山中酒造
代表銘柄:葵天下
静岡県
SHIZUOKA
1818年創業
静岡県掛川市に蔵を構える遠州山中酒造(山中酒造)は、文政年間(1818〜1830年)に近江商人の山中家が現在の富士宮市で酒造りを始め、1929年に横須賀の蔵が分家して独立した歴史ある酒蔵です。代表銘柄の「葵天下(あおいてんか)」は、徳川家康公の天下統一の礎となった横須賀城と遠州地域の歴史にちなんで名付けられました。仕込み水には、南アルプス赤石山系の伏流水を地下120メートルから汲み上げた超軟水を使用しています。酒造りでは、和釜を用いた蒸米や古式槽による槽搾り(ふなしぼり)など伝統的な手法を守っています。
全国新酒鑑評会での入賞・金賞受賞歴のほか、Kura Master(フランスの日本酒コンクール)やIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)といった海外のコンテストでも賞を受賞しており、国内外で高く評価されています。
山中酒造の歩み
遠州山中酒造のルーツは、近江商人だった山中家が文政年間(1818年から1830年)に現在の富士宮市で酒造りを始めたことにさかのぼります。山中家は富士周辺に高砂、玉世界、松爵、田子浦の四つの蔵を構えたのち、水量の豊かな良い水を求めて、遠州の横須賀にも一つの蔵を構えました。
1929年(昭和4年)、山中家から分家し、いまの蔵がある横須賀の地で山中酒造合資会社を設立しました。横須賀は、徳川家康が武田軍の西方進出に備えて家臣の大須賀康高に築かせた横須賀城の城下町で、城主が20代、約300年にわたって続いた土地です。旧街道には今も古い商家や街並みが残り、蔵はその一角にあります。
1986年(昭和61年)には二代目の山中隆のもとで「葵天下」の醸造が始まりました。蔵の発表では、銘柄名は先代が徳川家の家紋の葵からあたためていたもので、1980年代半ばに若い杜氏が蔵に入ったことをきっかけに「天下を取れるように」との思いを込めて世に出されました。同じ1986年に全国の鑑評会で金賞を初めて受賞し、そこから3年連続で金賞を重ねたと蔵は伝えています。1999年度からは杜氏や蔵人に任せず、蔵元自らが責任をもって醸造する体制をとっています。
全国新酒鑑評会では、平成14酒造年度から平成20酒造年度まで7年連続で入賞し、そのうち金賞は平成16年度、17年度、19年度、20年度の4回です。平成22酒造年度にも入賞しており、平成14酒造年度以降に限っても通算8回の入賞、うち金賞4回となります。蔵は平成13年から9年連続入賞と発表しています。名古屋国税局の酒類鑑評会では、平成14年から平成22年の間に8回入賞し、うち5回は優等賞(吟醸酒の部、純米酒の部、本醸造酒の部)でした。
静岡県新酒鑑評会では、静岡県酒造組合の会長賞を吟醸酒の部で14回、純米吟醸酒の部で12回受けており、吟醸酒の部は平成19酒造年度から平成28酒造年度まで10年連続です。直近は令和5酒造年度です。海外ではフランスの日本酒コンクール「Kura Master」の2024年に、純米酒部門で「55純米吟醸 誉富士」、純米大吟醸酒部門で「ブルーレーベル 葵」がプラチナ賞、同じく純米大吟醸酒部門で「ブラックレーベル ゴールド 磨き35」が金賞を受賞しました。
2026年には純米酒(66-100%)部門で「だもんで 70%純米酒 令和誉富士」が金賞を受賞しました。また、IWC2024では特別本醸造が本醸造部門でシルバー賞を受けたと蔵は伝えています。
2020年(令和2年)に山中隆の三男・久典が代表社員に就任し、2021年(令和3年)に遠州山中酒造株式会社へ組織変更しました。同時に浜友グループの傘下に入り、設備投資によって増産を始めています。2026年時点では久典が代表取締役を務めています。近年は二所ノ関部屋の横綱・大の里関や二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)とのコラボ酒、歌舞伎役者の片岡孝太郎とのコラボ酒など、相撲や歌舞伎にちなんだ商品も手がけています。
酒造りの特徴
