魚沼酒造
代表銘柄:天神囃子
新潟県
NIIGATA
1873年創業
魚沼酒造株式会社は、新潟県十日町市に位置する1873年(明治6年)創業の酒蔵です。豪雪地帯である同地の山際に蔵を構え、魚沼山系の伏流水(信濃川の伏流水)と新潟県産の酒造好適米(「越淡麗」「五百万石」等)を用いて酒造りを行っています。淡麗辛口の酒が多い新潟県内において、米の旨みを十分に引き出した「旨口」にこだわり続けているのが大きな特徴です。代表銘柄の「天神囃子」は、妻有地方(十日町地域)に古くから伝わる稲作豊穣を祈願する神事唄・祝い唄から名付けられており、地域の祝い酒として親しまれています。
また、全国新酒鑑評会での金賞受賞・入賞や関東信越国税局酒類鑑評会での優秀賞受賞など、高い技術力を誇ります。地元十日町で開催される「大地の芸術祭」とコラボレーションしたアートボトルを展開するなど、地域の文化や地産を生かした地酒造りを行っています。
魚沼酒造の歩み
魚沼酒造は、新潟県十日町市の山際に蔵を構える酒蔵です。創業は1873年(明治6年)で、山口駒蔵が現在の十日町市にあたる地で酒造りを始めました。会社組織となったのは大正5年(1916年)からで、当代の社長である山口勝由さんは五代目にあたります。蔵は豪雪地帯の十日町にあり、雪が降ると蔵がすっぽり雪の中に入ってしまうほどです。雪解けの時期には、すぐ近くの山から雪解け水が勢いよく流れ、春の訪れを知らせてくれます。
代表銘柄の「天神囃子」は、十日町や津南町を含む妻有地方で古くから唄い継がれてきた祝い唄の名前です。もとは稲作の豊穣を祈願する神事唄といわれ、祝い事はもちろん、蔵開き、田打ち、田植え、建て前、水入れなどの場で唄われてきました。歌詞には、めでたいものの代表とされた「大根種」「そばの種」「芋の種」がよく登場します。十日町地方の祝言では、まず大根種の唄を唄い、色直しには中の唄を、最後の膳あげにはまた別の唄を唄うしきたりがあります。
蔵は昭和55年(1980年)ごろ、身近にこんな縁起のよい名前があることに気づき、銘柄を天神囃子に改めました。それ以来、祝席や吉事の際に地元の人が求めてくれる酒になり、県外に出回るのは出荷量の1割ほどにとどまります。なお、「八幡川」は先代から続く別の銘柄で、いまも旨口にこだわって造られています。
造りの体制は、社長の山口勝由さんが蔵元を務め、弟の山口為由さんが杜氏として造りを担う兄弟二人三脚です。為由さんは十日町市の出身で、新潟県醸造試験場での勤務を経て魚沼酒造に入り、25歳で杜氏になりました。使う酵母は一貫して新潟酵母で、新潟県産の米と酵母、そして地元の水で造り続ける「オール新潟」の酒造りを守っています。2020年ごろの蔵見学の案内では、女将が案内役を務め、蔵人手作りの酒林が迎えてくれました。流行に乗らず、身の丈にあった酒造りを続ける、家族経営の小さな酒蔵です。
受賞歴では、全国新酒鑑評会で天神囃子が入賞を重ねてきました。平成14酒造年度以降に限っても6回入賞しており、そのうち金賞は平成16酒造年度、平成18酒造年度、平成19酒造年度、平成21酒造年度の4回です。平成18酒造年度と平成19酒造年度は2年続けての金賞でした。平成17酒造年度と令和元酒造年度は入賞です。令和元酒造年度は金賞が選ばれなかった年にあたります。また、関東信越国税局酒類鑑評会では、2009年の第80回に燗酒の部で優秀賞を受賞しています。
さらに、2006年度の全米日本酒歓評会では、特別純米酒の天神囃子が純米部門の銀賞を受けました。2009年春季の全国酒類コンクールでは、特別本醸造の天神囃子が本醸造部門で第1位に選ばれました。2017年の新潟の「酒の陣」では、特別本醸造を燗酒で出したところ、二日間とも持ち込んだ分が完売しました。
地域の芸術祭との縁も深く、2009年の大地の芸術祭に合わせた「Roooots 越後妻有の名産品リデザインプロジェクト」で、特別本醸造天神囃子のボトルがデザイナー黒柳潤さんの手で生まれ変わりました。このアートボトルは、2010年に東京TDC賞(入選・優秀賞)、英国のD&ADアワード(Bronze)、ベルギーのペンタワード(Silver)、香港のアジアデザイン賞(Gold)、2011年にはジャパンパッケージデザインアワードのアルコール部門で銀賞を受けました。
特別純米酒のアートボトルも、2012年のアジアデザイン賞で銅賞に選ばれています。飲み終えたあとも、ボトルを手元に残して楽しめる酒です。
酒造りの特徴
