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土井酒造場

代表銘柄:開運

静岡県

SHIZUOKA

1872年創業

土井酒造場の建物
土井酒造場の建物(2026年撮影)「Doi Brewery Corporation.jpg」 — 写真:Halowand / CC BY 4.0縮小・WebP変換

1872年(明治5年)に創業し、地元の小貫村の発展を願って代表銘柄「開運」と名付けられました。仕込み水には歴史ある高天神城麓の湧水を用い、厳選した酒米を中心に使用しています。

能登杜氏四天王と称された故・波瀬正吉杜氏による伝統的な能登流の技と、自社の醪から誕生した「HD-1」などの静岡酵母を活かした綺麗な吟醸造りが大きな特徴です。現在は伝統の技を受け継いだ杜氏と若い蔵人による体制へと移行し、太陽光発電や自社排水処理施設の設置など環境に配慮した酒造りにも先進的に取り組んでいます。

全国新酒鑑評会での数多くの金賞受賞をはじめ、静岡県清酒鑑評会や名古屋国税局酒類鑑評会で数多くの賞を獲得しているほか、インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)2017のSAKE部門吟醸の部で最高賞(トロフィー)を獲得するなど、国内外のコンテストで高い評価を受けています。

土井酒造場の歩み

1872年(明治5年)、初代となる土井弥市が、現在の掛川市小貫にあたる小貫の里の発展を願って酒造蔵を開きました。銘柄の「開運」も、創業のときに地元の発展を願ってつけられた名前です。小貫の里は豊かな水源に恵まれず、酒造りの好適地とは言えませんでしたが、徳川と武田の攻防戦で名高い高天神の山麓から人力で仕込み水を運び入れるなど、工夫を重ねて酒造りに取り組んできました。仕込み水は今も変わらず高天神の水源地から汲まれ、ステンレス製のタンクを積んだトラックが蔵まで何度も往復しています。

現在の当主は平成29年に五代目蔵元を継いだ土井弥市社長で、初代の名を襲名しています。

昭和50年代、「吟醸酒」という言葉がまだほとんど知られていなかった頃に、土井酒造場はいち早く吟醸酒の製品化に取り組みました。先代の土井清愰会長と、その右腕で能登杜氏四天王のひとりと謳われた波瀬正吉杜氏が、酒米の選定から設備、製造方法までをすべて見直し、「土井酒造場と言えば吟醸造り」という評価を築きます。波瀬杜氏は1968年から約40年にわたり土井酒造場で杜氏を務めました。「開運」の大吟醸のもろみからは、静岡酵母HD-1が分離されました。名前のHは波瀬杜氏、Dは土井酒造場の頭文字です。

1986年の全国新酒鑑評会では、HD-1などの静岡酵母を使った酒で静岡県内の10蔵が金賞を受賞し、開運もそのひとつです。

2009年に波瀬杜氏が急逝すると、長く直接の指導を受けた榛葉農(しんば・みのり)杜氏が能登流の酒造りを引き継ぎました。波瀬杜氏の急逝後の平成21酒造年度は全国新酒鑑評会の金賞を逃しましたが、続く平成22・平成23酒造年度には2年続けて金賞を受賞しています。2022年の創業150周年には、掛川城の三の丸広場で「掛川開運まつり」を開き、蔵付き酵母を使った地元ビールなど、掛川の企業や飲食店とのコラボ商品が並びました。

蔵では太陽光発電パネルの敷設、洗米排水などの大型浄化槽による100%処理、平成23年の酒造りからは、能登から季節雇いの蔵人を招かず、直接雇用の若い社員による酒造りに切り替えました。当時専務だった現社長の決断です。

全国新酒鑑評会では、蔵が公表する実績(2012年時点)に、昭和54酒造年度から平成11酒造年度までの金賞が9回あります。昭和54・57・58・60・62・63酒造年度と、平成2・10・11酒造年度です。平成14酒造年度以降に限ると入賞が19回あり、うち金賞は13回です。金賞は平成14酒造年度から平成20酒造年度まで7年連続、平成22酒造年度と平成23酒造年度、平成25酒造年度、そして平成28酒造年度から平成30酒造年度まで3年連続で受賞しました。

平成24酒造年度と平成26酒造年度、令和2・3・4酒造年度、令和6酒造年度は入賞です。平成25酒造年度(第102回)までの10年間の成績は、金賞8回と入賞1回でした。静岡酵母は香りが穏やかなため、全国の鑑評会では不利と言われてきましたが、その静岡酵母で金賞を重ねています。

