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芳村酒造

代表銘柄:千代の松・かぎろひ・阿騎野物語

奈良県

NARA

1868年創業

芳村酒造の建物
芳村酒造の建物(2021年撮影)「Yoshimura Brewery 2021-11 ac (2).jpg」 — 写真:Asturio Cantabrio / CC BY-SA 4.0縮小・WebP変換

奈良県宇陀市の大宇陀(重要伝統的建造物群保存地区)に蔵を構える酒蔵です。もとは油屋を営んでおり、明治のはじめに酒造免許を取得して酒造業を始めました(創業年は1868年とも1872年とも伝わります)。代表銘柄には「千代の松(千代乃松)」「稲戸屋」「かぎろひ」などがあります。

宇陀高原の伏流水と厳選した米を使用し、昔ながらの手法で酒造りを行っています。定番酒だけでなく、古代米(赤米)を用いた淡いピンク色の「阿騎野物語」、精米歩合95%で手間暇かけて仕込んだ酒、大神神社のササユリから採取された「山乃かみ酵母」や「奈良うるはし酵母」を使用した商品など、伝統的な製法を守りながら多様で個性的な日本酒を手掛けています。

芳村酒造の歩み

芳村酒造は、奈良県宇陀市大宇陀万六にある造り酒屋です。蔵があるのは、宇陀松山城の城下町として整い、江戸時代には織田家松山藩の城下、その後は商家町として栄えた宇陀松山の町並みで、この地区は2006年(平成18年)に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。城山と宇陀川の間に町家が南北に連なる商家町の一角にあり、酒蔵が並ぶ通りは酒蔵通りと呼ばれています。蔵の主屋は昭和16年(1941年)の建築で、格子や黒漆喰、前栽といった伝統的な意匠を備え、正面南側には二段のうだつが上がっています。

この二段のうだつは三代目当主の強い要望で設けられたもので、松山地区のほかの町家には見られない意匠です。敷地には主屋のほか、鉄筋コンクリート造の工場、蔵、離れがあります。

芳村家はもともとこの松山地区で油屋を営んでいました。2023年時点で社長と杜氏を兼ねる芳村隆博さんは、明治のはじめに酒造免許を取得してから数えて五代目にあたり、油屋の代から数えると十五代目で、草創は江戸の初め、松山藩が宇陀を治めていた頃にさかのぼります。酒造業の創業は明治のはじめで、年は1868年(明治元年)とも1872年(明治5年)とも伝わります。芳村さんは、油を主な生業としながらも、米がたくさん獲れたときには酒も造っていたのではないかと推測しています。

蔵の起こりは、織田家の城下町である大和の国宇陀で稲戸屋源三郎が酒造りを始めたことにあります。その名を冠した純米大吟醸「稲戸屋」は、現在も千代の松と並ぶ銘柄として造られています。

酒造りに対する蔵元の姿勢は一貫しています。芳村さんは2023年時点で、酒造りはもう趣味の域だと嬉しそうに語り、商売を考えず気楽に造ること、とくによそが造りそうにないものに積極的に取り組むことを語っています。変わったものを造っていると新たな変わったニーズが生まれ、遊ばせてくれる人がいるおかげで楽しく造れている、というのが芳村さんの実感です。

受賞では、大吟醸「竹葉春」が平成4年度の全国新酒鑑評会で金賞を受賞しました。ご当地との結びつきを示す仕事も多く、2016年には高山右近の列福を記念して、右近の生誕地である大阪府豊能町産のキヌヒカリを100%使い、洗礼の地である宇陀の水で醸した純米大吟醸「右近」(720ml)を造りました。2023年には、斑鳩町観光協会の依頼を受け、法隆寺が世界遺産登録から30年を迎えるのを機に、斑鳩町産の黒米と法隆寺のアヤメから採った酵母を使った限定酒「太子の黒駒」を醸しています。

奈良県酒造組合に加盟する27蔵のひとつで、主要銘柄は「千代の松」(千代乃松とも表記)です。

酒造りの特徴

仕込み水は宇陀高原の伏流水です。蔵のある宇陀は海抜330メートルに位置し、澄んだ大気と寒冷な気候が酒造りに恵まれた土地です。米は山田錦をはじめ良質の米を選んで使い、奈良県産米「露葉風」を用いた酒もあります。蔵の看板である「千代の松」は淡麗辛口の味わいで、フルーティーな香りが特徴の「かぎろひ」と並んで、蔵の骨格をなす銘柄です。

