増田徳兵衛商店
代表銘柄:抱腹絶倒・月の桂・平安京
京都府
KYOTO
1675年創業
1675年(延宝3年)に京都伏見で創業した、同地区で最も古い歴史をもつ酒蔵のひとつです。かつては米屋の営みや公家の中宿も務めました。銘柄「月の桂」は江戸時代に公家の綾小路有長が詠んだ歌に由来し、多くの作家や墨客に愛されたことから「文人の酒」とも呼ばれています。酒造りでは季節性と個性を重視し、1964年には日本初となる「スパークリングにごり酒」を発明したほか、翌年には甕による長期熟成の「純米大吟醸古酒」の貯蔵を開始するなど、新たなジャンルを開拓した元祖蔵元として知られます。
近年では地元京都産の酒米「祝」の復活や無農薬栽培に取り組み、低アルコール純米酒「抱腹絶倒」や、祝米を使用した純米大吟醸「平安京」を手掛けるなど、伝統の技術と現代的な感性を融合させた酒造りを続けています。
増田徳兵衛商店の歩み
増田德兵衞商店は、延宝三年(1675年)に京都・伏見で創業しました。創業当初は「増田德兵衞」という酒屋と「米屋弥兵衞」という米屋の二つの屋号で商いを営み、伏見の中でも特に古い歴史を持つ蔵のひとつに数えられています。蔵と母屋は、平安京の造営に伴って羅城門からまっすぐ南へ延びる鳥羽の作り道に面しており、江戸時代後期には京都から西国へ向かう公家の中宿を務めるようになりました。
ご縁のあった公家の綾小路有長は、「かげ清き月の嘉都良の川水を夜々汲みて世々に栄えむ」という歌を詠み、この歌にちなんで蔵の酒は「月の桂」と名付けられました。
1868年の鳥羽伏見の戦いでは蔵が戦火に見舞われましたが、現在の場所で再興を果たしました。株式会社としての設立は昭和28年(1953年)で、創業からおよそ280年を経てのことです。明治以降は谷崎潤一郎や永井荷風、小津安二郎といった文人や芸術家にも「月の桂」が愛され、「文人の酒」とも呼ばれるようになりました。蔵には代々にわたって集められた酒器や古文書、浮世絵などが今も大切に残されています。当主の名は代替わりのたびに「増田德兵衞」へと引き継がれ、姓名そのものが家督とともに受け継がれていく点も、この蔵の伝統のひとつです。
増田德兵衞商店の名を広く知らしめたのが、昭和39年(1964年)に13代目が世に送り出した「月の桂 大極上中汲にごり酒」です。醸造学の権威として知られた坂口謹一郎博士から「どぶろくのような酒をみんなで飲みたい」という声が寄せられたことをきっかけに、先代と杜氏が知恵を絞り、粗い笊でもろみを漉して瓶詰めする製法を編み出しました。熱による殺菌を行わないため瓶の中で発酵が続き、きめ細かな泡が立つスパークリングのにごり酒として仕上がり、坂口博士からも元祖にごり酒との評価を受けています。
この年をきっかけに「月の桂にごり酒会」という会員制の集まりも生まれ、関西や関東で今なお開かれ続け、その回数は1500回を超えています。
にごり酒とあわせて増田德兵衞商店のもうひとつの顔となっているのが、長期熟成させた古酒です。蔵に伝わる元禄年間刊行の古書「本朝食鑑」に古酒についての記述を見つけた先代が、磁器の甕を使った長期貯蔵に着手しました。屋根裏で静かに眠り続ける甕の中には、半世紀を超えて熟成を続けているものもあります。近年では2022年に、当時29歳の増田醇一氏が代表取締役社長に就任し、先代である14代目の増田德兵衞氏は代表取締役会長として蔵を支える立場に回りました。
若い世代への早期の継承は、伝統を守りながら酒蔵の未来を切り拓こうとする姿勢の表れといえます。
品質面でも評価を積み重ねており、全国新酒鑑評会では平成21酒造年度から令和4酒造年度までに入賞を6回果たしており、平成26〜28酒造年度は3年連続での入賞です。平成29年度には大阪国税局清酒鑑評会の吟醸酒部門でも優秀賞を受賞しており、伝統の技が数字の上でも裏付けられています。
酒造りの特徴
