酔心山根本店
代表銘柄:酔心・橅のしずく
広島県
HIROSHIMA
1860年創業
広島県三原市に位置する株式会社醉心山根本店は、万延元年(1860年)に創業した老舗酒蔵です。明治時代半ば頃に約20種あった銘柄を統一し、「醉心(すいしん)」が誕生しました。大正期には協会3号酵母が分離された歴史を持ち、全国酒類品評会で名誉賞を受賞したほか、日本画の巨匠・横山大観が終生愛飲した酒としても知られています。
造りの大きな特徴は、ブナの原生林を水源とする水などの超軟水を用いた「超軟水仕込み」です。良質な山田錦などの酒米と伝統の技術を用いて、「辛口にして甘露」と評される、味と喉ごしの良さを兼ね備えた日本酒を生み出しています。令和3酒造年度の全国新酒鑑評会で金賞を受賞するなど数々の実績を持ち、代表銘柄の「醉心」や、超軟水で醸す「橅のしずく(ぶなのしずく)」を展開しています。
酔心山根本店の歩み
醉心山根本店の創業は万延元年(1860年)です。尾道の山根本家から分家した初代・山根忠兵衛が三原に移り、小早川隆景が築いた三原城の城下町で永禄10年(1567年)の築城当時から300年以上にわたって酒造りを営んできた桜井家の蔵を譲り受けたことが出発点となりました。現在の本店に残る出格子やなまこ壁の意匠は、この桜井家の建物をそのまま受け継いだものです。令和3年(2021年)2月には、この本店の事務所棟と土蔵がそれぞれ国の登録有形文化財に登録されました。
瀬戸内海のほぼ中央に位置する三原は、万葉集に「吉備の酒」として詠まれ、江戸時代の書物『毛吹草』にも加賀の菊酒や博多の練酒と並ぶ銘酒として名を残す、古くからの酒どころでした。
二代目・英三の時代、地域ごとに銘を変えて売られていた20数種の酒を一本化しようと思案する中、夢枕に立った白髪の老人から「醉心(よいごころ)とすべし」と告げられたことが、統一銘柄「醉心」誕生の由来と伝わっています。当初「よいごころ」と読まれていたこの銘柄名は、評判が広がるにつれて一般に「すいしん」と呼ばれるようになりました。明治45年(1912年)には大蔵省主催の第二回全国酒類品評会で1位を受賞し、広島酒の評価を大きく引き上げています。なお株式会社としての設立は昭和25年(1950年)12月です。
大正期には中興の祖と呼ばれる三代目・山根薫が酒質と経営の両面で手腕を発揮しました。大正3年(1914年)には国税庁醸造試験所による優良酵母の分離で協会3号酵母が認められ、大正8年・10年・13年(1919・1921・1924年)の全国酒類品評会では3回連続で優等賞を受賞し、3回受賞の蔵元にのみ贈られる名誉賞もあわせて受けています。この3回連続受賞による名誉賞の授与を受けたのは、醉心だけです。
これを記念した特別銘柄「名誉醉心」を発売し、大正15年(1926年)には無審査優待の特典を受け、昭和14年(1939年)には特筆酒として全国3銘柄に選ばれ、昭和30年(1955年)には天皇陛下から賞状と木杯を賜っています。昭和初期には東京・大阪に支店を開設して関東から九州まで販路を広げるとともに、アメリカ・カリフォルニア州の日系人社会へも輸出しました。日本画家・横山大観は醉心をこよなく愛飲したことで知られ、薫との親交の中で生涯にわたり醉心を贈られ続けています。
大観が返礼として毎年寄贈した作品は、現在も本店内の「大観記念館」に収められています。
太平洋戦争後、四代目・山根卓三は薫が編み出した日本初の貯蔵法「瓶囲い」に磨きをかけ、昭和31年(1956年)に高級酒「ヤング醉心」を発売しました。麹造りや袋搾りといった手作業にこだわり、精米や設備の近代化を進めながらも、アルコール添加酒が主流となった時期にも特級酒を中心とした酒造りを貫き、卓三の堅実な経営によって「広島に醉心あり」と謳われるようになりました。昭和50年(1975年)以降の地酒ブームでは、この評判がさらに広く浸透していきました。
昭和末期から平成初期にかけて、広島県内の酒蔵が使う地下水は宅地開発や森林伐採の影響で硬度を増していきました。昭和55年(1980年)に卓三から蔵を継いだ五代目・山根秀朋と、次代を担う六代目・雄一は、あらためて軟水仕込みへの回帰を志して水脈を探し、平成12年(2000年)に広島県賀茂郡福富町(現・東広島市福富町)の鷹ノ巣山山麓に掘った井戸から、山頂にブナの原生林を戴くこの山の超軟水を掘り当て、「ブナのめぐみ」と名づけました。
この水に切り替えた直後、発表年でいう平成12年・13年・14年(2000〜2002年)の全国新酒鑑評会では、3年連続の金賞受賞を果たしています。令和5年(2023年)には、「純米大吟醸生地 名誉醉心 大粒ダイヤ米100%」がG7広島サミット パートナーズ・プログラム1日目の夕食会で提供されました。現在は六代目・山根雄一が取締役社長を務めています。
酒造りの特徴
