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大天狗酒造

代表銘柄:大天狗・卯酒

福島県

FUKUSHIMA

1872年創業

大天狗酒造の建物
大天狗酒造の建物(2023年撮影)「Daitengu Shuzo ac (1).jpg」 — 写真:Asturio Cantabrio / CC BY-SA 4.0縮小・WebP変換

1872年(明治5年)に創業した、福島県本宮市唯一の酒蔵です。もともとは倉庫業を営んでいましたが、酒造業へ転換する際、預かっていた行李の中から二つの天狗の面が見つかったことが代表銘柄「大天狗」の名の由来とされています。

仕込み水には安達太良山の伏流水を使用し、地元本宮市産の酒米や福島県産の酒造好適米「夢の香」、県開発の酵母などを取り入れ、全量を「槽しぼり」による少量手造りで仕込んでいます。主力銘柄の「大天狗」は力強い味わいが特徴で、生産された酒の多くが地元で消費されており、地元の安達太良神社の秋季例大祭にも欠かせない御神酒となっています。近年では、5代目蔵元杜氏によって新ブランド「卯酒(うさけ)」を立ち上げるなど、地域に根差した酒造りと新たな展開を続けています。

大天狗酒造の歩み

大天狗酒造は、1872年(明治5年)に創業した福島県本宮市唯一の酒蔵です。もともとは倉庫業を営んでおり、酒造業へ進出する際、預かっていた品物のうち二つの行李だけが引き取り手のないまま残っていました。開けてみると二つの天狗の面が出てきたため、これを神様からの授かりもの、酒造業を始める吉兆と受け止め、酒名を「大天狗」としました。天狗は酒好きという言い伝えがあることから、守り神の意味も込められています。

蔵はJR本宮駅から歩いて1分ほどの場所にあり、レンガ造りの煙突が駅前の目印です。県内でも最小規模の蔵で、仕込んだ酒の約8割は市内で飲まれています。毎年10月に安達太良神社で開かれる秋季例大祭では、神様へ酒を奉納し、人々がお神酒をいただく習わしがあり、蔵の酒は欠かせない唯一の地酒として多くの注文が入ります。この3日間が蔵にとって一年で最も忙しい時期です。地元の暮らしに根付いた、まさに地酒の蔵といえます。

現社長の伊藤滋敏さんは4代目にあたります。早稲田大学を卒業後、国税庁醸造試験所で研修を受け、卸売業で経験を積んでから蔵に入り、2000年に社長に就任しました。蔵にはかつて酒造りを休止した時期があり、その際に多くの設備を手放しましたが、伊藤さんが設備のほとんどない状態から造りを再開しています。その後、3姉妹の長女である小針沙織さんが、結婚を機に勤めていた会社を辞め、2014年に実家の蔵へ入りました。小針さんは福島県清酒アカデミーで学んで2018年4月に修了し、酒造士の認定を受けています。

5代目の蔵元杜氏として、2018年の造りから杜氏を務めています。2017年には、設計から造りまで自らが担当した新銘柄「卯酒」を発売しました。

2019年10月、台風19号で阿武隈川とその支流の安達太良川があふれ、蔵の1階は約60センチ浸水しました。洗瓶機や瓶詰め機が使えなくなり、保管していた酒米も5分の4を失いましたが、被災の翌日から地元の人々や他の酒蔵、取引先、常連の客が次々に駆けつけました。11月5日には、他の酒蔵から機械や資材を借り、通常営業には程遠い状態ながら製造を再開しました。

機械と建物の復旧には総額約5,000万円が必要となり、2020年1月に始めたクラウドファンディングは、開始から4日で目標の300万円に達し、2020年2月末の終了までに437人から約603万円が集まりました。蔵の一部を地元の人が集まる交流スペースにする計画も掲げられました。

2020年度には、ジェトロ福島の支援を受けて輸出に取り組み、サンフランシスコを中心とする米国の飲食店での取り扱いが決まりました。蔵の発表では、成約額は当初の目標額の2倍を超えたとのことです。2022年には創業150年を迎えました。全国新酒鑑評会では、平成14酒造年度以降に限ると、令和5酒造年度に「大天狗」が入賞しています。

