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矢澤酒造店

代表銘柄:南郷・白孔雀・月と虹

福島県

FUKUSHIMA

1833年創業

福島県東白川郡矢祭町に位置する1833年(天保4年)創業の酒蔵です。長く藤井酒造店の名で酒造りを続け、2016年12月に株式会社矢澤酒造店へ商号を変更しました。八溝山系を源流とする久慈川の伏流水を仕込み水に使用しています。代表銘柄の「南郷」などを醸しており、天保年間に建てられた蔵で微生物や蔵付き酵母の働きを活かした伝統的な製法を守り続けています。食事を引き立てる食中酒を目指し、香りは穏やかに米本来の旨味やふくよかさを表現した酒造りが特徴です。

受賞歴としては、「大吟醸酒 月と虹(Moonbow)」が令和4年福島県秋季鑑評会で金賞、IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)2022でブロンズ賞を受賞しています。2023年4月には少量仕込みが可能な新蔵「可染蔵」が竣工し、試飲ができる酒蔵カフェ・ショップも併設されました。

矢澤酒造店の歩み

創業は天保4年(1833年)です。蔵は現在の福島県東白川郡矢祭町戸塚にあり、福島県の最南端、茨城県との県境に近い場所です。看板銘柄の「南郷(なんごう)」は、南北朝時代にこの地方が南郷と呼ばれていたことに由来します。水戸と郡山を結んだ旧茨城街道沿いの奥州最南端にあたり、気候が温暖で人情こまやかな山辺の里であることから「みなみのさと」と読み、なんごうと名付けられました。矢祭町で唯一の酒蔵として、200年近い歴史を重ねています。

2016年12月に商号を株式会社矢澤酒造店に改めるまで、蔵は藤井酒造店の名で「南郷」を造っていました。酒造りは天保年間に建てられた蔵で行われ、8代目当主の藤井健一郎さんは、パッと広がってスッと消える花火のような酒を目指していました。仕込み水は藤井さんが自ら掘り当てた水でした。蔵の旧サイトでは、平成3年の全国新酒鑑評会での金賞と、昭和60年から平成6年まで10回連続の東北清酒鑑評会金賞が、藤井酒造店時代の受賞歴として掲げられていました。平成16酒造年度の全国新酒鑑評会では、藤井酒造店の「南郷」が入賞しています。

2014年には、東京都葛飾区の市民サークル「葛飾酒作り本舗」の会員が地元の農家や酒蔵の協力を得て携わった特別純米酒「葛飾の花」を、この蔵で醸しました。

転機は2016年です。東京都出身で、国土交通省に10年勤めたのち醸造機器メーカーへ移っていた矢澤真裕さんが、東京の小料理屋で出会った「南郷」の純米酒に魅了されました。女将の紹介で蔵元の義弟と知り合い、同年5月に藤井さんと対面します。蔵を引き継ぐ人を探していた藤井さんから話を持ちかけられ、「南郷」に出会ってからわずか8か月で、同年12月に藤井酒造店は株式会社矢澤酒造店へ商号を変更し、経営も藤井さんから矢澤さんへ移りました。矢澤さんは43歳で9代目当主となり、藤井さんは取締役顧問として関わることになりました。

造りと味は変えないという方針で引き継がれました。

2023年4月には、内藤廣さんの設計による新蔵が完成しました。蔵の名は「可染蔵」で、「可染」は白を意味し、ここからどんな色にも染まれるという願いが込められています。地元の杉を使った木造の細長い建物で、少量の仕込みができる酒蔵と、試飲のできるカフェ・ショップからなります。江戸時代から各時代の人々が蔵を建ててきたなら、令和の蔵を建てようという考えから、100年、200年と続く蔵を目指して建てられました。

矢澤さんの代になってからは、国内外の品評会で受賞を重ねています。インターナショナル・サケ・チャレンジ(ISC)では、第15回(2021年)に「純米大吟醸 白孔雀 BY2020」が純米大吟醸部門のトロフィー賞(最優秀賞)に選ばれ、第16回から第18回まで毎回受賞しています。Kura Master 2026では、純米大吟醸酒(36-50%)部門で白孔雀 BY2025が金賞です。

蔵の発表では、IWCで2022年に大吟醸部門のブロンズ賞(月と虹)、2025年と2026年に純米大吟醸部門の大会推奨賞(白孔雀)、2026年に大吟醸部門のシルバー賞(月と虹 BY2025)を受けています。福島県の鑑評会では金賞を3回、南部杜氏自醸清酒鑑評会では第101回から第104回まで4回続けて優等賞に選ばれ、第104回は新蔵で醸した第一号酒の白孔雀(BY2022)での受賞です。

酒造りの特徴

目指す酒質は、日本酒の原料である米本来の旨味と甘み、ふくよかさを引き出した、食事に寄り添う酒です。香りは穏やかに、味は米の旨味を表現し、そこにキレを合わせます。旨味が強いのに飲み飽きないことが「南郷」の持ち味で、食べ物の旨味を引き上げ、食べ物からも酒がおいしくなる食中酒を理想としています。仕込み水は八溝山に源を発する久慈川の伏流水で、原料米には厳選した米を使います。酒造りの基本として、特に麹づくりに重点を置いています。

