大谷忠吉本店
代表銘柄:登龍・白陽
福島県
FUKUSHIMA
1879年創業
福島県白河市に位置する大谷忠吉本店は、1879年(明治12年)創業の酒蔵です。「米・水・人」すべて地元白河産にこだわる酒造りを掲げています。仕込み水には創業時から敷地内の井戸に湧き続ける那須山系の伏流水(軟水)を用い、原料米には地元農家が栽培するチヨニシキなどを使用しています。
代表銘柄は、長年地域で愛されてきた看板酒「白陽」と、2007年に誕生した「登龍(とりゅう)」です。「登龍」の名は、現在は杜氏を務める大木兄弟の母校である白河高校のモットー「登龍健児」に由来します。麹歩合を高めることで引き出したしっかりとした濃密な旨みと、すっきりとしたキレの良さを両立した酒質が特徴で、冷やしてもぬる燗でも親しまれています。なお、旧奥州街道沿いに並ぶ漆喰蔵などの建造物群は白河市の歴史的風致形成建造物に指定されています。
大谷忠吉本店の歩み
大谷忠吉本店は、福島県白河市の旧奥州街道に面した現在の本町にあたる地で、1879年(明治12年)に創業した酒蔵です。法人としての設立は1957年(昭和32年)で、銘柄は「白陽」と「登龍」の二つです。
店舗の両側に漆喰の蔵が並び、奥には空にそびえる煉瓦造りの煙突を中心に3棟の酒蔵が建っています。これらの建造物群は創業のころのものと考えられ、白河市が2011年(平成23年)に歴史的風致形成建造物に指定しました。煙突は地震の影響で使えなくなりましたが、補強をして残されています。
3代目の大谷忠一郎は、本名を忠吉といい、1902年(明治35年)に白河で生まれ、1963年(昭和38年)に亡くなりました。酒造業のかたわら詩人としても活動し、1924年(大正13年)に詩集『沙原を歩む』を刊行し、1948年(昭和23年)には小説「月宮殿」で第1回福島県文学賞を受けています。萩原朔太郎に師事して福島県詩人協会会長も務め、朔太郎は1938年(昭和13年)に忠一郎の妹の美津子と結婚しました。この蔵は朔太郎ゆかりの地としても知られています。
現在の蔵元は5代目の大谷浩男です。白河に生まれ、大学で経営学を学んだあと、東京の業務用酒類卸で営業を経験してから白河に戻りました。日本酒製造の学校に通い、地元の消防団や祭り、商工会議所青年部の活動にも加わり、平成22年度には福島県商工会議所青年部連合会の会長を務めました。震災では土蔵の壁が崩れ落ち、新型コロナウイルスの流行では飲食店向けの売上が大きく落ち込むという苦労も重ねています。
2007年には、若い蔵人たちとともに新銘柄の「登龍」を生み出しました。創業以来愛されてきた看板酒の「白陽」と並ぶ蔵の代表銘柄に育ち、「白陽」は「White Sun」、「登龍」は「Rising Dragon」として海外にも届けられています。2024年1月放送のテレビ番組では、海外での人気が高まり輸出の需要が増えていると伝えられました。
酒造りの特徴
蔵が掲げるのは、米・水・人のすべてを地元白河のものにこだわる酒造りです。米は地元の農家と密接な関係を築いており、ときには蔵の人が自ら田んぼに入って品質を確かめています。「登龍」に使うチヨニシキは、契約農家が栽培する地元産の米です。チヨニシキは地元で飯米としても使われる品種で、この米でここまで旨い酒ができるのかという挑戦から、登龍は生まれました。
仕込みに使う水は、創業時から敷地内の井戸に湧き続ける那須山系の伏流水です。鉄やマンガンを含まず、発酵を助けるミネラルを程よく含んだ軟水で、蔵はこの水だけを仕込みに使っています。喉ごしのよい、まろやかで芳醇な酒に仕上がる水です。
製造石数が80石程度の小さな蔵で、機械化の波に飲まれず、明治12年の創業時からの製法を守りながら新しい技術を取り入れています。「登龍」は麹歩合を5%ほど高めて濃厚な旨みを引き出し、同時にキレのある酒質を目指した酒で、絞った直後に瓶詰めして冷蔵する管理を徹底しています。杜氏の体制は変わってきました。2010年ごろは杜氏の高齢化を受け、蔵元自らが杜氏として指揮をとり、杜氏見習いだった大木兄弟が登龍の酒質の設計から全工程を手がけていました。その後は大木兄弟と先輩杜氏でもある大谷浩男の三人杜氏で造ってきました。
2010年当時の工程では、精米歩合の高い酒米はすぐに水を吸うため、吸水時間を秒単位で計っていました。蒸し米を甑から出す作業は、およそ800kgをスコップで一人ですくい出す重労働で、仕込みは4800リットル入るタンクに二人がかりで蒸し米を入れて行います。醪は布袋に入れて搾り、自然に垂れる透き通った酒は「荒走り」と呼ばれます。
代表銘柄
登龍
2007年に誕生した特別純米酒で、蔵でいちばん人気の銘柄です。名は、杜氏の大木兄弟の母校である白河高校に伝わる「登龍健児」に由来します。チヨニシキを精米歩合55%まで磨き、麹歩合を高めて、しっかりした腰のある旨みとすっきりした後味を両立させました。日本酒度は+4、アルコール度数は16度です。冷やしても、ぬる燗でもおいしく飲めます。
白陽
創業以来、地元で長く愛されてきた看板銘柄です。名は「白河の太陽のように光り輝く酒」に由来し、「陽」は中国語で街を表す字でもあります。純米吟醸はチヨニシキを精米歩合55%まで磨き、穏やかな吟醸香とコクのある中辛口に仕上げています。日本酒度は+1、アルコール度数は16度で、十分に熟成させているため口当たりがやわらかく、料理の味を損ないません。
見学・購入
- 直売所
- 旧奥州街道沿いの蔵の店舗で販売しています。JR白河駅から徒歩5分ほどで、営業は平日の日中、土・日・祝日は休みです。公式のオンラインショップは長期メンテナンス中のため、注文は蔵へ電話またはFAXで受け付けています。
- 補足
- 酒蔵見学は受け付けていない時期もあるため、希望する場合は事前に蔵へ問い合わせてください。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 福島県白河市本町54
- 創業
- 1879年
- 公式サイト
- www.hakuyou.co.jp
出典
japansake.or.jp / fukunosake.com / hakuyou.co.jp / kennan-syuhan.co.jp / tohoku-sakurakaido.jp / fuku-gohan.net / note.com / sakenomy.jp / nta.go.jp
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