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熊屋酒造

代表銘柄:伊七・備前伊七

岡山県

OKAYAMA

1716年創業

熊屋酒造は、江戸中期の1716(享保元)年に当主3代目の庵谷伊七によって創業された、現存する中で岡山県倉敷市最古の歴史を持つ蔵元です。北側を岡山県指定史跡の日本第一熊野神社、南側を山伏修行の寺である修験道総本山五流尊瀧院に挟まれた地に蔵を構えています。

酒造りの仕込み水には、修験道の修行場でもある蔵の裏山から湧き出る地下水(霊水)を100%使用し、発酵を促すやや硬水と繊細な味わいを生む軟水を工程に応じて使い分けています。酒米には岡山県産の「雄町」「朝日米」や「山田錦」などを厳選し、伝統的な手作業と南部杜氏の醸造技術により丁寧に醸されています。

「口の中で最初に広がるお米の旨みと、潮が引くような後味のキレの良さ」を持った飲み飽きしない酒造りを目指しており、創業者の名に由来する代表銘柄「伊七」や「備前伊七」などを製造しています。受賞歴としては、広島国税局清酒鑑評会で平成19年から25年まで7年連続を含む計15回の優等賞を受け、全国新酒鑑評会でも平成30酒造年度以降に4回金賞を受賞しています。

熊屋酒造の歩み

熊屋酒造は、享保元(1716)年に創業した倉敷市の酒蔵で、市内に現存する酒蔵では最も古い歴史を持ちます。蔵元の庵谷(いほりや)家はもともと紀州熊野の出身で、熊野神社の社殿の造営や修繕の仕事のために、現在の倉敷市にあたる児島の地へ移り住んだ家です。移住後は代々米作りを営み、庵谷家の3代目当主にあたる庵谷伊七が、屋号を「熊屋本家」として酒造りを始めました。屋号の「熊」の字は、すぐそばの熊野神社から一文字を取ったものです。

近くの分家の味噌醸造元から醸造の方法を学び、自分の畑で採れた米で酒を造り始めたことが、米作りから酒造りへ進むきっかけだったと蔵に伝わっています。

蔵のある林の地は、熊野神社への参詣道や、金毘羅宮と由加山を結ぶ「両参り」の街道が通る宿場町として栄えました。蔵の北側には日本第一熊野神社、南側にはかつて熊野修験道の重要な道場だった五流尊瀧院があります。この二つは、奈良時代に紀州の熊野権現を勧請した一つの聖地でしたが、明治時代の神仏分離令で神社と寺に分かれました。明治に入ると、日清戦争など戦争の影響で酒の需要が高まり、造った酒がすべて売れるほどの忙しさでした。

明治30(1897)年には社名を「熊屋本家酒造」とし、熊野神社に多くの参拝客が訪れた周辺の通りには、旅館や商店が建ち並んでにぎわいました。昭和に入ると戦争が再び起こり、戦時中は酒蔵で飛行機の「ゼロ戦」を造っていたと蔵に伝わっています。多くの蔵人が戦争で亡くなり、戦後に酒造りを再開する際には大変な苦労がありました。昭和30(1955)年に「熊屋酒造有限会社」として法人化し、戦後の復興と高度成長期に合わせて出荷が増えていきました。

老朽化した建物を鉄筋コンクリートの蔵に建て替え、日本で第一号となる自動しぼり機を導入したと蔵は説明しています。平成14(2002)年には日本第一熊野神社の中床が火事で焼失し、蔵に伝わる明治以前の歴史的な文献も同時に失われました。

平成12(2000)年に、14代目の庵谷晴男氏が蔵を継ぎました。兵庫県の蔵元で修業していた庵谷氏は、帰郷して実家の蔵を継ぐにあたり、基本に立ち返って酒造りを見つめ直し、創業者の名を取って銘柄を「伊七」としました。先代の社長の時代には「巴福正宗」が主力銘柄でしたが、現在は「伊七」が蔵の看板です。雄町との出会いは2000年ごろで、岡山市北部の農家から「うちの雄町、使ってみん?」と声をかけられたのが始まりでした。何度も試して微調整と失敗を重ねるうちに、蔵ならではの雄町の醸し方をつかんでいきました。

平成30(2018)年2月には、輸入ワイン商社のモトックスと共同開発した「庵」シリーズから「庵 備前雄町 純米大吟醸」を発売しました。「庵」には雄町のほか朝日米の銘柄もあります。「庵 備前雄町 純米大吟醸」は、雄町を原料にした酒の品評会「雄町サミット」で、令和元年に初めて優等賞を受け、令和2年の中止をはさんで令和3年と令和4年にも優等賞に選ばれました。

「庵 備前雄町 純米大吟醸 原酒 磨き三割八分」は、フランスのパリで開かれる日本酒コンクール「Kura Master 2026」の純米大吟醸酒(36-50%)部門でプラチナ賞を受賞しています。また、令和6年の第7回和酒フェス@大阪ベイタワーでは、来場者の投票で選ぶ和酒フェス大賞で、庵の3商品がそれぞれ金賞に選ばれました。

