SAKE BREWERY — AKITA
喜久水酒造
紹介
秋田県能代市に所在する酒蔵で、前身は藩政時代(弘化年間頃)にさかのぼる麹屋です。1875年(明治8年)に初代・平澤喜三郎が酒造業を創業し、創業当時の「喜三郎の酒」から大正期にかけて「喜久水」の名が浸透しました。
最大の特徴は、旧奥羽本線の鉄道トンネル跡地を活用した「トンネル地下貯蔵庫」での熟成です。レンガ造りで全長約100メートルあるこの貯蔵庫は、一年を通じて庫温が約12度に保たれ、2000年には国の登録有形文化財に指定されました。
地元の契約農家が育てる酒米や幻の酒米「亀の尾」などを原料に使用し、地域に深く根ざした高品質な酒造りを行っています。代表銘柄には「喜一郎の酒」「喜三郎の酒」「亀の舞」「能代」「喜久水」などがあります。
歴史
秋田県能代市に蔵を構える喜久水酒造の歴史は、江戸時代末期の弘化年間にまでさかのぼります。当初は麹屋を営んでいましたが、明治8年に初代・平澤喜三郎が酒造業を興し、地元の人々からは長く「喜三郎の酒」の名で親しまれてきました。喜久水という名称が定着したのは大正時代に入ってからのことで、以来、能代を代表する蔵として歩みを続けています。歴代の当主は「喜三郎」の名を襲名しており、現在は六代目蔵元・平澤喜三郎氏のもとで、息子である七代目の平澤喜一郎氏が造り手として酒造りの中心を担っています。
蔵の代名詞となっているのが、旧奥羽本線の鉄道トンネルを転用した地下貯蔵庫です。このトンネルは明治33年に竣工した秋田県内でも最初期の鉄道トンネルで、鶴形駅と富根駅の間に位置していました。複線化に伴って昭和48年に役目を終えた後、平成8年に喜久水酒造がJRから譲り受けて酒の貯蔵庫に改装し、煉瓦造りで全長93メートルにおよぶこの施設は、平成12年に国の登録有形文化財に登録されました。庫内は一年を通じて12度前後に保たれており、四季の緩やかな移ろいの中で酒をじっくりと熟成させています。
長い歴史を持つ喜久水酒造も、近年は厳しい経営環境にさらされました。日本酒離れによる売上減少に加え、新型コロナウイルス流行による業務用需要の落ち込みや原材料価格の高騰が重なり、令和6年10月31日には事業を停止し、破産の準備に入る事態となりました。しかし同年12月には破産手続きが中止され、地域の酒蔵として存続する道が探られることになりました。
能代の酒蔵を地域の財産として残したいという思いから、地元で80年の歴史を持つ建設会社・中田建設が令和7年秋に経営支援を決断し、事業を引き継ぐことになりました。これを受けて令和8年1月には仕込み作業が再開され、新たな体制のもとで酒造りが動き出しました。同年4月8日から5月31日にかけては、蔵のPRやブランディングを目的としたクラウドファンディングが実施され、目標を大きく上回る支援が全国から寄せられました。そして6月6日には能代市内の旧料亭「金勇」で再建後初となる新酒のお披露目が行われ、支援者や地元関係者らとともに蔵の新たな船出が祝われました。
酒造り
日本酒は、蒸した米に麹菌を加えて糖化させ、そこに酵母を加えて発酵させるという工程を経て造られます。喜久水酒造でも、初添え・中添え・留添えと三段階に分けて仕込む三段仕込みを基本とし、丁寧な酒母造りから醪の管理まで手間をかけた酒造りを行っています。同蔵では平成元年から「醸蒸多知(かむたち)修行」という体験制度を設け、12月から3月の仕込み期間中、希望者が1週間ほど蔵に泊まり込んで杜氏とともに酒造りに携わる取り組みを続けてきました。
仕込んだ酒の一部は、旧鉄道トンネルを利用した地下貯蔵庫でじっくりと熟成されます。温度変化の少ない環境の中で酒質が穏やかに整えられ、まろやかな味わいが引き出されるのが特徴です。原料米には、栽培が一時途絶えていた酒米「亀の尾」を能代市常盤の田で復活させて使うなど、地元産の米にこだわった酒造りにも力を注いでいます。