醉心山根本店の酒造りの核となるのが、鷹ノ巣山麓に掘った井戸から汲み上げる硬度14の超軟水「ブナのめぐみ」を用いる超軟水仕込みです。ミネラル分の少ない軟水は発酵をゆっくり進めるため、酵母が香りの成分エステルを豊富に生み出し、きめ細かくふくよかな甘みとすっきりした後味を両立させた、「辛口にして甘露」と評される酒質を生みます。原料米には最高峰とされる山田錦のほか、広島県産の厳選した酒造好適米を用い、広島独自の品種である八反や千本錦を取り入れた造りにも取り組んでいます。
山田錦の産地・兵庫県三田市の栽培者組織「三田山田錦部会」との付き合いは昭和30年代前半に始まり、70年近くにおよびます。麹は「突き破精」の伝統的な造り方を守り、手作業での麹づくりや袋搾りを大切にしています。
製造は、桜井家以来の建物が残る三原市東町の本店工場と、三原市沼田東にある沼田工場の2拠点で行われています。沼田工場には「三年蔵」と呼ばれるもう一つの製造場があり、全国新酒鑑評会や広島国税局清酒鑑評会にはこの2つの名義で出品しています。三年蔵の杜氏・半田尚は、令和8年(2026年)の第109回備中杜氏組合自醸清酒品評会 市販酒部門で第1位杜氏に選ばれています。
平成14酒造年度以降では、沼田東工場と「三年蔵」の2つの名義で入賞を重ね、27点が入賞し、うち金賞は13点です。金賞は平成17・22・23酒造年度に続き、令和2酒造年度から令和7酒造年度まで6酒造年度連続で受賞しています。全国新酒鑑評会とは別に、開催年で数える広島国税局清酒鑑評会でも令和2年から令和7年まで6年連続で「吟醸酒」部門の優等賞を受けており、令和3年と令和5年には「燗酒」部門でも「醉心 軟水の辛口 純米酒」が優等賞を受賞しています。
さらに古くは、平成18・19・20年度の3年連続で「特撰本醸造名誉醉心」が同鑑評会の優等賞を受けています。
全国的なコンクールでの受賞も重ねています。「純米吟醸 醉心稲穂」は全国燗酒コンテスト2022のプレミアム燗酒部門で金賞を、「醉心 純米秘蔵酒(2001年醸造/兵庫県産『山田錦』100%)」は2021年度全国酒類コンクールで最高位賞を受賞しました。「鳳凰醉心 究極の大吟醸」はインターナショナル・ワイン・チャレンジ2017の日本酒部門で金賞を受けています。
販路は日本酒類販売や国分、岡永、伊藤忠食品など全国の酒卸問屋のほか、ロサンゼルスやサンフランシスコ、フランス、ロンドン、上海、ニュージーランド、ベトナム、シドニー、スイス、シンガポール、香港など海外にも及んでいます。
代表銘柄
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酔心
醉心は、明治半ばに20数種の銘柄を一本化して生まれた同社の中核ブランドです。軟水仕込みならではのきめ細かな口当たりと、辛口ながら旨味を残す「辛口にして甘露」の酒質を受け継ぎ、山田錦などの酒米を用いた純米酒から大吟醸まで幅広いラインナップを展開しています。横山大観が終生愛飲した酒としても知られ、大正13年の名誉賞受賞を記念した「名誉醉心」や、山田錦を30%まで磨いた「鳳凰醉心」など、歴史を受け継ぐ上級酒も揃います。
楽天で商品を見る橅のしずく
橅のしずくは、鷹ノ巣山麓の井戸から汲み上げる超軟水を100%使って醸すシリーズです。純米酒は上品な酸味をふくよかな旨味が包み込み、口当たりの柔らかい味わいに仕上がっています。デビューから8年をかけて磨いた技術をもとに、より軽やかに日常で楽しめる「白ラベル」、長期低温発酵による特別本醸造「青」に加え、20年以上かけた集大成として「純米大吟醸」も加わりました。純米大吟醸は公式オンラインショップと一部の試飲会でのみ販売されています。
見学・購入
- 直売所
- 本店(広島県三原市東町)の窓口で直接購入できます。営業時間は10時から16時まで、土日祝日と盆・正月は休業で、駐車場は5台分あります。JR三原駅から徒歩10分の距離です。
- 補足
- 横山大観から寄贈された作品などを収めた「大観記念館」が本店内にあります。昭和26年(1951年)に三代目・山根薫の意向で創設され、大観の作品30点以上のほか、河合玉堂や菱田春草の作品も収蔵し、3年に1度、文化の日に一般公開されています。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 広島県三原市東町1-5-58
- 創業
- 1860年
出典
japansake.or.jp / kuramotokai.com / sakenomy.jp / meimonshu.jp / mihara-kankou.com / dive-hiroshima.com / suishinsake.co.jp / suishinyamane.com / e-suishin.net / nrib.go.jp / nta.go.jp / kunishitei.bunka.go.jp
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