竹内酒造
代表銘柄:近江万葉・香の泉・唯々
滋賀県
SHIGA
1872年創業
明治5年(1872年)創業。かつて東海道五十三次の宿場町として栄え、「石部の酒」で知られた滋賀県湖南市石部に位置する老舗酒蔵です。比叡おろしが吹く冬の寒冷な気候、鈴鹿山麓の伏流水、そして肥沃な土地で育まれた近江米(玉栄、吟吹雪、渡船など)という恵まれた自然環境を生かし、伝統の手造りによる酒造りを継承していました。
代表銘柄には、地元で長年親しまれてきた地酒「香の泉」や「近江万葉」、近江米にこだわり純米酒ならではの美味しい味わいを追求した食中酒「唯々(ただただ)」、「明尽」などがあります。全国新酒鑑評会での金賞受賞実績や日本酒ベースのフルーツリキュールの展開など、伝統を守りながら多様なニーズに応える挑戦も続けていました。2024年12月に酒造免許が取り消され、事実上廃業しています。法人は存続し、2025年10月に本店を大津市へ移転しました。
竹内酒造の歩み
竹内酒造は、明治5年(1872年)に、東海道の宿場町として栄えた石部で創業した酒蔵です。創業の地は、現在の湖南市石部にあたります。石部は「京立ち石部初泊まり」と言われ、京を発った旅人が必ず立ち寄る宿場でした。旅先で数々の酒を飲み比べた旅人の間で「石部の酒」の評判が高まり、あまりの美味しさに人には教えたくないと、「語らずの酒」と呼ばれて本陣でも重宝されたと語り継がれています。会社としての設立は昭和25年(1950年)です。
地元で長く親しまれてきた銘柄が「香の泉」です。2014年ごろには、後継者がいなくなっていた竹内家の先代から、酒販店や飲食店を営んでいた武石恭芳さんが会社を受け継ぎ、代表取締役となりました。杜氏は中村尚人さんで、石川県の鹿野酒造で農口尚彦杜氏のもとで学び、岐阜県の蔵で杜氏を務めたのち、竹内酒造に移りました。2018年12月の時点で、竹内酒造での造りは4年目でした。蔵は食事を引き立てる食中酒を日本酒の本質と考え、「基本に忠実に、ブレずに良いものを造る」を信条としていました。
全国向けの銘柄「唯々」は、2018年の数年前に発表されています。
全国新酒鑑評会では、平成14酒造年度以降だけで17回入賞し、そのうち金賞は9回です。平成15・16・17酒造年度は3年続けて金賞で、平成20酒造年度と平成23酒造年度も金賞でした。平成27酒造年度から平成30酒造年度までは4年続けて金賞を受けています。いずれも商標「香の泉」での出品です。金賞以外の入賞は、平成19・21・22・24・25酒造年度と、令和元・2・5酒造年度でした。令和元酒造年度はこの鑑評会で金賞が選ばれなかった年で、竹内酒造は入賞でした。
2017年の第113回能登杜氏自醸清酒品評会では、吟醸部門で第3位となり、石川県酒造組合連合会長賞を受けています。全国燗酒コンテストでは、2019年にお値打ちぬる燗部門で「香の泉 鳳紋」が最高金賞に選ばれました。2020年はプレミアム燗酒部門で「唯々 山廃純米大吟醸 火入」が金賞です。2022年は「香の泉 鳳紋」(お値打ちぬる燗部門)、「香の泉 金紋」(お値打ち熱燗部門)、「唯々 山廃純米大吟醸 火入」(プレミアム燗酒部門)の3点が金賞を受けました。
2023年にはプレミアム燗酒部門で「唯々 生酛純米大吟醸」が最高金賞、お値打ち熱燗部門で「香の泉 鳳紋」が金賞でした。大阪国税局の清酒鑑評会では、令和3年度に、令和2酒造年度に造った吟醸酒「香の泉」が優秀賞を受けています。
2018年は新しい取り組みが続いた年でした。8月8日に日本酒ベースのフレーバースパークリング「8泡美人」を発売し、10月4日には大阪駅前第2ビルの地下1階に、蔵の直営店「立ち飲み割烹 竹内酒造」を開きました。常時20種類以上の日本酒をそろえ、一杯200円(90ml)からという店でした。この年の仕込みからは、山廃造りにも取り組み始めています。2022年には創業150周年を迎え、限定ラベルの「150周年記念 特別純米酒」と「150周年記念 特撰大吟醸」を発売しました。
同じ年の12月には、生酛造りの山卸しを手伝う人を募り、杜氏や蔵人と一緒に酒造りを体験する機会を設けました。
2023年2月のM&Aで経営体制が変わりましたが、その後は各種経費の滞納が起きるなど、経営の混乱が続きました。2024年12月に酒造免許が取り消され、2025年2月の報道の時点では小売業の免許は続いていたものの、酒造会社としては事実上の廃業となりました。創業から150年あまり続いた竹内酒造の酒造りは、ここで幕を閉じました。法人は存続しており、2025年10月に本店の所在地は湖南市から大津市へ移っています。
酒造りの特徴
酒造りの土台は、比叡おろしと呼ばれる寒気が吹く近江盆地の気候と、鈴鹿山麓から通じる伏流水でした。酒米は滋賀県内産の玉栄・吟吹雪・渡船などが中心で、吟吹雪は玉栄と山田錦の血を引く滋賀県産の品種です。「契約篤農家米特別純米酒」では、近江八幡市の大中之湖干拓地で、完熟した堆肥だけを肥料に契約栽培された玉栄を60%まで磨いています。「金紋」は地元の近江米100%の酒で、「唯々 豊潤純米」には滋賀県産の日本晴を使いました。
「唯々 純米大吟醸」(精米歩合45%)や「明尽」の山田錦40には、兵庫県特A地区産の山田錦を使っていました。