月の桂の酒造りは、季節感と個性を大切にすることを軸としています。醸造設備の進歩によって一年を通じた仕込みも珍しくなくなった今も、増田德兵衞商店では厳冬期のみに絞って手造りでの仕込みを続けています。米や水、酵母といった自然由来の素材が持つそのときどきの個性を生かし、同じ酒質を均一に量産するのではなく、酒そのものだけでなく酒器や料理、伝統行事、芸術といった酒をとりまく文化とのかかわりも大切にしながら、蔵ならではの世界観を追求しています。
看板であるにごり酒は、加熱殺菌をせずに搾ったもろみをそのまま瓶詰めする活性生にごり酒で、瓶の中で発酵が進むことで生まれる細かな泡が特徴です。低アルコール酒への取り組みも早く、発酵を8%の段階であえて止めることで軽やかな飲み口に仕上げた原酒を、加水することなく手がけています。通常のおよそ倍の量の米を溶かし込むことで、度数を抑えながらも味わいが薄くならないよう工夫されています。
原料米にも独自のこだわりがあり、京都で生まれた酒造好適米「祝」を地元伏見の農家と契約し、無農薬栽培で育てています。祝米は精米を進める吟醸酒造りに適した品種で、京都の水と合わせることできめ細やかで柔らかなふくらみのある味わいをもたらします。地元の農家との田植えには蔵元自らが35年にわたって携わっており、米づくりの段階から酒質に向き合う姿勢を貫いています。
代表銘柄
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抱腹絶倒
「抱腹絶倒」は、アルコール分をあえて8%に抑えた低アルコールの純米酒です。度数を下げるための加水は行わず、発酵を8%の段階でとどめて仕上げた原酒で、通常のおよそ倍の量の米を溶かし込むことで、軽やかさと物足りなさのなさを両立させています。原料米には京都オリジナル品種「京の輝き」を用い、精米歩合は60%です。キリリと冷やすとシャープな酸味と滑らかな丸みが調和し、日本酒らしからぬ軽快な飲み口が楽しめます。
月の桂
「月の桂」は、増田德兵衞商店を代表するブランド名で、江戸時代に公家の綾小路有長から贈られた和歌にちなんで名付けられました。看板となっているのは、熱殺菌をせずに瓶詰めし、瓶内での発酵によって細かな泡を生む純米にごり酒で、米のシャンパンとも称されています。にごり酒のほか、磁器の甕で長期熟成させた古酒や、京都産の酒米「祝」を用いた純米大吟醸まで、季節感と個性を大切にした幅広いラインナップを展開しています。
楽天で商品を見る平安京
「平安京」は、増田德兵衞商店が地元伏見の農家との契約栽培によって育てた京都産の酒造好適米「祝」を100%使用し、数量を限って仕込んでいた純米大吟醸です。祝米ならではのきめ細やかで柔らかなふくらみのある味わいに、京都の水がもたらす上品な甘みが重なり、古都の名にふさわしい気品ある一本として親しまれてきました。2026年2月に終売となり、同じ「祝」を40%まで磨いた「純米大吟醸 祝40」がその後継として発売されています。
見学・購入
- 蔵見学
- なし
- 直売所
- 蔵元や公式オンラインショップのほか、伏見や京都市内の酒販店でも取り扱われています。
- 補足
- 毎年春には「春の蔵開き」を開催しており、搾りたての新酒の有料試飲や、蔵開き限定の酒・酒粕の販売が行われます。にごり酒を囲む会員制の「月の桂にごり酒会」も、関西や関東で長年にわたり続けられています。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 京都府京都市伏見区下鳥羽長田町135
- 創業
- 1675年
出典
sakenomy.jp / tsukinokatsura.co.jp / fushimi.or.jp / kyoto-kankou.or.jp / pref.kyoto.jp / compalyze.co.jp / s-usui.jp / jizakewine.com / jp.sake-times.com / grand-seiko.com / tanoshiiosake.jp / totteoki.kyoto.travel / nrib.go.jp / nta.go.jp
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