馬上酒造場
代表銘柄:馽・馴・大号令
広島県
HIROSHIMA
1893年創業
広島県安芸郡熊野町に蔵を構える1893年(明治26年)創業の蔵元です。熊野町唯一の地酒蔵として代表銘柄「大号令」などを手掛けてきましたが、高齢化や後継者不在等による廃業の危機を経て、新たな杜氏(村上和哉氏)を迎え法人化して再スタートを切りました。旧来の設備を活かした小規模な手造りを基本とし、和釜や木甑(きこしき)を用いた蒸米、自然放冷、麹蓋や箱麹による麹造り、槽搾り(ふねしぼり)といった伝統的な道具と製法を徹底して守っています。
純米酒を中心に丁寧な醸造を行う一方、生酛造りや菩提酛といった伝承手法、北海道産酒米を用いた仕込みなど意欲的な挑戦も展開しています。「大号令」のほか、「馴(ならし)」や「馽(ほだし)」などの銘柄を醸造しています。なお、信頼できる情報源において主要な受賞歴の記録は確認できませんでした。
馬上酒造場の歩み
「馬上酒造」は1893年(明治26年)、広島県熊野町で創業しました。醸造した清酒はほとんどが熊野町内で飲まれ、他の地域に出回ることが少なかったことから、「幻の酒」とも呼ばれてきました。安芸津杜氏が腕を振るい、最盛期には年間900石ほどを醸造していました。
1983年、4代目蔵元の馬上日出男氏が銀行員を34歳で退職し、家業を継ぎました。その後は生産量が徐々に減少し、1995年に杜氏が亡くなってからは、日出男氏自身が杜氏を兼ね、夫人とともに年間30石ほどの小規模な酒造りを続けてきました。
2020年、日出男氏が70歳を超えて体力への不安を抱えたことと、新型コロナウイルスの流行が重なり、蔵をたたむことも考えられていました。そうした中、広島市出身で当時36歳だった村上和哉氏が酒造りへの熱意を胸に蔵を訪れました。村上氏は竹原市の竹鶴酒造で10年、滋賀県の北島酒造で4年にわたって修業を積んだ人物で、日出男氏は将来を案じて一度は断ったものの、諦めない村上氏の熱意にほだされ、新たな杜氏として迎え入れました。
コロナ禍で酒造りを見合わせた翌年にあたる2021年、村上氏を新杜氏として醸造を再開し、2022年には法人化して株式会社馬上酒造として新たなスタートを切りました。2023年には創業130年を迎え、熊野町で唯一の酒蔵として歴史を紡ぎ続けています。
こうした取り組みは評価にもつながっており、2025年度のKura Masterでは、代表銘柄「大号令 無添加生酛八反錦 真吟磨き」がクラシック酛部門で金賞を受賞しています。
酒造りの特徴
村上杜氏の酒造りは、伝統的な道具を用いた手仕事を軸としています。米を蒸す工程では、今では希少となった和釜と木製の甑(こしき)を使用し、蒸し上がった米は機械を使わず自然に冷ましています。麹造りには蓋麹や箱麹といった昔ながらの道具を用い、上槽の工程には槽(ふね)を使う槽搾りを守り続けています。手間のかかる工程ではありますが、環境を整えることでお酒の発酵という自然な営みを促しています。
衛生面や安全面については現代的な工夫も取り入れています。暗い蔵内では汚れが見えにくく危険も伴うことから照明の数を増やし、老朽化していた洗米機も衛生上の理由から新調しました。熊野町は冬になると外気温が氷点下10度にまで下がることもある寒冷な土地で、「酵母は硬派に、味はライトに」という方針で酒を設計し、切れ味のある酒質に仕上げています。
代表銘柄「大号令」は八反錦や雄町、山田錦、千本錦といった米を使い分けながら、速醸酛や生酛によって醸されています。室町時代に由来するとされる酒母「菩提酛」による仕込みにも取り組み、「菩提酛純米生」として世に送り出すなど、古い製法から学ぶ姿勢も大切にしています。北海道の企業との連携により、北海道産の酒造好適米「吟風」や「きたしずく」を用いた酒も手がけてきました。
ラベルには、蔵の名前にちなんで馬が向き合う馬上杯のデザインが用いられています。近年は、筆の産地として知られる熊野町の地域プロジェクトを通じて広島市立大学の学生と共同でラベルを制作するなど、地域とのつながりを生かした取り組みにも力を入れています。
代表銘柄
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馽
「馽」は馬の脚をつなぎとめる意味を持つ「ほだし」と読む珍しい一字の銘柄で、蔵の名前「馬上」にちなみ馬に関わる漢字が用いられています。北海道産の酒造好適米「きたしずく」を使った純米無濾過生原酒として、720ミリリットルと1800ミリリットルの瓶で醸造されてきました。同じ発想で名づけられた「馴」と並ぶ、蔵の新たな挑戦を象徴する銘柄です。
馴
「馴」は「ならし」と読み、馬を手なずける意味を持つ漢字を用いた、蔵の名前「馬上」にちなんだ銘柄です。北海道産の酒造好適米「吟風」を精米歩合50%まで磨いて醸した純米無濾過生原酒で、酵母にはきょうかい6号を用い、アルコール度数は16〜17%、日本酒度は+8に仕上げられていました。720ミリリットルと1800ミリリットルの瓶で提供されてきました。
大号令
「大号令」は、明治維新の際に発せられた「王政復古の大号令」にちなんで名づけられた代表銘柄です。創業当初からの銘柄「嵩之露」に対し、後年になって新たに生み出されました。八反錦や雄町、山田錦、千本錦など複数の酒米を使い分けながら、速醸酛や生酛、菩提酛による仕込みまで幅広く手がけています。中でも「純米無濾過原酒 雄町60」は、自家製の麹と米、水だけを用いて低温でじっくりと仕込まれ、ふくよかな米の旨みとやさしい甘みを感じさせる一本です。
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- 直売所
- 蔵での直接購入が可能で、営業時間は9時から18時までです。
- 補足
- ファックスでの注文にも対応しているほか、公式サイトのオンラインショップでも購入できます。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 広島県安芸郡熊野町城之堀2-5-16
- 創業
- 1893年
出典
sake-times.com / note.jp / japansake.or.jp / sakenomy.jp / sakeworld.jp / sakedata.jp / sake-hiroshima.com / hirosake.or.jp / yamatoya-e.com / hatenablog.com / kuramaster.com / chugoku-np.co.jp / kumano-town.note.jp / diamond.jp / saketime.jp / web.archive.org / nta.go.jp
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