太平桜酒造
代表銘柄:太平櫻
福島県
FUKUSHIMA
1725年創業
福島県いわき市に蔵を構える太平桜酒造合資会社は、1725年(享保10年)に湯長谷藩の命により酒造りを始めた歴史を持つ酒蔵です。代表銘柄である「太平櫻」の名は、新酒の出来上がった時期に庭にあった桜の古木を見て「太平の桜を愛でて酒を酌み」と先祖が詩を詠んだことに由来します。酒造りでは「地産地消」と「手造り」を重視しており、原料米には「夢の香」「五百万石」「天のつぶ」といった福島県産・いわき市産米を100%使用しています。
仕込み水には阿武隈山系を源とする鮫川水系の水を用い、「うつくしま夢酵母」などとともに醸したもろみを、佐瀬式の酒槽で時間をかけて丁寧に絞る全量槽搾りを行っています。醸造されたお酒の約9割は地元であるいわき市内で消費されており、代表は「日常に溶け込むような、ほっこりと呑める酒を目指しています」と語り、そうした酒造りを続けています。
太平桜酒造の歩み
太平桜酒造は、享保10年(1725年)に創業した、福島県いわき市の酒蔵です。蔵があるのは、寛文10年(1670年)から明治維新まで続いた湯長谷藩の城下です。湯長谷藩のおひざ元には酒屋がなく、酒を買うには藩外へ出なければなりませんでした。藩外で買えば藩の金が外へ流れてしまうため、藩の命で酒造りが始まったとされています。その酒は、藩の財源の一つにもなりました。
銘柄の「太平櫻」は、敷地にあった桜の古木に由来します。新酒ができた頃、その古木を見た先人が「太平の桜を愛でて酒を酌み」と詠んだことから名づけられました。蔵は黒塗りの板塀と瓦葺の門を構え、入口では杉玉が風に揺れています。蔵へ続く細く曲がりくねった道は城下町の名残で、黒板塀をまわした一帯には、時代劇さながらの風景が残っています。
法人としては昭和31年7月に設立され、現在は太平桜酒造合資会社として酒造りを続けています。代表を務める大平正志さんは9代目で、湯本温泉に近い常磐下湯長谷町の地で、300年に及ぶ歴史を受け継いでいます。大平さんは「引き継いできたことをやみくもに守っていったら時代に取り残される」と考え、お客さんの声を聞くことを何より大切にしています。物産展など、お客さんと直接触れ合える機会も重んじています。
平成23年(2011年)の東日本大震災では、いわき市が震度6弱の揺れに見舞われました。蔵ではタンクが傾き、その年度に仕込んだ酒の8割は商品化できなくなりました。瓶詰場の柱も傾き、道路沿いの漆喰も落ちましたが、蔵にとって一番の被害は断水が長く続いたことでした。水は温度管理にも使う仕込みの要で、水が絶たれれば仕込み中の酒を諦めなければなりません。仕込みの最盛期は冬であり、3月いっぱい休むことになれば、少量を丁寧に造る小さな蔵には深刻な問題でした。
震災の翌年の平成24年(2012年)には、風評被害を払拭する目的で、福島県産米を使った純米酒「絆」を造りました。原料の米は全袋が放射線検査を受けており、できあがった酒もあらためて検査したうえで出荷しています。平成26年(2014年)には、震災前の売り上げに戻すという最低ラインの目標を達成できそうな見通しを語っています。現在も、湯本温泉郷でフラを踊る「フラ女将」を掲げた「純米酒 絆 フラ女将ラベル」や、いわきに伝わるじゃんがら念仏踊りにちなんだ酒など、地元とのつながりを大切にした商品を造っています。
平成30年(2018年)からは、いわき市内の酒販店でつくる委員会が進める「いわきハタチ酒プロジェクト」にも協力しています。20代の若者が酒米の田植えや稲刈りから、蔵でのこうじ作り、仕込み、上槽までを体験する取り組みで、毎年続いています。
酒造りの特徴
太平桜酒造の酒造りの軸は、地産地消と手造りです。原料米は、福島県で開発された酒造好適米「夢の香」、「五百万石」、「天のつぶ」、本醸造に使う「チヨニシキ」など、全量が福島県産・いわき市産の米です。生産農家とも極力顔を合わせ、米のできを確かめています。仕込み水は、阿武隈山系に源を発する鮫川水系の水を使っています。
仕込みは12月から3月までの寒仕込みです。気温が低い冬は微生物が少なく、発酵の温度を管理しやすいためです。酵母は、福島県が開発した「うつくしま夢酵母」と「煌酵母」など、ふくしまの酵母を用います。仕込みは初添、中添、留添の三段仕込みで、温度が上がるときはタンクにジャケットを巻いて冷水を流し、温度を保ちます。蔵に入ると麹の甘い香りが満ち、タンクの中では白いもろみがプチプチと音を立てて発酵しています。
搾りは、佐瀬式の酒槽で、時間をかけてゆっくり丁寧に行います。佐瀬式は大吟醸のような繊細な酒を搾るのに向いた圧搾機で、全量を槽搾りで搾るのは、小さな蔵だからこそできるこだわりです。商品は大吟醸、純米大吟醸、純米吟醸、純米酒、本醸造、にごり酒と幅広く、「夢の香 純米原酒」や本醸造原酒といった原酒も造っています。生酒や活性酒といった季節商品もあり、時季によっては直営店でしか販売しない酒もあります。
酒粕を蒸留した「昔ながらの粕取焼酎」も少量だけ造っています。ある時、新潟のお客さんから「濾過しているのか」と問い合わせがありました。クレームかと身構えたところ、香りのきれいすぎる焼酎が増えて物足りないので、独特の香りのこの焼酎をずっと造り続けてほしいという声でした。造った酒の約9割は地元のいわき市内で飲まれており、鑑評会で評価されることよりも、地元の人にかわいがられる、ほっとする酒を目指しています。
代表銘柄
太平櫻
蔵の代表銘柄で、名は敷地の桜の古木に由来します。「太平櫻 大吟醸」は、高精白の福島県産五百万石を低温でじっくり仕込んだ、柔らかな味わいの吟醸酒です。「太平櫻 本醸造酒」は、県産チヨニシキを65%まで精米し、まろやかな辛口に仕上げました。「太平櫻 本醸造原酒」は、加水を一切しない濃醇な味わいです。大吟醸から本醸造まで揃い、代表が「日常に溶け込むような、ほっこりと呑める酒」を目指す蔵の看板銘柄です。
見学・購入
- 蔵見学
- なし
- 直売所
- 蔵から車で2分ほどの場所に直営店「タイヘイ酒店」があり、時季によって直営店でしか販売しない酒もあります。蔵での販売は行っていません。市内ではいわき・ら・ら・ミュウやいわき市石炭・化石館ほるるのミュージアムショップなど、一部の店舗でも購入できます。
- 補足
- 小さな蔵のため、酒蔵見学は原則としてお受けしていません。蔵のある常磐下湯長谷町は湯本温泉に近く、黒板塀の続く城下町の風情が残る一帯です。外から街並みを眺めて歩く楽しみ方があります。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 福島県いわき市常磐下湯長谷町町下92
- 創業
- 1725年
- 公式サイト
- www.sake-iwaki.com
出典
japansake.or.jp / sake-iwaki.com / kankou-iwaki.or.jp / fukunosake.com / kennan-syuhan.co.jp / iwakinoippin.com / tif.ne.jp / rainbow.nttdocomo.co.jp / iwaki-fc.jp
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