造元の灘琺瑯タンク製作所を支援して採用し、のちに全国へ広がったものです。こうした取り組みの成果として品評会で数々の賞を得て、昭和13年の第16回全国酒類品評会では、既往の品評会でも連続して入賞していることから名誉賞を授与されました。

大五郎は新潟県醸造試験場の設立にも関わり、新潟県の酒質向上に力を尽くした人物です。新潟清酒の父と呼ばれる田中哲郎も、若い頃に君の井酒造で酒造りを学んでいます。

現在の仕込み蔵は、篠田次郎氏の設計で昭和42年に建てた鉄筋コンクリート造りの建物です。平成4年には精米機を完全なコンピューター制御にし、近年は瓶詰工場の建て直しや洗瓶機、ボイラーの更新も進めてきました。蔵の経営理念は「不易流行」で、蔵のモットーは「その旨味の為に惜しみなく手を掛けること」です。代表は七代目の田中智弘さんで、2025年7月時点の従業員は16名です。2022年には創業180周年を記念して、山廃純米大吟醸の斗瓶囲いを発売しました。

生産量は一時期12,000石に達しましたが、2016年時点では約5,000石で、特定名称酒は3割、残り7割は地元で消費される普通酒でした。

全国新酒鑑評会では、平成14酒造年度以降に13回入賞し、そのうち金賞は平成14・15・17・18・26酒造年度の5回です。金賞以外の入賞は平成16・19・23・24・25・29・30、令和2酒造年度です。関東信越国税局酒類鑑評会では、蔵の発表によると、第71回で最優秀賞を受けています。平成15年の第74回は吟醸酒の部で優秀賞でした。平成20年の第79回から平成29年の第88回までは10回連続で受賞場に選ばれ、第79・80回は燗酒の部で、第81〜88回は吟醸酒の部で優秀賞を受けています。

第82〜84回は純米酒の部でも優秀賞で、平成26年の第85回は吟醸酒の部の最優秀賞です。その後も、令和3年の第92回に吟醸酒の部、令和4年の第93回に純米酒の部で優秀賞、令和7年の第96回に純米酒の部で特別賞を受けています。海外では、Kura Masterで2020年に純米酒部門のプラチナ賞を受けたほか金賞を重ね、アメリカの全米日本酒歓評会では2019年の純米部門と2020年の吟醸部門で金賞でした。ロンドンのIWCのSAKE部門でも、蔵の発表では、2022年から2024年にかけて銀賞と銅賞を受けています。

酒造りの特徴

造りの中心は山廃仕込みです。蔵に生息する天然の乳酸菌を育てて酒母を造る方法で、蔵では「蔵付乳酸菌仕込」と呼んでいます。市販の乳酸菌は加えず、元気な酵母を増やして良質な酒母に仕上げます。山廃は生もと造りの一種で、水・麹・蒸米を桶に入れてすりつぶす山卸の作業を廃止した技法です。酒母づくりには生もと同様に1か月ほどかかります。蔵では山廃という酛造りが紹介された時から造り続け、一度もやめたことがないと、杜氏の早津宏さんは語ります。一方で山廃だけでなく近代的な造りも行い、その時代に見合った多様な旨味を追求しています。

山廃の酒母は、暖気樽に熱湯を入れて酒母の中に沈め、温度を調節します。蔵では木製の暖気樽を使い、木は持っても熱くなく、酒母の中でも熱の伝わり方が穏やかで、乳酸を増やす段階に向くと社長と杜氏が説明しています。蒸米を運ぶ桶も木製で、保温性が良く、湯気も吸収します。一方、仕込みのタンクはすべて琺瑯タンクです。2016年時点では、通常の酒には連続蒸米機を使い、大吟醸には古い蔵に残る和釜で蒸していました。釜やこしきは今も現役で、築100年以上の社屋とともに蔵見学で見られます。

仕込み水は、妙高山麓に源を発する矢代川の伏流水を、敷地内の井戸から汲み上げています。春先の雪解け水が田に流れ込んで良質な米を育て、地中でろ過された水が仕込み水になると、蔵は説明します。原料米には地元の妙高市産を積極的に使い、越淡麗・越神楽・五百万石・山田錦などを用いてきました。杜氏の早津さんは1976年に入社し、2006年から杜氏を務めています。自ら田んぼを持って米作りにも携わり、2021年時点では、大吟醸に使う越神楽を妙高で自ら栽培していました。精米は磨きの精度を管理するため、ほぼ自社で行っています。

早津さんは2024年に、新潟県卓越技能者の「にいがたの名工」として表彰されています。

商品は、山廃仕込みの「君の井 山廃」(純米・純米吟醸・純米大吟醸)、地元妙高産の米と水で造る淡麗な「君の井」(純米・純米吟醸・純米大吟醸・大吟醸と、日本酒仕込みの梅酒)、長く愛されてきた定番酒の「伝承 君の井」(普通酒、上泉 本醸造、越乃酔鬼など)に分かれます。越乃酔鬼は新潟県産米を使い、精米歩合65%で造る辛口の晩酌酒で、蔵の発表では、2023年のIWCで銀賞を受けました。純米 淡冷酒、純米 秋あがり、純米 しぼりたて旬、雪解雫といった季節限定酒もあります。

蔵は日本酒は食中酒という考えから、昔から食と合う旨味のある酒造りを続けています。香港への輸出は2026年までに10年を超えました。2021年時点で、お酒を楽しむ観光列車「越乃shu*kura号」の専用酒(大吟醸の原酒)も醸造していました。

代表銘柄

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君の井

蔵の名を冠した主銘柄で、山廃仕込みの「君の井 山廃」と、地元妙高産の米と水で造る淡麗な「君の井」があります。山廃純米は、2020年のKura Master純米酒部門でプラチナ賞、2024年の同クラシック酛部門で金賞です。蔵の発表では、山廃純米吟醸が2022年の同純米酒部門で金賞、純米吟醸も2026年の同純米酒(51~65%)部門で金賞を受けています。

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恵信

晩年をこの地で過ごした親鸞聖人の妻、恵信尼にちなんで命名された新しいブランドで、純米大吟醸が中心です。華やかな香りと、甘さと酸味のバランスのよさが持ち味です。蔵が「君の井山廃の新たな形」と呼ぶ「純米大吟醸 恵信 越淡麗」の無濾過原酒は、蔵の発表では、2026年に香港のOriental Sake Awardsで吟醸酒部門の金賞と、新潟県出品酒の最高評価にあたる特別賞を受けています。

見学・購入

蔵見学
あり(要事前確認)
直売所
蔵内の売店で購入でき、発送も受け付けています。公式のオンラインショップもあります。
補足
見学は9:00〜16:00の自由見学で、予約は不要、入場は無料です。おすすめの酒を無料で試飲できます。自由見学は最大15名までで、15名以上の団体は事前の予約が必要です。営業日は蔵が公開するカレンダーに従います。駐車場があります。問い合わせは0255-72-3136(営業日8:30〜17:00)です。

見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。

蔵の基本情報

所在地
新潟県妙高市下町3-11
創業
1842年
公式サイト
www.kiminoi.co.jp

出典

kiminoi.com / myokotourism.jp / sakedata.jp / compalyze.co.jp / sake-harasho.com / nihonshu-tourism.com / niigata-sake.or.jp / sakagura-press.com / kiminoi-shop.com / web.archive.org / nta.go.jp / nrib.go.jp / kuramaster.com / sakeappraisal.org / jp.sake-times.com / oyado-furuya.jp / syukoukai.cocolog-nifty.com

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