蔵の方針は、蒸し米、麹づくり、酒母づくり、仕込みまで、すべて手作業で行い、蔵人が一滴ずつ造り上げることでした。杜氏の中村尚人さんは、師匠の農口尚彦さん直伝の麹造りを重んじ、洗米と浸漬がきちんとできていなければ良い麹にはならないと話していました。「唯々」では、米の特徴に合わせて麹の造り方を変え、米の個性を引き出していました。2018年の仕込みからは山廃造りを始め、のちには「唯々 山廃純米大吟醸」や「唯々 生酛純米大吟醸」も造られています。
生酛の山卸しは、櫂棒で桶の中の蒸し米と麹をすり潰す作業で、手間がかかるため行う蔵が少なくなっていると、蔵自身が説明していました。
商品は、晩酌向けの普通酒から大吟醸まで幅広くそろっていました。普通酒は、さらりとした口当たりの上撰「鳳紋」と近江米100%の「金紋」で、香の泉の中心です。本醸造の「一番しずく」は、新酒のあらしぼりを氷温貯蔵し、しぼりたての香りをそのまま瓶詰めした原酒です。大吟醸には「天醸」のほか、全国新酒鑑評会に出す酒のように、コストを度外視して醸した「特撰 大吟醸」がありました。「唯々 渡船」は、山田錦の祖先にあたる酒米の渡船で仕込んだ純米酒です。
リキュールも、蔵の個性のひとつでした。「柚子の酒」は四国産の柚子だけを使い、完熟した柚子玉を低い圧力でやさしく搾って、1リットルあたり約13〜14個分の果汁を合わせています。「マンゴーの酒」にはインド産のアルフォンソ・マンゴー、「日向へべすのおいしいお酒」には宮崎県日向産のへべす、「果恋なすもも」には国産のすももを使い、いずれも近江米100%で仕込んだ日本酒と合わせていました。「8泡美人」は、レモンジンジャーとサクラの2種類があった、アルコール度数6度の日本酒ベースのスパークリングです。
代表銘柄
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近江万葉
近江万葉(おうみまんよう)は、香の泉と並ぶ竹内酒造の日本酒の銘柄です。2013年ごろの会社案内では、限定醸造・特約店限定販売の見出しの下に、琵琶湖夢心地、明尽とともに並んでいました。日本酒造組合中央会の蔵元情報でも、香の泉と並ぶ竹内酒造の銘柄として名を連ねていました。2024年12月に酒造免許が取り消され、竹内酒造としての酒造りは終わっています。
香の泉
香の泉は、石部で長く親しまれてきた竹内酒造の地酒です。普通酒の上撰「鳳紋」や、近江米100%の「金紋」を中心に、本醸造、大吟醸の「天醸」、純米酒まで幅広くそろっていました。杜氏の中村尚人さんは、普通酒を軸に地元に親しまれた味を守る銘柄と位置づけていました。全国新酒鑑評会の金賞はすべてこの商標で、全国燗酒コンテストでは「鳳紋」が2019年に最高金賞、2022年と2023年に金賞を受けています。
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唯々(ただただ)は、難しい理屈を抜きに、ただただ美味しく味わってほしいという願いから名づけられた、全国向けの銘柄です。食中酒を目指し、滋賀県産の玉栄・渡船・吟吹雪などを使い、米に合わせて麹の造り方を変えていました。山田錦の純米大吟醸や、山廃、生酛の純米大吟醸もありました。全国燗酒コンテストでは「山廃純米大吟醸 火入」が2020年と2022年に金賞、「生酛純米大吟醸」が2023年に最高金賞を受けています。
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明尽(みょうじん)は、取扱店を絞った特約銘柄で、純米大吟醸を柱にした銘柄です。兵庫県特A地区産の山田錦を40%まで磨いた「山田錦40」をはじめ、火入れや無濾過生原酒など、いくつかの仕様がありました。名は、蔵人が技と時間を酒に注ぎ尽くし、明かりを目指すという思いから付けられたものです。
見学・購入
- 蔵見学
- なし
- 補足
- 2024年12月に酒造免許が取り消され、現在は酒造りを行っていません。かつては2022年12月に生酛造りの山卸し体験を募集し、2023年3月の酒蔵めぐりでは、山田錦40%磨きの大吟醸を斗瓶ごと販売する企画を用意していました。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 滋賀県湖南市石部中央1-5-46
- 創業
- 1872年
- 公式サイト
- takeuchishuzo.co.jp
出典
sakenomy.jp / japansake.or.jp / sakeworld.jp / compalyze.co.jp / wikipedia.org / sake-times.com / maetani.biz / sakagura-press.com / takeuchishuzo.co.jp / kyoto-np.co.jp / houjin-bangou.nta.go.jp / ja.wikipedia.org / nrib.go.jp / kansake.jp / nta.go.jp / saketime.jp / meitenbanzai.com / sakenomoto.jp / jizakenomarushin.com
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