仕込み水は、蔵の中で地下120メートルから汲み上げる地下水です。源流は南アルプスの赤石山系で、地中にしみ込んだ雨や雪解け水が200年ほどかけて遠州灘の海岸線まで流れてきたものだと蔵は説明しています。水質は酒造りに向く超軟水で、特徴はその水量にあります。毎分260リットルにおよぶ水が得られ、仕込み水だけでなく、多くの水を使う洗米にも用いられます。かつてはこの水質と水量を調べたガラスメーカーが当地への進出を決めたり、他の酒蔵が水を分けてもらいに来たりしたことがあるそうです。
水は一年を通して16℃に保たれ、汲み上げてすぐ使えるため、運搬や保管による劣化や水温の変化を避けられるとしています。
蒸米は、機械式のスチームではなく、伝統的な和釜で蒸します。熱の強さや伝わり方が理想的で、蒸し加減を細かく調整できるためです。搾りは自動圧搾機ではなく古式の槽で行う槽搾り(ふなしぼり)で、醪を入れた酒袋を槽に敷き詰め、上から圧をかけて搾ります。時間はかかりますが、優しく搾り出すので雑味のないきれいな酒につながるといいます。搾り切ると苦味や渋味が出やすいため、搾れるだけ搾ることはせず、圧をかける作業をあえて一度だけにする場合もあります。
「葵天下 斗瓶取り」では、醪を入れた酒袋を吊るして重力だけで搾る袋吊りを採用しています。
蔵元の山中久典は、先代の「いい酒、未だ分からず」という言葉を受け継ぎ、効率を追わず手間を惜しまない酒造りを続けています。純米大吟醸のブームに安易に乗らず、さまざまな精米歩合の酒や本醸造にも取り組み、洋食とのマリアージュも探っています。目指す味わいは、後から付けた香りではなく酒本来の香りを酒の中に閉じ込めることで、注いだ瞬間にふくよかな香りが立ち、口に含むとすっきりした甘みと清涼感が広がります。冷やでも燗でも合わせやすく、生しらすのほろ苦さや山椒の辛みと相性が良いと蔵は紹介しています。
原料米は、静岡県が開発した誉富士や令和誉富士、山田錦、雄町などを使い分けています。たとえば純米吟醸55%(誉富士)は静岡県産の誉富士を使い、少量仕込みの槽搾りで仕上げた辛口です。特別本醸造は福井県産の五百万石を使い、精米歩合60%、日本酒度は+13の超辛口です。
蔵の建物は江戸末期の安政七年(1860年)のもので、柱や梁に当時の木材を残した木造蔵です。三層の作業場をもち、一階には醸造タンクが並び、その周りに中二階のような作業用の足場があります。三階にあたる階には麹室、放冷場、酒母室が置かれ、酒造りの工程の順に作業しやすい構造になっています。これほど天井の高い木造蔵は他に見られないと蔵は話しています。
代表銘柄
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葵天下
葵天下は、徳川家の家紋である葵と、家康が築いた横須賀城にゆかりの深い遠州の歴史にちなんで名づけられた銘柄です。「天下泰平を醸す」という願いが込められています。ラインアップは、ブルーレーベルやブラックレーベルの純米大吟醸、純米吟醸55%、特別本醸造、斗瓶囲いの大吟醸まで幅広く、純米吟醸55%には誉富士、山田錦、雄町の3種の酒米があります。全国新酒鑑評会では平成14酒造年度以降に8回入賞し、うち4回が金賞です。Kura Masterでは2024年にプラチナ賞2点と金賞1点を受けています。
楽天で商品を見る見学・購入
- 直売所
- 蔵元SHOP(掛川市横須賀61、電話0537-48-2012)。営業時間は9時から17時、定休日は日曜日です。店の前に3台分の専用駐車場があります。
- 補足
- 浜松・掛川エリアの酒販店や飲食店でも取り扱われています。公式オンラインショップでの注文は国内向けのみで、電話やFAXでは受け付けていません。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 静岡県掛川市横須賀61
- 創業
- 1818年
- 公式サイト
- aoitenka.jp
出典
kuramaster.com / japansake.or.jp / aoitenka.jp / shizugin-smc.jp / saketime.jp / note.jp / sakagura-press.com / nrib.go.jp / at-s.com / web.archive.org
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