農口尚彦研究所
代表銘柄:農口尚彦研究所
石川県
ISHIKAWA
2017年創業
「農口尚彦研究所」は、「酒造りの神様」と称される名杜氏・農口尚彦氏の技術や精神、酒造りの技を次世代に継承・研究することを目的として、2017年に石川県小松市観音下町に開設された酒蔵です。
農口氏は能登杜氏四天王のひとりに挙げられ、日本酒市場における「吟醸酒」普及の火付け役となったほか、途絶えかけていた伝統技術「山廃仕込み」を復権させた立役者としても知られます。
同研究所は、70年以上にわたり酒造りに携わってきた農口氏の集大成の場であり、若い蔵人たちへ匠の技を伝える研究拠点となっています。また、蔵内には醸造室を見渡せる事前予約制のテイスティングルーム「杜庵(とうあん)」などが併設されており、酒造りの風景や食事とのペアリングとともに日本酒を楽しめる体験空間を提供しています。
なお、前身は石川県宝達志水町の見砂酒造(銘柄「朱鷺の里」)で、2016年に親会社の盛田が株式を譲渡し、2017年に商号を農口尚彦研究所へ改め、小松市へ本店を移しました。
農口尚彦研究所の歩み
農口尚彦研究所は、2017年11月に石川県小松市観音下町で開業した酒蔵です。杜氏・農口尚彦氏の酒造りの技術と精神を次世代に受け継ぐことを目的とし、その精神と腕に惚れ込んだ蔵元が「農口尚彦の生き様を未来に残したい」と立ち上げました。蔵は農口氏自らが働きやすさを考えて図面を描いたもので、水質を確かめて選んだ土地に建てられています。ロゴマークは農口氏の頭文字である「の」の字を、利き酒のお猪口に描かれる蛇の目に見立てたデザインです。
どの部屋からも醸造室を見ることができ、杜氏の酒造りの歴史やこだわりを体感できるギャラリーと、金沢の大樋長左衛門氏のアートディレクションで茶の湯文化を表現したテイスティングルーム「杜庵」を備えています。
農口尚彦氏は1932年、現在の能登町にあたる地に杜氏の家の子として生まれ、16歳で酒造りの道に入りました。静岡県や三重県の蔵で修業を積んだのち石川県で杜氏となり、能登杜氏四天王の一人に数えられます。杜氏としての最初の年に、東海地方で学んだ淡麗な酒が地元の人に受け入れられなかった経験から、味の濃い酒を求める人々のために京都へ通い、3年がかりで山廃仕込みを習得しました。失われかけていた山廃仕込みを復活させた立役者であり、大吟醸酒をいち早く市場に紹介して吟醸酒ブームの火付け役にもなりました。
全国新酒鑑評会では、菊姫や鹿野酒造、農口酒造での杜氏時代を通じて、連続12回を含む通算27回の金賞を受けています。
いったん引退した農口氏は、2017年に研究所の杜氏として復帰しました。2006年に現代の名工に選ばれ、2008年には黄綬褒章を受章しています。令和5年度には文化庁長官表彰を受け、2023年12月に県が創設した「いしかわの食の巨匠」顕彰制度でも認定されました。2026年7月31日には、石川県教育委員会が「日本酒杜氏」を県の無形文化財に指定し、農口氏はその最初の保持者に認定されました。研究所がクラウドファンディングで支援を募った取り組みは、ふるさと名品オブ・ザ・イヤーのクラウドファンディング部門賞を受けています。
2024年1月の能登半島地震では、小松の蔵に大きな被害はありませんでした。一方、能登から来ている蔵人や縁のある従業員が多く、農口氏の自宅がある能登町も甚大な被害を受けたため、蔵は売上の一部を能登町への義捐金として送ることを決めました。
この蔵の前身は、現在の宝達志水町にあった見砂酒造です。大正末期に北谷保二が村長を務めながら、集落の名を冠した見砂酒造合資会社を設立したのが始まりで、近くにいた能登杜氏と、宝達山系の美しい水に恵まれたことが酒造りを支えました。合併した前身の蔵の系譜をたどると、江戸時代末期の慶応年間(1865〜68年)の創業とされるものもあります。昭和37年に4社が合同で見砂酒造株式会社となり、その後さらに2社が加わって6社が合併した蔵になりました。
蔵の敷地に連なる眉丈台地がかつて幻の鳥トキの棲息地だったことから、本醸造「朱鷺の里」を発売しました。精米歩合40%で仕込んだ淡麗辛口の大吟醸酒「酔匠」や、純米大吟醸酒、純米酒も造られ、原料米は山田錦と五百万石でした。
見砂酒造は全国新酒鑑評会で、平成9酒造年度と平成12酒造年度に金賞を受け、平成15酒造年度から平成17酒造年度までは3年続けて金賞を受賞しました。平成18酒造年度も入賞しています。平成15酒造年度以降の出品商標はいずれも「朱鷺の里」で、平成14酒造年度以降に限ると、入賞は4回、うち金賞は3回です。平成28年(2016年)8月25日に親会社の盛田が全株式を譲渡しました。譲渡されたのは平成20年(2008年)設立の見砂酒造株式会社で、地元有力者の支援を得て社業を進めたいという同社の申し出を受けたものでした。
