井上清吉商店
代表銘柄:澤姫
栃木県
TOCHIGI
1868年創業
創業は明治元年(1868年)。旧奥州街道の宿場町であり、豊かな水資源と水車が巡る街として知られる栃木県宇都宮市白沢町(白澤宿)に拠点を置く酒蔵です。銘柄名「澤姫」は地名の「白澤」と、愛される象徴としての「姫」に由来します。
「真・地酒宣言」を製造コンセプトに掲げ、普通酒から大吟醸酒に至るまで全製品の原料米に地元・栃木県産米を100%使用しています。地元栃木の厳選素材と下野杜氏の技術を結集し、料理とともに楽しむ飲み飽きしない「後味の軽さがある食中酒」を追求しています。
世界最大規模の酒類コンテスト「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)」のSAKE部門においては、2010年(大吟醸)と2022年(吟醸酒)の2度にわたり最高賞である「チャンピオン・サケ」を獲得するなど、栃木の地酒の品質の高さを国内外に示し、高く評価されています。2026年には、二度の最高賞を得た酒蔵として「IWC SAKE HALL OF FAME」に認定されました。
井上清吉商店の歩み
井上清吉商店は、明治元年(1868年)に創業した酒蔵です。明治維新の戦禍で、宇都宮の中心部で代々営んでいた雑貨商「井桁屋」が全焼し、疎開先の屋板町で初代の井上忠七郎が酒造業を始めたのが出発点でした。2年後の1870年には、現在の宇都宮市白沢町にあたる河内郡白沢村へ醸造場を移しています。その後も、1908年に火災で醸造場が全焼し、河内郡絹島村(現在の宇都宮市上河内地区)へ一時移転するなど、苦難を越えてきました。
1909年には法人化に伴って「古里酒造株式会社」を設立し、1911年に古里村(現在の宇都宮市白沢町)の酒造場へ復帰しています。「株式会社 井上清吉商店」の社名になったのは1947年です。
蔵のある白沢町は、奥州街道を宇都宮宿から北へ向かって最初の宿場町として栄えた白澤宿の地です。今も街中には水路が巡り、水車が廻る水の豊かな町並みが残り、宇都宮市の景観形成重点地区に指定されています。銘柄の「澤姫」は、地元の地名である白澤から「澤」の字を取り、愛されるものの象徴として「姫」の字を合わせた名前です。
転機は2004年でした。五代目蔵元の井上裕史さんは、東京農業大学で醸造を学び、1997年秋に蔵へ戻って南部杜氏のもとで修業を積みました。1999年の仕込みからは杜氏代行を務め、翌2000年春の栃木県酒造組合の吟醸酒出品酒研究会では、自ら仕込んだ酒が第一位の評価を受けています。そして2004年、普通酒から大吟醸までの全製品の原料米を栃木県産米100%に切り替え、すべてのラベルに「真・地酒宣言」と掲げました。兵庫県産の山田錦などを使わず、地元の米だけで勝負するという選択でした。
2013年に代表取締役に就くと、杜氏の座は佐藤全さんに譲っています。
その成果は、まず全国新酒鑑評会に表れました。栃木県産「ひとごこち」で醸した大吟醸が2007年の鑑評会で金賞を受賞し、2008年も金賞に続きました。2005年から2025年までの開催年では19回入賞し、そのうち金賞は2007年、2008年、2011年、2013年、2015年、2018年、2019年、2022年、2023年、2024年、2025年の11回です。入賞は2005年、2006年、2009年、2010年、2012年、2017年、2020年、2021年です。
2020年は感染症の影響で審査が中断され、金賞酒の選定が行われませんでした。さかのぼると1993年、1994年、1999年、2001年、2002年にも金賞を受けており、通算で金賞16回となります。2019年には、県オリジナル米「夢ささら」が実用化され、初年度から100%使った「澤姫 純米大吟醸 真・地酒宣言」も金賞を受けました。関東信越国税局酒類鑑評会では、2007年の第78回で常温審査の部の受賞場名簿に名を連ね、2009年の第80回では吟醸酒の部で優秀賞を受けました。
以降は、2010年の第81回と2012年の第83回、2014年の第85回が純米酒の部、2013年の第84回が吟醸酒の部と純米酒の部、2017年の第88回が純米吟醸酒の部、2018年の第89回が吟醸酒の部と純米吟醸酒の部で、いずれも優秀賞です。2020年の第91回から2025年の第96回までは6年連続で優秀賞に選ばれ、2020年から2023年と2025年は純米吟醸酒の部、2024年の第95回は吟醸酒の部と純米酒の部での受賞です。
世界の舞台では、IWCのSAKE部門に2009年から挑み続けています。2010年には「澤姫 大吟醸 真・地酒宣言」がゴールド、トロフィーを経て最高賞のチャンピオン・サケに選ばれました。2022年には、出品1,732点の頂点に「澤姫 吟醸酒 真・地酒宣言」が立ち、12年ぶり2度目のチャンピオン・サケとなりました。ゴールドメダルは、2011年に大吟醸、2017年に下野純米大吟醸、2019年に純米吟醸プレミアム、2020年に純米大吟醸、2024年と2025年に特別純米プレミアム、2026年に大吟醸でも受賞しています。
この歩みが評価され、SAKE部門創設20周年の2026年には、二度の最高賞を得た酒蔵として「IWC SAKE HALL OF FAME」に認定されました。
酒造りの特徴
