三千櫻酒造
代表銘柄:三千櫻
北海道
HOKKAIDO
1877年創業
1877年(明治10年)に現在の岐阜県中津川市にあたる地で創業した老舗酒蔵です。蔵の老朽化や地球温暖化に伴う温度管理の難化を受け、143年目の2020年に北海道東川町へと蔵ごと移転しました。全国的にも珍しい自治体主導の「公設民営型」の酒蔵として、東川町初の酒蔵「東川町公設酒蔵・三千櫻酒造」が開業しました。
造りの面では、大雪山連峰の豊かな伏流水(天然地下水)を仕込み水とし、岐阜時代から使用する酒米「愛山」に加え、地元の農家と連携して栽培された北海道産酒米「彗星」や「きたしずく」を用いています。岐阜時代から「どんな料理にも合う」と評判で、彗星の酒は軽快でキレが良いのが特徴です。受賞歴として、東川町産の彗星で醸した「純米大吟醸 彗星45」が「北海道米でつくる日本酒アワード2025」にてグランプリを受賞しています。
三千櫻酒造の歩み
三千櫻酒造は、1877年(明治10年)に岐阜県の現在の中津川市(旧福岡町)にあたる地で創業しました。始めたのは庄屋の4代目当主だった山田三千介で、銘柄名の「三千櫻」(みちざくら)はその名にちなんでいます。仕込み水には自社の山から湧き出る清水を使い、水源を守るために木を切らず植林もしない、総天然林としての維持に努めてきました。小さな蔵ながら「できることはすべてやる」という考えで、自家栽培の米と地元の米を使って酒造りを重ねてきました。
現在の社長の山田耕司さんは6代目で、1959年に蔵の長男として生まれ、1995年頃に入社して酒造りを学びました。台湾で日本語教師を務めたのち舞台関係の仕事に就いていましたが、先代の体調が優れなかったことから家業を継ぎました。当時の杜氏が退社したあとは自ら蔵元杜氏となり(2004年就任)、普通酒が中心だった造りを、上品で繊細な味わいの純米吟醸酒へ広げていきました。首都圏にも販路が伸びていました。年間の生産量は一升瓶で2万本ほどで、すっきりとした甘口ながらキレがあり、どんな料理にも合うと評判でした。
特約店制度は設けず、全国の酒屋が取り扱える蔵でした。能登杜氏自醸清酒品評会の第109回では能登町長賞を受賞しています。移転の数年前にはメキシコで日本酒づくりの指導も行い、硬度230という硬水でも発酵を抑える工夫を重ねて、現地生産の本格的な日本酒を造り上げました。
山田さんが蔵の環境に悩み始めたのは、移転のおよそ10年前のことでした。明治時代に建てられた蔵は老朽化が進み、とくに麹室の傷みが深刻で、一部を直すだけでも数千万円の見積もりになりました。そこへ近年の暖冬が重なり、冷却や温度管理が年々難しくなっていました。蔵は中津川駅から車で30分ほどの場所にあり、バスも日に数本で、遠方の客が訪れにくいことも悩みでした。山田さんは北海道に目を向け、ニセコや帯広などで移転先を探しましたが、話はまとまりませんでした。そんな折、知人の縁で東川町の松岡町長と会う機会を得ます。
東川町は2019年に、「公設民営型」の酒蔵の運営事業者を公募しており、米づくりに力を入れる町の方針と山田さんの考えが重なりました。三千櫻酒造は公募に応じ、2020年1月に選ばれました。
公設民営型とは、建物と設備を東川町が整備して所有し、酒造りや運営を酒造りのプロの三千櫻酒造が指定管理者として担う仕組みです。募集時の施設整備費は3億5000万円以内と見込まれ、事業者は補助金などを除いた額の2割を、返還されない負担金として納める条件でした。建設費は約3億5000万円で、国の補助金なども活用して整備され、三千櫻酒造の負担は約5000万円で済みました。東川町にはそれまで酒蔵がなく、これが町で初の酒蔵になりました。
山田さん夫妻と蔵人夫妻2組の計6名が東川町へ移り住み、蔵人の安藤宏幸さんは移転後の最初の造りから杜氏に就きました。岐阜で使っていたタンクや自動圧搾機も北海道へ運ばれました。距離はおよそ1550キロに及びます。2020年10月に移転し、11月7日に「東川町公設酒蔵・三千櫻酒造」として新たなスタートを切りました。同月中旬には、東川の米による初の仕込みが始まっています。
移転後の最初のタンクの酒は、発売前に完売しました。2021年2月にはテレビ東京系列の「日経スペシャル ガイアの夜明け」に出演し、UHB北海道文化放送でも蔵の引っ越しを追った特番が放送されました。町のふるさと納税「ひがしかわ株主制度」では、東川産酒米の彗星ときたしずくで醸した限定酒の返礼品も用意されました。2022年5月に蔵が事故で焼失した茨城県の結城酒造からは、副社長で杜氏の浦里美智子さんを迎え、同年9月に東川へ移住した浦里さんが11月にきたしずくで同蔵の代表銘柄「結」を三千櫻の設備で醸しました。