平成29年(2017年)4月に商号を改め、6月に現在の商号である株式会社農口尚彦研究所となり、11月に本店を宝達志水町から小松市観音下町へ移しています。この蔵の歩みは、この再編を経て農口尚彦研究所へ引き継がれました。
酒造りの特徴
蔵のある観音下町は、観音山のふもとに田んぼと山が広がる山里です。仕込み水は霊峰・白山の伏流水で、その水と澄んだ空気に魅せられた農口氏がこの地に蔵を建てました。造りの期間は、2021年ヴィンテージの例で約5か月です。杜氏は造りが終わるまで蔵人たちと蔵で共に生活します。農口氏が長年書き記してきた数値データの上に最新技術によるデータを重ね、米・酵母・水・気候の変化に向き合いながら、多岐にわたる工程を丁寧に進めます。
山廃仕込みは酒母造りの手法の一つで、生酛系に属します。速醸に比べて手間も時間もかかり、腐造のリスクも高いのですが、力強い味わいに仕上がります。研究所では2017年ヴィンテージから2021年ヴィンテージまでの5期で山廃の割合を徐々に増やし、2021年ヴィンテージでは山廃が半数を超えました。米をよく磨いて精白度を高めること、山廃仕込み、無濾過生原酒、使用する酵母は、いずれも熟成に向く要素です。そのため酒のほとんどが熟成酒で、瓶に記された西暦は発売年ではなく米の収穫年です。
直近の収穫米で造った酒として売られるのは、「PREMIUM NOUVEAU」や「春のしぼりたて」などの季節酒だけです。2025年春には、蔵と向かい合う位置に新しい貯蔵庫が完成しました。
2024年ヴィンテージの本醸造は石川県産の五百万石を精米歩合60%で、純米酒は酒蔵近郊の農家が栽培した小松市産の五百万石を精米歩合60%で仕込んでいます。100mlの飲み比べセットに入る酒は、山廃五百万石が精米歩合65%、山廃雄町・山廃愛山・山廃美山錦が55%、純米大吟醸の山田錦が50%です。山廃純米大吟醸は兵庫県産の山田錦を50%まで磨いています。ほかに、蔵の所在地の名から付けた五百万石の「観音下」があり、季節酒として春のしぼりたて、夏の生酒、ひやおろし、冬酒を出しています。
日本酒から派生して、焼酎も造っています。酒粕焼酎は毎年発売され、米焼酎は日本酒と同じ手法で仕込んだ純米吟醸酒を減圧蒸留したものです。2023年ヴィンテージの米焼酎は、掛米に小松市産の蛍米を使い、使用米の内訳は蛍米78%、石川県産五百万石22%です。また、令和6年能登半島地震の復興支援として、熟成庫に保管してきた山廃のヴィンテージ原酒から9種類を選んで調合したブレンド酒「夢造」を、サントリー名誉チーフブレンダーの輿水精一氏と造り、売上の一部を義援金にしています。
代表銘柄
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農口尚彦研究所
「農口尚彦研究所」は、杜氏・農口尚彦氏が小松市の蔵で醸す酒のブランドです。無濾過の生原酒や原酒を多く手がけ、2024年ヴィンテージの本醸造と純米酒は五百万石を精米歩合60%で仕込んでいます。山廃シリーズや純米大吟醸の山田錦も揃い、熟成に向く造りで、瓶に記された西暦は米の収穫年です。地名から名付けた「観音下」や焼酎も展開しています。
楽天で商品を見る見学・購入
- 蔵見学
- なし
- 直売所
- 蔵のエントランスで販売しています(10時から16時、お正月とお盆は休み、キャッシュレス決済のみ)。金沢駅直結の直営店「SAKE食堂 by 農口尚彦研究所」でも購入でき、グラス1杯から立ち飲みもできます。
- 補足
- 一般の蔵見学は受け付けていません。代わりに、予約制の有料テイスティングコースがあり、茶室を思わせるテイスティングルーム「杜庵」で飲み比べができ、ガラス張りのギャラリーから酒造りの現場を見学できます。蔵へ向かう公共交通機関はなく、車かタクシーでの来訪になります。「Sake」と「Gastronomy」を組み合わせた食のイベントも杜庵で開かれています。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 石川県小松市観音下町ワ1番地1
- 創業
- 2017年
出典
onestory-media.jp / noguchi-naohiko.co.jp / sakenomy.jp / imadeya.co.jp / komatsuguide.jp / mlit.go.jp / precious.jp / ho-shi.co.jp / store.noguchi-naohiko.co.jp / nihonmono.jp / tanoshiiosake.jp / discoverjapan-web.com / saketime.jp / kotobank.jp / nrib.go.jp / jstage.jst.go.jp / houjin-bangou.nta.go.jp / moritakk.com
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