蔵の探究心を最もよく表すのが「神仏習合の酒」です。興福寺の僧が書き残した『多聞院日記』に記された、約500年前の僧坊酒の造り方を手がかりにした酒で、仕込みを8回に分ける「八段仕込み」で醸し、精米歩合は95%と、米をほとんど磨きません。現在は3回に分ける三段仕込みが主流ですが、『多聞院日記』が記録する約500年前は8回に分けていたと、芳村さんは語っています。芳村さんは、米が貴重だった時代にもったいないことはしなかったはずで、精米歩合95%は発酵に必要な最低限の削りだと考えています。

酵母には、大神神社のササユリから採取した「山乃かみ酵母」を使います。原料の宇陀産赤米は希少で、2023年時点では「RADEN」にだけ使っており、出荷されている「神仏習合の酒」は透明な酒です。

酵母の選び方にも特徴があります。「千代の松 特別純米 奈良うるはし」は、日本酒発祥の地とされる菩提山正暦寺で分離された「奈良うるはし酵母」と、奈良県産米「露葉風」を使った純米酒で、精米歩合は60%です。2022年時点では、イタリア米を使った「千代の松 イタリア」もラインアップにありました。2023年の「太子の黒駒」は、法隆寺のアヤメから採った「太子夢酵母」を使い、同じく八段仕込みで精米歩合95%に仕上げた甘口の酒です。酵母の発酵力が強くないことをあえて生かし、アルコール度数をやや低く、糖分を残す設計にしています。

ラインアップには、純米大吟醸の「竹葉春」と「稲戸屋」、赤米酒「阿騎野物語」、「山乃かみ酵母使用純米酒」のほか、赤米酒の赤、黒米酒の黒、純米の奈々露からなる「RADEN」シリーズが並びます。定番酒から古代米、古い文献の再現まで、幅の広い造りが芳村酒造の持ち味です。

代表銘柄

千代の松

蔵の主銘柄で、酒名は裏山にある松の老木の雄姿にちなむと伝わります。淡麗辛口の味わいが身上です。特別純米の「奈良うるはし」は、正暦寺で分離された奈良うるはし酵母と奈良県産米の露葉風で醸し、精米歩合60%、日本酒度は+4です。大吟醸の「竹葉春」は平成4年度の全国新酒鑑評会で金賞を受賞しました。

かぎろひ

蔵が古代万葉のロマンを託した銘柄です。きよらかで、さわやかで、まろやかな味と香りを目指して醸されています。50%に精白した酒造好適米で醸した純米大吟醸があり、フルーティーな香りと淡麗ですっきりした味わいが特徴です。蔵は冷やして楽しむことを勧めています。

阿騎野物語

古代米の赤米を使った赤米酒で、蔵は万葉のロマン香るピンク色の酒と案内しています。独特の淡い渋みを持つのが特徴です。味わいは、はじめに優しい米の甘みがあり、そのあと淡い渋みが来て、日本酒らしい辛みを経て、最後に甘みと香りの余韻が残ります。名の阿騎野は、宇陀に広がる古い野の名です。

稲戸屋

酒造りを始めたと伝わる稲戸屋源三郎と同じ名を持つ銘柄で、蔵は「千代の松」と並べて案内しています。純米大吟醸として造られ、720mlと1800mlの木箱入りが贈答向けの商品として販売されています。蔵の歴史を今に伝える名を冠した、芳村酒造ゆかりの一本です。

見学・購入

補足
蔵は宇陀松山の酒蔵通りにあり、二段のうだつが上がった町家の外観は町並み歩きの見どころになっています。蔵見学を希望する場合は、事前に蔵へ問い合わせてください。

見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。

蔵の基本情報

所在地
奈良県宇陀市大宇陀万六1797
創業
1868年
公式サイト
www.begin.or.jp

出典

the-kansai-guide.com / begin.or.jp / japansake.or.jp / uoman.jp / momofukuone.com / fc2.com / naraizumi.jp / sakenomy.jp / narawashi.jp / jr-central.co.jp / nara-np.co.jp / uda-matsuyama.com / pref.nara.lg.jp / city.uda.lg.jp / online.bunka.go.jp / kotobank.jp / yamato-umazake.com / sakeai.com / kondo-saketen.seesaa.net / nara.jr-central.co.jp / jp.sake-times.com

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