販路は、移転前の東京7割から、現在は北海道内が7割を占めるまでになり、北海道の地酒として定着しつつあります。
酒造りの特徴
酒造りの姿勢は、水と向き合い、米と向き合い、麹に語りかけてその声を聞くというものです。「決して気負わず手を抜かず、自然を信じて酒を待つ」ことを信条にしています。先代からは、酒造りも農業を担う仕事の一つだと教えられてきました。米が酒の味を大きく左右すると考え、米づくりの段階から関わっています。中津川時代にも、農薬を極力使わずに育てた地元の米を積極的に使っていました。
東川に移ってからは、ひがしかわJAの有志と力を合わせ、酒米の彗星ときたしずくの育成に取り組んでいます。どちらも町ではそれまで栽培されていなかった品種で、とくに彗星はJA有志が三千櫻のために初めて作った酒米です。きたしずくは中津川時代から使ってきた米でもあります。町内の7農家が栽培し、2種合わせて年間10トン近くを使っています。2024年の取材時点で、蔵で使う酒米のおよそ7割が東川町産でした。このほか、中津川時代から大切にしてきた愛山と、レギュラー酒に使う一般米のななつぼしも用いています。
酒粕は、堆肥にしたいという生産者に無償で提供しています。
水も大きく変わりました。中津川の仕込み水は硬度8という超軟水で、割り水をしない原酒でも飲める三千櫻の方針に合っていました。東川町は全国でも珍しい上水道のない町で、蛇口から出るのは大雪山の雪解け水がゆっくりと蓄えられた地下水です。蔵では地下60メートルから汲み上げており、硬度は中津川の約10倍にあたります。硬度が高いと酵母が活発になり発酵が進みやすいため、仕込みの配合などの設計を見直し、醪の温度管理を細かく行って発酵が進みすぎないようにしています。
銘柄名も酒質も移転前から変えず、これまでの三千櫻の味を意識した造りを続けており、価格に関わらず、すべての酒を同じ仕込み手順で造っています。
受賞も続いています。札幌国税局の令和4酒造年度新酒鑑評会では、純米酒の部で金賞を受賞しました。全国新酒鑑評会では、令和5酒造年度と令和6酒造年度に入賞しています。2023年のKura Masterでは、純米吟醸 彗星55が純米酒部門で、純米大吟醸 愛山40 スパークリングがサケ スパークリング部門で、それぞれ金賞を受賞しました。2025年の「北海道米でつくる日本酒アワード」では、出品された16種のなかから、一般審査員413名の投票で純米大吟醸 彗星45がグランプリに選ばれました。
代表銘柄
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三千櫻
愛山、彗星、きたしずくを、純米大吟醸と純米吟醸(愛山は純米)で造り分けています。愛山は中津川時代から大切にしてきた酒米で、華やかさとふくよかな米の味わいがあります。彗星は軽快でキレがよく、きたしずくは優しい甘味と爽やかな後口を併せ持ちます。普段飲み向けのR CLASS(純米、普通酒)に加え、桜の頃の「さくらにごり」、初夏の「夏のにごり」といった季節酒もあります。
楽天で商品を見る見学・購入
- 蔵見学
- なし
- 直売所
- 蔵に併設の直営ショップ「三千櫻SHOP」で酒を購入できます。営業時間は10時から15時半までで、毎週火曜が定休です。
- 補足
- 酒蔵見学は実施していません。エントランスやショップ内の窓から、蔵の一部をのぞくことができます。蔵は北海道上川郡東川町西2号北23番地にあります。月ごとの定休日は、公式サイトのお知らせで案内されます。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 北海道上川郡東川町西2号北23番地
- 創業
- 1877年
- 公式サイト
- michizakura.jp
出典
sakenomy.jp / michizakura.jp / agriport.jp / nies.go.jp / mizu.gr.jp / visit-hokkaido.jp / hokuren.or.jp / nrib.go.jp / nta.go.jp / kuramaster.com / tanoshiiosake.jp / sakeworld.jp / adaptation-platform.nies.go.jp / web.archive.org / note.com
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