酒造りの特徴

仕込み水は安達太良山の伏流水です。2019年に発売された「卯酒 月見うさぎ」では、その伏流水である「雷神清水」を使っていました。酒米は主に、本宮市内のJGAP取得農家が育てる福島県オリジナルの酒造好適米「夢の香」です。2020年時点では、本宮市産の夢の香を100%使った吟醸酒「もとみや」も造っていました。

麹づくりでは黄麹菌を使い、約30度の室で48〜52時間かけて育てます。酒母は簡易酒母という方法で、酵母を短時間で大量に増やします。そのあと三段仕込みでタンクに入れ、25〜35日ほど発酵させます。酵母は主に、福島県が開発したうつくしま煌酵母とうつくしま夢酵母を使っています。

搾りは全量を槽しぼりで行います。布袋に醪を12リットルずつ入れて重ね、最初は圧力をかけずに自然に搾られるのを待ち、少しずつ上から重石を置いて圧力を加えていく方法です。上槽後はすばやく瓶詰めして貯蔵します。機械で詰められない特別なボトルは手作業で詰め、検品をしながらラベルもすべて手で貼っています。

設備はとても小規模です。2019年の時点では、米を蒸す甑がなく、洗米した米を近所の麹屋で蒸してもらって蔵へ運び、仕込みは100キロずつ行っていました。この小回りを生かし、セカンドブランドの「卯酒」のほか、有機栽培農家が育てる「福乃香」や「こしひかり」を使ったPB商品も醸造しています。1本から受け付けるオリジナルラベルの酒もあります。梅酒は、純米原酒と地元産の白加賀梅で仕込み、甘さ控えめです。

「智恵子の里」「智恵子の花霞」は、高村光太郎の妻・智恵子の実家が旧安達町で酒を醸造していたことにちなんで名付けられた銘柄で、「花霞」の名は、その実家が造っていた清酒の名を受け継いだ「智恵子の花霞」にあたります。

代表銘柄

大天狗

蔵の代名詞となる銘柄で、名は創業時に見つかった二つの天狗の面に由来します。大吟醸から純米吟醸、特別純米酒、特別本醸造、たる酒まで揃い、特別純米酒720mlは蔵で一番人気の商品です。力強い味わいの酒を醸し、辛口が看板で、特別本醸造は夢の香とうつくしま煌酵母で醸した超辛口タイプです。赤の大天狗と緑のカラス天狗の2種がある陶器入りの天狗ボトルは会津の本郷焼で、帽子をぐい呑として使えます。

卯酒

2017年に小針沙織さんが設計から造りまで手がけて発売した、蔵のセカンドブランドです。発売当初は福島県の酒造好適米「夢の香」とうつくしま夢酵母を使った、甘酸っぱく爽やかでアルコール度数14度の軽めの純米吟醸でした。1回限りの発売の予定でしたが好評で、2019年から春夏秋冬で酒質とラベルを変える年4回のシリーズになりました。うさぎは幸運の象徴にちなみ、小針さんがうさぎ年生まれでもあることから選ばれました。

見学・購入

蔵見学
あり(要事前確認)
直売所
JR本宮駅から徒歩1分ほどの蔵で店頭販売をしています。営業時間は8時から17時で、日曜と祝日は休みです。
補足
蔵見学は1人1,000円(税込)で、予約が必要です。試飲つきで、所要は1時間ほどです。冬の仕込みの手伝いや酒蔵体験を希望する人も受け入れていて、問い合わせを受け付けています。

見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。

蔵の基本情報

所在地
福島県本宮市本宮字九縄18
創業
1872年
公式サイト
daitengusyuzo.com

出典

japansake.or.jp / tohokukanko.jp / fukunosake.com / f-sake.com / daitengusyuzo.com / nrib.go.jp / readyfor.jp / jetro.go.jp / jp.sake-times.com / hk-const.com / tohoku-sakurakaido.jp / goshu-pro.jp / motomiya-machiaruki.com / news.yahoo.co.jp / fukushima-10years-archives.jp

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