富士正酒造
代表銘柄:富士正
静岡県
SHIZUOKA
1866年創業
慶応2年(1866年)に静岡県富士宮市上野にて「佐野酒造場」として創業した酒蔵です。2011年に富士山麓の標高約900mに位置する朝霧高原(あさぎりフードパーク内)へ移転し、「富士山に一番近い酒蔵」として酒造りを行っています。
仕込み水には、地下約200mから汲み上げたバナジウムやミネラルが豊富な富士山の伏流水(軟水)を使用しています。標高が高く涼冷で雑菌が少ない自然環境のもと、機械任せにせず伝統技術と手作りの仕込みを重視した丁寧な造りを徹底しています。
醸される日本酒は、料理の味わいを邪魔せず引き立てる繊細でキレのある淡麗辛口なスタイルが特徴です。毎日の晩酌に寄り添う酒を目指しており、代表銘柄「富士正」「千代乃峯」をはじめ、本格焼酎やリキュール類の製造・販売も手掛けています。
富士正酒造の歩み
慶応2年(1866年)、現在の富士宮市上野にあたる地で、佐野酒造場として創業しました。富士山の伏流水で酒を醸す造りは創業期から続いており、昭和31年(1956年)9月に富士正酒造合資会社として法人化しました。上野の蔵屋敷は、蔵の前に広がる田んぼ越しに富士山を望む場所にありました。先代蔵元の佐野直次氏は、寒さの厳しい富士山西麓で昔から味の濃い煮物やえぐみの強い野菜の料理が食べられてきたことを挙げ、そうした土地の風土を映し、郷土の料理と合わせて一番おいしい酒を造るのが地酒の本来の姿だと話していました。
平成23年(2011年)、蔵は標高約900mの朝霧高原に新築した「富士山あさぎり蔵」へ移り、10月に本社も富士宮市根原に移しました。この蔵は、翌2012年4月に開業したあさぎりフードパークの一角にあります。朝霧高原への移転は7代目から受け継がれた想いのひとつでした。この地には、富士山の湧水をより良い状態で使え、標高が高く空気中の雑菌が少ないという利点があります。移転にあわせて新シリーズ「朝霧蔵出」も発売し、蔵は「富士山に一番近い酒蔵」を掲げています。
新しい蔵での最初の造りは同年秋に始まり、前年まで頭(かしら)を務めていた岩手出身の南部流の若手杜氏が、杜氏に抜擢されて担いました。朝霧の寒さは上野とは別物で、早朝の気温がマイナス10度を下回ることもあります。
新型コロナウイルスの影響で販売が落ち込み、資金繰りが悪化したことから、2023年12月1日に静岡地方裁判所へ民事再生法の適用を申請しました。負債総額は約4億円でした。すしチェーン「沼津魚がし鮨」を運営する沓間水産のグループに入って事業の立て直しを図る計画で、2024年3月に富士正酒造株式会社として新体制での事業を始めました。2026年時点の代表者は沓間大作氏です。
全国新酒鑑評会では、平成14酒造年度以降に平成28酒造年度と令和元酒造年度の2回入賞しています。静岡県清酒鑑評会では吟醸の部で会長賞を計14回受けており、平成22〜26酒造年度は5年連続でした。純米吟醸の部でも平成22〜29酒造年度の8年連続に加え、令和元酒造年度には会長賞に選ばれ、令和5酒造年度まで5年続けて県の鑑評会で受賞しています。平成24年4月には、蔵の発表では岩手県南部杜氏自醸清酒鑑評会の純米吟醸酒の部と純米酒の部の両部門で入賞しました。
名古屋国税局酒類鑑評会では、第55回(平成18年度)と第56回(平成19年度)の本醸造酒の部、第61回(平成24年度)の純米酒の部(「千代乃峯」)、第65回(平成28年度)の吟醸酒の部で、それぞれ優等賞を受けています。
海外の酒チャレンジでも評価を受けています。柚子の日本酒リキュール「ワタシの柚子酒」は、ルクセンブルク酒チャレンジで令和4年と令和5年に金賞、令和6年にプラチナ賞を受けました。シンガポール酒チャレンジでは令和6年に「純米大吟醸48」と「ワタシの柚子酒」の2銘柄が、2年連続で受賞した酒に贈られるシンガポール最高賞に選ばれ、蔵の発表では前年の令和5年に2銘柄ともプラチナ賞でした。令和8年のIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)では、フレイバー・サケ部門で「ワタシの柚子酒」が静岡・柚トロフィーを受賞しています。