喜久水酒造は、全国新酒鑑評会において高い評価を積み重ねてきた蔵でもあります。平成17酒造年度から24酒造年度までの8年連続で金賞を受賞したほか、平成28・29酒造年度にも金賞に輝き、これまでに計10回の金賞受賞歴を誇ります。平成29酒造年度に金賞を受賞した大吟醸は、亀の尾を40%まで磨き込んだ一本で、こうした技術の蓄積が令和8年に再開された酒造りにも受け継がれています。新体制のもとでは酒米や酵母、蔵人の顔ぶれも一新され、令和8年6月には新酒7種が披露されました。
蔵データ
代表銘柄
- 喜一郎の酒
- 喜三郎の酒
- 亀の舞
- 能代
- 喜久水
喜一郎の酒:「喜一郎の酒」は、七代目蔵元・平澤喜一郎氏の名を冠した特別純米酒です。酒米を58%まで磨き、米・米麹・水だけで丁寧に仕込まれています。さわやかな飲み口とほのかな含み香が持ち味で、食事にもよく合う一本です。喜一郎氏が造り手として腕を磨くごとに、味わいも育っていくことが期待されている銘柄です。
喜三郎の酒:「喜三郎の酒」は、喜久水という名がまだ広まっていなかった明治の頃、能代の港町で「平沢喜三郎商店」の酒として地元の人々に親しまれていた銘柄にちなみます。当時の酒は米・米麹・水のみで造る純米酒で、大工の一日の手間賃が一升瓶一本分だったといわれる時代の味を今に伝えようと、あらためて醸し直された純米吟醸酒です。
亀の舞:「亀の舞」は、栽培用の種もみが一度は絶えてしまった幻の酒米「亀の尾」を、能代市内の田で復活栽培して仕込む純米吟醸酒です。コシヒカリなど人気品種の親にあたるこの米を蘇らせ、喜久水の代表銘柄に育て上げました。精米歩合を70%まで抑えた純米酒「陸亀 亀の舞」では、すっきりとした味わいと米本来の香りの良さが楽しめるなど、亀の尾の個性を生かした造り分けもされています。
能代:「能代」は、地名を冠して能代の風土や歴史を映した一連の銘柄です。源氏物語にちなんだ名を持ち佐竹藩ゆかりの家紋をあしらった大吟醸や、能代に数多く残る縄文遺跡にちなんだ吟醸酒など、それぞれの酒に土地の物語が込められています。旧鉄道トンネルの地下貯蔵庫で熟成させた酒も名を連ね、能代という土地と蔵の歩みを一本一本で表現するシリーズになっています。
喜久水:「喜久水」は大正時代に定着した蔵の代表銘柄で、雪深い能代の冬にちなむ「寒仕込」や「雪降仕込」など、地元で長く飲み継がれてきた定番の酒です。令和6年の事業停止という苦難を経て、令和8年には地域の支援を受けて造りが再開され、蔵の再出発を象徴する名としてあらためて歩みを始めています。
見学・購入
再開後の喜久水の酒がどの範囲で取り扱われているかについては、確認できる出典が見当たりません。購入を希望する場合は、能代市の産業案内などに掲載されている蔵の連絡先(電話0185-52-2271)に直接問い合わせるのが確実です。
事業停止前は、事前予約制で無料の蔵見学が行われており、酒蔵は所要1時間から1時間30分程度、地下貯蔵庫は20分ほどの見学が案内されていました。令和8年に酒造りが再開されて以降、見学の受け入れ状況を示す最新情報は確認できていません。なお、蔵のPRやブランディングを目的に行われたクラウドファンディングでは、旧鉄道トンネルの地下貯蔵庫をめぐる特別見学ツアーが支援者向けのリターンとして設定されました。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
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出典
osake.or.jp / japansake.or.jp / wikipedia.org / noshiro.lg.jp / sakenomy.jp / kikusuisyuzo.com / jizake.or.jp / city.noshiro.lg.jp / online.bunka.go.jp / nrib.go.jp / sakigake.jp / hokuu.co.jp / fukeiki.com / camp-fire.jp / news.bish300.com / sakenopage.com / ja.wikipedia.org
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