原料米は、普通酒から鑑評会出品酒まですべて栃木県産米です。酒造好適米の「ひとごこち」「五百万石」に加え、県のオリジナル品種である「夢ささら」「とちぎ酒14」も使います。たとえば大吟醸はひとごこちを40%まで磨き、純米大吟醸のプラチナラベルは夢ささらの40%精米です。
酵母も、ほぼすべての製品に栃木県で開発された清酒酵母を使い、バナナやメロンを思わせる香りの「T-ND」、軽快な辛口に向く「T-S」、完熟リンゴや洋梨のような香りの「T-F」、香りと味わいのバランスがよい「T-1」を、狙う酒質に応じて使い分けたり組み合わせたりします。
洗米は10kgずつに小分けし、米の温度と水温を測り、ストップウォッチで吸水を管理します。ジェット気泡で洗うMJP洗米機を導入し、人による吸水の差を抑えています。蒸しには昔ながらの鉄製の和釜を使い、毎年の酒造りのあとに吊り上げて手入れをします。目指すのは表面が硬く内側が柔らかい「外硬内軟」の蒸米で、その日の蒸し量や米質に合わせて大小2つの甑を使い分けます。放冷は、昭和41年製の旧型放冷機では蒸米のロスや洗浄・消毒の手間が大きいため機械を使わず、冬の冷たい空気の中で清潔な布に蒸米を広げて冷まします。
気温の高い日は、布を敷いた台に広げた蒸米を数段重ねて、約5℃の冷蔵庫へ運んで冷まします。麹造りでは、男体おろしなど栃木の乾いた冬の風土を生かします。麹室の床室は湿度が10%を下回ることもあるほど乾燥させることができ、蒸米の表面を3時間ほど乾かしてから種麹を振ります。種切りは「鼓打ち」という独自の手法で行い、菌糸が米の内部に食い込む「突きハゼ型」の麹を約3日かけて仕上げます。出麹のあともさらに乾燥させ、もろみの中で硬く沈んでゆっくり糖を供給する麹にします。
酒母は、多くの酒で速醸酒母を用い、仕込みから約13日で完成させます。水、麹、蒸米を手でやさしく混ぜる「手酛」を大切にし、「櫂で溶かすな、麹で溶かせ」という言葉を守っています。昔ながらの生酛と山廃にも取り組み、生酛系酒母は約30日と速醸の倍以上かかります。生酛では今も櫂を使って山卸を行っています。醪は三段仕込みで、最初の添は専用の小さなタンクで仕込み、翌日の踊りで酵母をしっかり増やします。発酵中は分析値に加え、泡の様子や音、香りも見守り、これまでの醪のデータをもとに追水の量を計算して、狙ったアルコール分に仕上げます。
搾りは、ほとんどの酒を佐瀬式の横型圧搾機で行います。圧搾機は蔵の奥の冷蔵庫の中に置かれ、低温の環境で約1日のうちに搾り終えます。大吟醸や純米大吟醸など一部の酒では、無加圧で滴る雫だけを集める吊るし搾りも行いますが、雫の回収は3時間以内に区切ります。火入れをする酒は65〜70℃まで加熱し、香りの華やかさを守りたい酒は生酒の状態で瓶詰めしてから瓶燗火入れをして急冷します。生酒は搾ったあと、できるだけ早く瓶詰めして冷蔵庫へ移します。生酛純米、山廃純米、純米ゴールドなどは、大谷石でできた石蔵で時間をかけて熟成させます。
石蔵の中は夏でも20℃ほどに保たれます。酒造りを率いる杜氏は、下野杜氏でもあり南部杜氏でもある一級酒造技能士の佐藤全さんです。
代表銘柄
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澤姫
「真・地酒宣言」を掲げ、全製品を栃木県産米100%で醸す蔵の看板銘柄です。大吟醸は2010年、吟醸酒は2022年にIWCのチャンピオン・サケに選ばれました。ほかに、県オリジナル米「夢ささら」を使う純米大吟醸や特別純米プレミアム、生酛や山廃の純米酒、ワインと同程度の12%の純米原酒など、幅広い酒質がそろいます。旨味がありながら後味の軽い食中酒を目指しています。
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- 蔵見学
- なし
- 直売所
- 蔵に併設の「アンテナショップ・澤姫」で、営業時間は9時から19時までです。自動サーバーで16種類の試飲ができ(運転する方と20歳未満の方には提供できません)、定番酒、季節限定酒、生酒、蔵元グッズを扱っています。昔の酒造りに使われた酒具の展示もあります。基本的に無休ですが、臨時休業や時短営業になることがあるため、来店前に電話で確かめると安心です。
- 補足
- 一般のお客様向けの酒蔵見学は、酒造期の衛生管理や安全管理のため通常は行っていません。蔵開放イベントが開かれる際には、酒造りの現場を見られます。業務や研究を目的とする見学は、事前に相談すれば対応できる場合があります。酒造りの工程を写真で紹介するオンライン酒蔵見学のページもあります。アクセスは、JR宇都宮駅西口から関東バスで約30分、「白沢小学校入口」で降りるとすぐ目の前です。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 栃木県宇都宮市白沢町1901-1
- 創業
- 1868年
- 公式サイト
- sawahime.co.jp
出典
japansake.or.jp / sawahime.co.jp / pto.co.jp / verygoodlocal-tochigi.jp / liqlog.com / sakenomy.jp / nihonshu-tourism.com / nrib.go.jp / nta.go.jp / sakestreet.com / saketime.jp
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