市販酒を対象とする鑑評会でも実績があります。名古屋国税局酒類鑑評会では、平成12年と13年に首位賞を受け、優等賞は令和7年度まで38年連続で受賞しています。令和2年度の吟醸酒の部では新設された名古屋国税局長賞の第1回受賞酒に「開運 大吟醸 伝 波瀬正吉」が選ばれ、令和6年度には純米吟醸酒の部で2度目の局長賞を受賞しました。令和7年度は吟醸酒・純米吟醸酒・燗酒の3部門で優等賞です。静岡県清酒鑑評会の県知事賞は、昭和51年から55年まで5年連続で受けたのをはじめ、平成22年までに17回を数えます。

近年も、令和7年時点の直近14年間で吟醸酒の部5回、純米吟醸酒の部6回と県内最多で、平成31年には両部門を独占しました。市販酒を対象とするコンテストでは、SAKE COMPETITION 2017の純米大吟醸部門で「開運 純米大吟醸」が第1位、ワイングラスでおいしい日本酒アワード2024のメイン部門で「開運 特別本醸造 夢仕込み」が最高金賞に選ばれました。

海外では、IWC 2017の吟醸の部で最高賞のトロフィー、Kura Master 2023の純米大吟醸酒部門でプラチナ賞、CINVE 2021で日本酒部門の総合1位を獲得しています。

酒造りの特徴

酒造りは自社精米から始まります。蔵には精米機があり、ほぼ全量を自社で磨いています。酒造りの期間中は24時間休みなく稼働し、米の状態を見ながら精米できることを大きな利点と考えています。精米歩合は最低でも60%で、雑味の出にくい酒質をめざしています。洗米機は酒造機器メーカーと土井酒造場が共同で開発したもので、大量の水で米を割らずに糠を洗い流し、吸水は秒単位で管理します。蒸しは早朝に100度以上の乾燥蒸気で一気に行い、外硬内軟の蒸米に仕上げます。放冷機では、特殊な装置で殺菌した冷風を吹きかけて温度を下げます。

麹造りは二昼夜、約48時間かけ、麹菌が均等に繁殖するよう何度も手を入れます。仕込みは三段仕込みで、添の後に1日空けて仲、その翌日に留と、合計4日間で掛け米を投入します。吟醸蔵では密閉型の醪タンクを使い、毎日の成分分析をもとに杜氏が醪の状態を見ながら育てます。掛川は冬でも雪がほとんど降らない温暖な土地のため、蔵の中には至るところに冷蔵設備があります。2021年の取材時点で石高は約2,000石、杜氏の榛葉農さんを含む8名の体制で造っています。

酵母は、蔵の醪から分離された吟醸用の静岡酵母HD-1を、さまざまな特定名称酒に使っています。米は山田錦を主軸に、雄町、愛山、静岡県産の誉富士などを同じ酵母で仕込み、米の違いが味に出るように造り分けています。「夢仕込み」には掛川産の高天神こしひかりを使っています。搾りは、鑑評会出品用など特別な酒には醪を酒袋に詰めて吊るし、雫を集める袋吊り、大吟醸など質の高い酒には、酒袋を槽に積み上げて自重でにじみ出る酒を集める槽搾りを用います。

近年は新しい取り組みも続けています。創業150周年には、兵庫県の特A地区産山田錦を自社で25%まで磨き、HD-1で低温でじっくり仕込んだ「純米大吟醸 諸法無我」を、蔵として初の25%精米の酒として発売しました。また国産の白木無垢樽を使い、水楢・桜・栗の3種の樽で「開運」を氷温熟成させる「New Fortune」にも取り組んでいます。

殺菌のため60〜70度に加熱した酒を樽に注いで素早く冷やし、5度以下の氷温で熟成させる方法で、2025年には水楢樽の「New Fortune」がKura Masterの純米酒部門で金賞、IWCの熟成の部で銀賞を受賞しました。

代表銘柄

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開運

創業時に小貫の里の発展を願って名付けられた、蔵の代表銘柄です。頂点に立つのは、静岡酵母HD-1を使った「開運 伝 波瀬正吉」の大吟醸と純米大吟醸で、先代杜氏の名を冠しています。招福熊手のラベルを巻いた「祝酒 特別本醸造」は、祝いの席や贈答の酒として定着しています。純米酒は山田錦、雄町、愛山、誉富士と米ごとにそろい、同じ酵母で造り分けて米の違いを楽しめます。創業150周年には蔵初の25%精米の「純米大吟醸 諸法無我」も加わりました。

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見学・購入

蔵見学
なし
直売所
直売所は蔵(掛川市小貫633)にあり、営業は平日の8:00〜12:00と13:15〜17:00、土曜は不定休、日曜・祝日は休みです。
補足
蔵見学は受け付けていません。購入は直売所のほか、各地の特約酒販店でできます。

見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。

蔵の基本情報

所在地
静岡県掛川市小貫633
創業
1872年
公式サイト
kaiunsake.com

出典

japansake.or.jp / wikipedia.org / fujinosake.com / nihonshu.com / shizuoka-sake.jp / kaiunsake.com / nta.go.jp / kakegawa-kankou.com / nrib.go.jp

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