広島国税局清酒鑑評会では、平成18年に純米酒の部で入賞したのち、平成19年から25年まで7年連続で優等賞を受け、令和7年までに優等賞は計15回を数えます。平成22年には本醸造の「福正宗」も優等賞に選ばれました。全国新酒鑑評会(酒造年度で数えます)では、平成17、18、19酒造年度と、平成28酒造年度から令和7酒造年度までの10年連続を合わせて、13回入賞しています。そのうち金賞は、平成30酒造年度、令和3酒造年度、令和4酒造年度、令和6酒造年度の4回で、受賞酒はいずれも商標「伊七」の大吟醸です。

平成30酒造年度の金賞は令和元年5月に発表されました。このほか、平成22年には岡山県酒造組合の新酒品評会で、吟醸酒部門と純米酒部門の両方で入賞しています。

酒造りの特徴

仕込みに使う水は、蔵の裏山から湧き出る地下水です。敷地内には二つの大きな井戸があり、地下50〜60メートルから湧く伏流水を汲み上げています。水脈が違うため水質も異なり、やや硬水(硬度4.5)は発酵力を高めるために酛仕込みに、軟水(硬度2.6)は醪造りに使い分けています。いずれも地下水を100パーセント使用しており、酒造りの時期には裏山から冷たい風が吹き下ろします。

原料米は、雄町をはじめ、山田錦や岡山県産の朝日米などを銘柄ごとに使い分けています。雄町は晩稲で背が高く倒れやすいため栽培が難しい酒米ですが、蔵は貴重な備前雄町を契約農家から安定して確保しています。「庵」の純米大吟醸と純米吟醸には、旧赤磐地区に隣接する土地に圃場を構える契約農家の優良米を使います。蔵の近くで栽培された地元の米と水で醸す限定銘柄「郷内」も手がけています。

造りは昔ながらの手作業を大切にした小仕込みで、これまで南部杜氏が仕込みを担ってきました。年間の生産量は420石です。「伊七 生もと50磨」は雄町を50パーセントまで磨いた純米吟醸の無濾過生原酒で、手間のかかる生もと造りです。「庵」は、雄町の良さを引き出すため、瓶火入れの後は出荷まで5度以下の冷蔵で瓶貯蔵しています。

目指す味は、口に含んだ最初に米の旨みが広がり、潮が引くように後味がきれいに切れる酒です。庵谷氏は派手な酒より飲み飽きしない酒を理想とし、冷やでも燗でもおいしく、食事にそっと寄り添う酒を目標に造っています。仕込みが終わると、井戸の水に手を合わせて感謝を伝えるのが蔵の習わしです。

代表銘柄

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伊七

創業者の名を受け継いだ蔵の看板銘柄です。大吟醸、山田錦100パーセントの純米吟醸「倉敷吟醸」、雄町を使う純米大吟醸や特別純米、生もと造りの純米吟醸、本醸造と品ぞろえは幅広くなっています。全国新酒鑑評会では大吟醸「伊七」が金賞を4回受賞し、広島国税局清酒鑑評会でも、平成19年から21年、平成27年と28年、令和元年、令和3年から7年に優等賞を受けています。

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備前伊七

「伊七」シリーズのうち、岡山県産の朝日米を100パーセント使った特別純米酒です。精米歩合は60パーセント、日本酒度はプラス3.0、酸度は1.3で、やや辛口に仕上がっています。冷やすとキリッとした味わいで、常温やぬる燗でも食事の邪魔をしない食中酒です。広島国税局清酒鑑評会では、平成22年から25年まで4年連続で優等賞を受賞し、令和7年にも選ばれました。

見学・購入

蔵見学
あり(要事前確認)
直売所
蔵の一角で一部商品を購入でき、試飲もできます。専用の直売店は構えていません。国内であれば発送にも対応しています。
補足
酒蔵見学は要予約で、受け入れは10人までです。予約は電話で、見学日の2週間前までに申し込みます。令和8年は、岡山県備中県民局の「おかやま備中杜氏の郷 酒蔵めぐり2026」の掲載蔵にもなっています。毎年2月の第2日曜日には「新酒まつり」が開かれ、令和8年は2月8日に行われました。寒しぼりの限定酒の販売や有料の試飲コーナー、屋台が出て、毎年多くの人でにぎわいます。

見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。

蔵の基本情報

所在地
岡山県倉敷市林705
創業
1716年

出典

okasake.com / kojima-sanpo.jp / 41sake.com / mottox.co.jp / okayama-kanko.jp / city.kurashiki.okayama.jp / maff.go.jp / sakedata.jp / kurashiki-tabi.jp / okayamastyle.com / nta.go.jp / nrib.go.jp / sakenomy.jp / ksb.co.jp / houjin-bangou.nta.go.jp

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