橋本酒造
代表銘柄:十代目・雪月花の舞・雪のひとりごと
石川県
ISHIKAWA
1760年創業
石川県加賀市に蔵を構える橋本酒造は、江戸時代後期の宝暦10年(1760年)に創業した歴史ある酒蔵です。平家の侍を先祖に持ち、「侍魂」を胸に宿した酒造りを代々受け継いでいます。自分たちの目が十分に行き届く量だけを仕込む少量生産を貫いており、すべての酒を今では希少となった木製圧搾機でじっくり時間をかけて搾る「木槽搾り(全量槽搾り)」で上槽するのが大きな特徴です。手間隙をかけて搾られたお酒は雑味がなく、やさしい口当たりと豊かな香りを備えています。
代表銘柄には「十代目」のほか、「雪月花の舞」「雪のひとりごと」「大日盛」などがあり、看板酒である「純米大吟醸 十代目」は伝統と技を結集させた逸品として親しまれています。過去には全国新酒鑑評会や金沢国税局の新酒鑑評会で金賞・優等賞などを獲得してきた実績もあります。また、敷地内には「大日盛酒蔵資料館」が併設されており、昔ながらの酒造り道具の展示や無料の利き酒体験を通して、歴史ある地酒文化を伝えています。
橋本酒造の歩み
橋本酒造は、平家の武士であった平忠盛の子孫を先祖に持つと伝わる酒蔵です。平安時代末期の戦で傷を負った先祖が武士の身分を退いて加賀の地に移り住み、その子孫が橋のそばに居を構えたことから橋本の姓を名乗るようになったと伝えられています。宝暦十年(西暦1760年)、一族の分家として現在の地で酒造りを始めました。江戸時代には十村役として大聖寺藩から扶持を受ける格式を持ち、本陣として藩主や公家、僧侶、文人墨客など多くの客人をもてなしてきました。
明治天皇の北陸巡幸の折には当主の屋敷でご休憩の道具類が用いられたと伝わり、日本画家木村杏園が手がけた襖絵を通じた交流も知られています。
現在蔵を率いるのは十代目橋本重右衛門佳幸で、代々の当主が受け継いできた「重右衛門」の名を襲名しています。東京農業大学で醸造学を学んだのち酒類卸の会社で酒販店やデパートへの営業を経験し、2000年に父である先代から家督を継ぎました。当時は廃業も検討しましたが、規模を縮小しながら酒造りを続ける道を選びました。先代杜氏の前良平は能登杜氏として全国新酒鑑評会や金沢国税局の鑑評会で幾度も金賞を受け、黄綬褒章を受章した人物で、その技は「現代の名工」と名づけられた熟成酒に今も息づいています。
橋本佳幸は、本醸造についてアルコール添加が米の持つマイナス面を補い、香りの成分をしっかりと封じ込める、純米では引き出しきれない良さがあるという考えを語っています。
橋本酒造は近年、幾つもの困難に直面してきました。先代から引き継いだ時点で多額の負債を抱えており、歴史ある母屋は競売にかけられて手放すこととなりました。新型コロナウイルス流行期には主な収入源であった酒蔵見学の来訪者が途絶え、大きな打撃を受けました。さらに令和6年の能登半島地震では貯蔵していた酒瓶の多くが割れ、洗瓶機など醸造設備も損傷したうえ、前年の地震に続いて風評被害による見学予約の取り消しも相次ぎました。
2024年には設備の修繕や酒米の仕入れに充てる資金を募るクラウドファンディングを実施し、目標額を上回る支援が集まりました。
全国新酒鑑評会では、平成15酒造年度に「大日盛」の名で入賞しています。また平成4年(1992年)に醸造した大吟醸は同鑑評会で金賞を受賞しており、その酒は長期熟成酒として今も蔵に大切に保管されています。
酒造りの特徴
橋本酒造のすべての酒は、大正15年から使い続けている木製の槽でゆっくりと搾る「木槽搾り」で仕上げられています。純米酒・本醸造・普通酒については、和釜で米を蒸し、早朝の澄んだ空気の中で自然に放冷したのち、酒袋に詰めたもろみを槽に並べて時間をかけて搾ることで、雑味の少ない澄んだ味わいを引き出しています。人手をかけた昔ながらの製法を守っているため、造られる量はそれほど多くありません。
原料米には、純米酒・本醸造・普通酒に加え、純米大吟醸や純米吟醸にも石川県産の五百万石を用いており、長期熟成させる大吟醸には兵庫県産の山田錦を用いています。この十年熟成の大吟醸は、山田錦を40%まで磨いたのち5度の温度で徹底管理しながら10年間ゆっくりと熟成させ、上品な甘みとまろやかな旨みを引き出しています。
新酒の一部はもろみを酒袋に入れて吊るし、したたり落ちるしずくだけを集める「袋吊り」でも仕込まれ、機械の圧力を加えない澄み切った味わいに仕上げられています。
代表銘柄
十代目
当主が十代目であることにちなんで名づけられた純米大吟醸です。石川県産の五百万石を50%まで磨き上げ、やや辛口でありながらフルーティーな香りと旨みを備えた味わいに仕上げています。脂ののったブリやのどぐろなど、加賀の魚介と好相性で、冷やしてワイングラスで飲むとその持ち味が引き立ちます。
雪月花の舞
石川県産の五百万石を60%まで贅沢に高精白した純米吟醸で、アルコール度数は15度です。伝統的な吟醸造りで仕込み、繊細でありながら深い味わいに仕上げています。木槽でゆっくりと搾ることで雑味のない澄んだ口当たりに整えており、橋本酒造の丁寧な手仕事が生きた一本です。
雪のひとりごと
橋本酒造がかつて冬季の予約商品として仕込んできたにごり酒で、雪がひとりごとをつぶやくような趣のある銘が付けられています。白くとろりとした口当たりが持ち味で、寒い季節にひときわ味わい深く感じられる一本です。仕込みの時期や数量が限られる、蔵の丁寧な手仕事を映す一本でもあります。
見学・購入
- 蔵見学
- あり(要事前確認)
- 直売所
- 大日盛酒蔵資料館内の売店のほか、近隣の酒販店や公式のオンラインショップでも購入できます。
- 補足
- 資料館では常時5~6種類の日本酒を無料で試飲でき、日によっては大吟醸を試せることもあります。個人での見学は予約不要ですが、団体で利用する場合は事前にファックスで予約が必要です。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 石川県加賀市動橋町イ163
- 創業
- 1760年
- 公式サイト
- judaime.com
出典
judaime.com / hanaizuko.com / base.shop / sakagura-press.com / sakenomy.jp / sakedata.jp / keizai.biz / compalyze.co.jp / judaime.base.shop / nrib.go.jp / nta.go.jp / camp-fire.jp
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