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冨田酒造

代表銘柄:七本鎗

滋賀県

SHIGA

1534年創業

冨田酒造の建物
冨田酒造の建物(2022年撮影)「Tomita Shuzo 2022 ac (2).jpg」 — 写真:Asturio Cantabrio / CC BY-SA 4.0縮小・WebP変換

滋賀県長浜市木之本町、旧北国街道沿いに位置する1534年(天文3年)創業の老舗酒蔵です。代表銘柄「七本鎗(しちほんやり)」は、賤ヶ岳の戦いで武功を挙げ豊臣秀吉を天下人へと導いた「賤ヶ岳の七本槍」にちなんで命名されました。蔵に掲げられている扁額の文字は、12代当主と交流のあった北大路魯山人の篆刻によるもので、現在の銘柄ラベルにも採用されています。

同蔵は地酒の「地」に重きを置き、奥伊吹山系の伏流水を仕込み水に用い、地元の篤農家が育てる滋賀県産の酒米(玉栄、滋賀渡船、吟吹雪など)を中心に酒造りを行っています。さらに、地元の無農薬米を用いた醸造や、木桶による生酛仕込み、熟成酒(ヴィンテージ)の展開など、地域の風土(テロワール)や豊かな旨みを活かした本物の地酒造りに取り組んでいます。

冨田酒造の歩み

冨田酒造は、琵琶湖の最北端に近い木之本の北国街道沿いで酒を造ってきた蔵です。創業は天文年間(1532〜1555年)の初期で、天文3年(1534年)の創業として知られています。蔵の伝承では、初代の高保が母方の縁を頼って木之本へ移り、武士の身分を離れて酒を造るようになりました。木之本は北陸と都を結ぶ要衝にあたる門前町・宿場町で、冨田家も街道沿いで家業を営みました。1696年の記録では、冨田家は14石を製造していました。

銘柄の七本鎗は、1583年の賤ヶ岳の戦いにちなんでいます。羽柴(豊臣)秀吉と柴田勝家が織田信長の跡目をめぐって争ったこの戦いで、秀吉の勝利に貢献した若武者たちが「賤ヶ岳の七本槍」と呼ばれました。秀吉が本陣を置いた浄信寺は冨田家のすぐそばにあります。

江戸時代には木之本が2度の大火に見舞われ(1739年・1744年)、冨田家も焼失しました。1744年に7代の忠良が、西江州(現在の高島市にあたる地)から建物を移して主屋を再建しました。この主屋は木之本で最古級の町家建築で、2019年に国の登録有形文化財になっています。1769年には井戸を掘り替え、1812年には9代の忠之が蔵を建て替えました。この井戸の水は現在も仕込み水に使われ、蔵も仕込み場として使われています。

明治には11代の忠利が小学校の開設や銀行・製糸会社の設立など地域の発展に関わり、1878年の明治天皇の北陸巡幸では、随行した岩倉具視が冨田家に宿泊しました。

大正期には12代の八郎が醸造の研究に励み、県外の酒どころに学んで品質向上に努めました。滋賀県内の酒品評会で七本槍がたびたび1等に選ばれ、その後「七本鎗」として商標登録され、宮内省(現在の宮内庁)の御用品にも選ばれました。八郎は伊香郡の酒の品質向上をめざして醸造試験場も設立しています。八郎のもとには、まだ福田大観と名乗っていた頃の北大路魯山人が逗留して作品を残し、その一つである「七本鎗」の篆刻の文字が、現在もラベルに使われています。この篆刻の扁額は、2018年時点で仕込み蔵の入口に掲げられています。

昭和後期には一時的な休蔵に追い込まれましたが、現当主・15代の泰伸の母、起代子が窮地を乗り越え、平成に入って泰伸が後を継ぎました。泰伸は1974年生まれで、大学卒業後に企業勤務を経て、2002年に蔵に入りました。泰伸は造る酒をほとんど純米造りに切り替えました。長らく能登杜氏に現場を任せてきた蔵でしたが、経営者が自ら蔵に入って酒を醸すオーナー杜氏の蔵へと改めています。2005年には海外輸出を始め、2010年には製造責任者に就任しています。2016年には、蔵に残る古材や地域材を使い伝統工法で仕込み蔵を増築しました。