魚沼酒造の酒の核にあるのは、豪雪地の雪と水です。冬は2〜3メートルもの雪が積もる土地で、雪の安定した低温は麹菌や酵母にとって最適な環境をつくります。蔵では低温でじっくり発酵させる「低温長期発酵」を大切にしており、雑菌の繁殖を抑えて、きめ細かい味わいを引き出します。仕込み水は魚沼山系の伏流水(信濃川の伏流水)で、春には山々から流れ出る雪解け水がミネラル分の少ない軟水となり、まろやかでキレのある味わいを支えます。目指すのは、淡麗辛口が多い新潟では異色といえる、米の旨みを存分に引き出した「旨口」です。
米は新潟県産の酒造好適米にこだわり、すべての酒で新潟県産米を使います。大吟醸と純米吟醸、純米大吟醸原酒には新潟県悲願の酒米として知られる「越淡麗」を、特別純米酒や特別純米生原酒には「五百万石」を使います。特別純米酒に使う五百万石は、地元十日町産です。生産量の少ない「亀の尾」は、同じ水脈が流れる十日町市内の農家に契約栽培を委ねており、近隣の菅沼と八箇で育てられています。蔵のある地域はコシヒカリの産地で、酒米を作る農家はまだ少ないため、社長が何度も話し合って酒米農家を増やしてきました。
調達先は一つの地域に偏らず、分散させています。
精米にも特徴があります。大吟醸天神囃子は越淡麗100%を39%まで、純米吟醸天神囃子は越淡麗100%を50%まで磨きます。特別純米酒は五百万石55%、特別本醸造は麹米と酛掛け米を55%、掛け米を60%まで精米します。普通酒も新潟県産米を60%以下まで精米しており、60%まで磨く普通酒は多くありません。「縄文の響」は、「亀の尾」と越淡麗で醸す純米吟醸酒で、50%まで精米して極寒期にじっくり造られ、亀の尾の旨さが素直に出た存在感のある味わいです。
「吟麗」は、「たかね錦」と越淡麗を55%まで精米した吟醸酒で、旨みを追い求める蔵らしい、すっきりとキレの良い一本です。
造りの流れは、蒸した米を放冷し、麹室で麹を育てるところから始まります。麹は米の品温が33度になったところで麹菌を振り、48〜55時間かけて仕上げます。酒母は8〜12日ほどで出来上がります。もろみは酒母に麹、蒸米、水を3回に分けて加える三段仕込みで、1回目を初添え、2回目を仲添え、3回目を留添えと呼びます。初添えの翌日、もろみが元気に泡立ってもりあがる状態は「おどり」と呼ばれます。留添えのあとは朝夕の櫂入れで発酵を管理し、仕込みから20〜30日ほどで搾りを迎えます。搾りの見極めは杜氏の経験によるものです。
搾った酒は10日ほどおいて上澄みを抜き出してろ過し、60〜65度で火入れをして貯蔵します。最後に割水をして市販の規格に整え、殺菌して瓶に詰めます。生原酒のように熱処理をしない酒や、純米大吟醸原酒のように瓶詰めのときの一回だけ火入れをする酒もあります。
代表銘柄
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天神囃子
魚沼酒造の主力ブランドで、大吟醸から普通酒まで幅広く揃います。晩酌で飲まれる酒の品質を上げることを大切にし、普通酒でも新潟県産米を60%以下まで磨いています。蔵で最も多く出る特別本醸造は、燗でも冷やしでも常温でもおいしい、幅のある旨みの酒です。平成14酒造年度以降の全国新酒鑑評会では金賞を4回受賞しています。
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- 蔵見学
- あり(要事前確認)
- 補足
- 2020年ごろの案内では、蔵見学は予約制で、前日までに電話(025-752-3017)で日時と人数を伝えて申し込む形でした。見学料も試飲も無料で、受付は午前8時から午後5時まで、定休日は日曜と祝祭日でした。現在の見学の可否は、事前に電話で確認してください。当時の見学では、瓶詰めの工程を見たあと、二階からガラス越しに水場、仕込み蔵、麹室をのぞくことができ、大吟醸から普通酒まで、あまり流通していない地元向けの酒も含めて試飲できました。最後に試飲する純米大吟醸原酒は、瓶詰めのときの火入れだけで、生酒に近い風味が残っています。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 新潟県十日町市中条丙1276
- 創業
- 1873年
- 公式サイト
- www.tenjinkk.com
出典
tenjinkk.com / niigata-sake.or.jp / niigatakenjinkai.com / sakagura-press.com / uonumanosato.jp / zizake-sansei.com / cross10-shop.net / nrib.go.jp / sake-tour.jp / loftwork.com / maff.go.jp / sake-chitose.com / shop.ng-life.jp / nta.go.jp
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