旧サイトの2016年当時の紹介では、人手が必要と思われる工程はあえて機械化せず、丁寧に造ることを心がけていると述べていました。

道具や工程にも、それぞれ理由があるという考えです。米は強い蒸気で蒸し上げる和釜の甑(こしき)で蒸し、タンクの醪は杉製の櫂棒で混ぜます。いずれも麹や酵母といった微生物にやさしい道具で、天保年間の蔵に息づく蔵付き酵母とともに、伝統製法の味わいを支えています。季節の習わしも大切にしていて、ひやおろしは毎年10月にならないと瓶詰めしません。外気が蔵の温度と同じくらいになるまで寝かせないと、酒はおいしくならないという理由です。「南郷 大吟醸」では、麹蓋を使った伝統的な麹づくりを行っています。

原料米は商品によって使い分けています。大吟醸や純米大吟醸(白孔雀、月と虹)には兵庫県産の山田錦を精米歩合40%まで磨いて使い、麹米だけでなく掛米にも全量を用いるものがあります。吟醸酒や純米吟醸酒は北海道産の吟風を精米歩合55%で、本醸造酒と普通酒は福島県産のちよにしきを使います。純米酒は美山錦または五百万石を精米歩合60%で磨き、無濾過生原酒の「銀箭」や生酒の「新玉の酒」には福島県産の美山錦を使います。普通酒は糖類を添加していません。ラインナップは、純米大吟醸から普通酒、季節の生酒、ひやおろしまでそろえています。

2023年に完成した新蔵「可染蔵」では、小さな仕込みができます。樽ごとの少量のオーダーメードにも対応でき、複数の特徴ある原酒を繊細に均衡させたブレンデッド日本酒「Giudice(ジウディーチェ)」も手がけています。「Giudice #1」は蔵初のブレンデッド日本酒で、第二弾の「Giudice #2」は凛とした吟醸香、透明感のある甘さ、隠し味のような酸味が重なる一本です。「南郷」の造りと味は守りながら、新蔵で新しい酒にも挑んでいます。2023年の新蔵完成後の時点で、杜氏は南部杜氏の小松孝行さんです。

矢澤さんは、造りの期間が終わると全国を回り、「南郷」の味と魅力を伝えています。

代表銘柄

南郷

蔵の看板銘柄で、旨味とキレの両立が持ち味です。純米酒は美山錦または五百万石を精米歩合60%まで磨き、米の旨味をしっかり引き出しながら飲み疲れしないよう仕上げた食中酒です。吟醸のつう、純米吟醸のうらら、山田錦40%の大吟醸、本醸造、糖類無添加の普通酒、冬のしぼりたて新玉の酒、10月に瓶詰めするひやおろしなど、一年を通じた品ぞろえです。先代が目指した花火のような味わいを受け継いでいます。

白孔雀

矢澤酒造店を代表する純米大吟醸です。兵庫県産山田錦を精米歩合40%まで磨き、吟醸香と米本来の旨味をバランスよく楽しめる酒で、正月や祝いの席の乾杯酒に向きます。ISCの純米大吟醸部門ではBY2020がトロフィー賞、BY2022がシルバー賞、BY2023がゴールド賞でした。蔵の発表では、福島県春季鑑評会で令和3年と6年に金賞、南部杜氏自醸清酒鑑評会で第102回と第104回に優等賞、SAKE COMPETITION 2018のラベル部門でGOLD賞を受けています。

月と虹

兵庫県産山田錦を精米歩合40%まで磨いた大吟醸酒で、英語名はMoonbowです。吟醸造りの特徴である華やかな香りをピュアに楽しめるように設計され、フルーティな香りで日本酒初心者にも親しみやすい一本です。ISC第16回の大吟醸部門でブロンズ賞(BY2021)を受けました。蔵の発表では、福島県秋季鑑評会(令和4年)の吟醸酒の部で金賞、南部杜氏自醸清酒鑑評会の吟醸酒の部で第101回と第103回に優等賞を受けています。

銀箭

福島県産美山錦を精米歩合60%で仕込んだ特別純米酒の無濾過生原酒です。醸造の過程で自然に生まれるほんのり淡い炭酸を、そのまま封じ込めました。銀の矢のようにきらきらと真っすぐ細く降る夏の雨の爽やかさと、淡い炭酸が響き合う酒です。アルコール度数は18度で、きりりと冷やして楽しめるほか、オンザロックにも向きます。日本酒度は+3.0です。

見学・購入

直売所
新蔵に併設された酒蔵カフェ・ショップで、日本酒を試飲できます。
補足
福島県の酒蔵紹介では、蔵見学は要予約(10名以内・無料)です。蔵は福島県東白川郡矢祭町戸塚にあり、最寄りはJR水郡線の南石井駅です。

見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。

蔵の基本情報

所在地
福島県東白川郡矢祭町戸塚41
創業
1833年
公式サイト
www.yazawashuzo.co.jp

出典

japansake.or.jp / yazawashuzo.co.jp / fukunosake.com / sakenomy.jp / fukushima-pride.com / shop.yazawashuzo.co.jp / jp.sake-times.com / f-sake.com / bunganet.tokyo / fukushima-tv.co.jp / tohoku-sakurakaido.jp / kuramaster.com / sakechallenge.com / nrib.go.jp / web.archive.org / value-press.com

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