酒造りの特徴

七本鎗の酒造りは「地」にこだわり、水と米を地元に求めています。仕込み水は、蔵内にある深さ18メートルの井戸から汲み上げる地下水です。井戸は1769年に掘り替えられたもので、約250年同じ井戸を使っています。大学との共同調査では、この井戸水が約35〜40年かけて地中を移動して届くことが分かり、起源は、蔵の東に連なる伊吹山地の己高山をはじめとする山々に降った雨や雪解け水です。水質は清澄で均整のとれた中軟水です。

米は、湖北に圃場をもつ提携農家5軒を中心に、滋賀県産を使っています。2018年時点では、使う米の99パーセントが滋賀県産でした。玉栄・山田錦・吟吹雪・滋賀渡船6号などを品種ごとに単一で仕込み、ブレンドはしていません。玉栄は蔵の主体となる品種で、45パーセント精米から80パーセント精米まで幅広く用います。2004年からは、米をあまり削らない低精白の酒造りにも取り組んでいます。2010年には農家と共に無農薬栽培米での酒米作りを始め、無農薬米で醸した酒に「無有(むう)」と名付けました。

製法でも、昔の姿を現代に引き継いでいます。2018年に生酛造りを復活させ、天然の乳酸菌の働きで酒母を育てています。木桶仕込みも行い、最後の桶職人に桶を依頼して始めました。木桶仕込みの酒には「木ノ環(きのわ)」と名付け、玉栄を60パーセントまで精米して仕込みます。生酛で仕込む「木ノ環 生酛 木桶仕込」もあり、生酛ならではのコクにほのかな木の風味が加わります。熟成酒にも力を入れており、2010年から山廃仕込みの「琥刻(ここく)」を造っています。

2013年から蔵付きの天然酵母、2021年から生酛造りへと変わり、その年に出会った米・水・微生物だけで醸す年号入りの酒です。2018年の時点では、搾った酒はうま味を残すために濾過せず、麹室を改装して麹づくりを丁寧にし、搾り機を5度の冷蔵庫に入れて低温で搾っていました。泰伸が目指すのは、うま味がたっぷりあって背骨に酸があり、すっと切れる酒です。同じ時点で製造量は約1000石、そのうち約9パーセントを米国を中心に13か国へ輸出していました。

全国新酒鑑評会では、平成14酒造年度以降に限っても4回入賞し、うち金賞は平成16酒造年度と平成18酒造年度の2回です。入賞は平成15酒造年度と平成20酒造年度にもあります。フランスのKura Masterでは、2017年に純米部門で純米原酒14が金賞を受賞しました。2018年には純米酒部門で純米 渡船がプラチナ賞を受け、さらに審査員賞にも選ばれています。2020年には純米酒部門で純米無有が金賞を受賞しました。

また、2023年のIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)では、木ノ環 生酛 木桶仕込が純米酒部門の滋賀県のトロフィーを受賞しています。

代表銘柄

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七本鎗

七本鎗は、賤ヶ岳の戦いで秀吉を勝利に導いた若武者たち「賤ヶ岳の七本槍」にちなむ銘柄です。ラベルの文字は、蔵に逗留した北大路魯山人の篆刻をもとにしており、その扁額は蔵に掲げられています。定番の純米酒は滋賀県産の玉栄で仕込み、純米大吟醸から低精白の純米、無農薬米の無有、木桶仕込みの木ノ環、熟成酒の琥刻まで幅広く揃います。米の個性を生かした、うま味とキレのある酒を目指しています。

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見学・購入

蔵見学
なし
直売所
木之本の北国街道沿いにある冨田酒造の店舗(営業時間9時〜17時・不定休)
補足
酒蔵の見学は受け付けていません。木之本の街道沿い、JR木ノ本駅から徒歩約7分の場所にある店舗は、9時から17時まで営業し、不定休です。店の入口は1744年築の建物にあり、七本鎗のステンドグラスが窓にはめられています。

見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。

蔵の基本情報

所在地
滋賀県長浜市木之本町木之本1107
創業
1534年
公式サイト
www.7yari.co.jp

出典

sakenomy.jp / yagu.jp / wikipedia.org / discoverjapan-web.com / hellolife.jp / kitabiwako.jp / nippon.com / 7yari.co.jp / watobi.jp / saketime.jp / kuramaster.com / tanoshiiosake.jp / nta.go.jp / nrib.go.jp

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