蒸留酒では、東京ウイスキー&スピリッツコンペティション2026で、スピリッツ「透香ジンジャー」が最高金賞、「透香オレンジ」が金賞に選ばれました。
酒造りの特徴
仕込み水は、東側の富士山と西側の毛無山からの水が合流する地下約200mの水を汲み上げたもので、バナジウムやミネラルが豊富な軟水です。蔵はこの水に塩素を加えず、そのまま仕込み水に使っています。酒はすべて富士山の湧水100%で仕込まれ、やわらかな水質を生かした、繊細でさらっとした淡麗辛口が主流です。
蔵は標高約900mの朝霧高原にあり、冬は氷点下15度ほどまで下がる一方、真夏でも平均気温は25度程度と涼しく、雑菌の少ない環境が酒造りに向いています。日本酒には静岡酵母を使い、丁寧な温度管理と少量仕込みにこだわっています。酒を醸す蔵人は平均年齢40歳の若い世代で、緻密な手仕事を重ねて一本の酒を形にしています。
原料米は酒の種類に合わせて使い分けています。純米大吟醸には山田錦を使い、一部の酒には地元富士宮産の酒米も用います。「朝霧蔵出 純米大吟醸」は兵庫県産山田錦を全量使って精米歩合40%まで磨き、通常30日かかるもろみ期間を40日間かけて、ゆっくり発酵させます。辛口の本醸造は精米歩合65%で、2023年ごろまでは「辛口本醸造げんこつ」の名で売られていました。「昔の親父のげんこつは痛かった」という思いを日本酒の辛口に例えた酒で、現在の公式通販では「辛口本醸造」「辛口純米」として並びます。
かつて「千代乃峯」の名で売られていた「富士に乾杯!」と「原酒ひや」は、現在は本醸造(精米歩合70%)として扱われています。
日本酒のほかに、酒粕を使って丁寧に蒸留する粕取焼酎「霧酎」を中心に、米焼酎や芋焼酎も造っています。契約農家の果実や富士山麓の素材を自社製の日本酒や焼酎に漬け込んだ、無添加仕立てのリキュール(柚子酒、梅酒、桃酒など)や、ボタニカルを生かしたジン・スピリッツ「透香」「和香ジン」も手がけます。
代表銘柄
富士正
蔵名を冠した主力銘柄で、純米大吟醸から特別純米酒まで幅広く揃います。代表の純米大吟醸は兵庫県産山田錦を精米歩合40%まで磨き、静岡酵母で醸します。純米大吟醸48は精米歩合48%の中口、特別純米酒は精米歩合58%でやや辛口のふくよかな味わいです。純米吟醸は静岡県産の令和誉富士を全量使い、精米歩合60%に仕上げています。
見学・購入
- 蔵見学
- あり(要事前確認)
- 直売所
- あさぎりフードパーク内の売店です。営業時間は9時30分から16時までで、12月から2月は毎週木曜日が定休日です。店内には常時20種類ほどの酒が並び、タンク直汲みの限定酒やリキュールを試飲できます。
- 補足
- 蔵見学は5月頃から9月中旬頃までで、時期によって変わります。所要時間は30分程度、定員は15名まで、料金は無料で、希望日の1週間前までの予約が必要です。酒造りの期間(9月下旬から4月頃)は一般のお客様向けの予約を休止しています。見学者通路は階段を上がった2階にあり、車椅子での見学はできませんが、売店には車椅子で入れます。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 静岡県富士宮市根原450-1
- 創業
- 1866年
- 公式サイト
- fujimasa-sake.com
出典
japansake.or.jp / thebase.in / sakenomy.jp / fujimasa-sake.com / compalyze.co.jp / sakagura-press.com / umachokubin.com / arwrk.net / shizuoka-sake.jp / nta.go.jp / nrib.go.jp / nikkei.com / news.at-s.com / asagiri-foodpark.com / web.archive.org / jp.sake-times.com / luxembourgsakechallenge.com / tokyowhiskyspiritscompetition.jp
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