井上酒造
代表銘柄:角の井・角ノ井
大分県
OITA
1804年創業
大分県日田市にて文化元年(1804年)に創業した老舗蔵元です。代表銘柄「角の井」は明治4年(1871年)から親しまれている清酒で、その名は蔵の敷地内に湧く四角い井戸に由来します。また、日本銀行総裁や大蔵大臣を歴任した井上準之助の生家としても知られています。仕込み水には、英彦山系を分水嶺とする耶馬渓層で自然ろ過されたミネラル豊富な湧水を使用しています。日田盆地特有の寒冷な気候を生かした並行複発酵により、まろやかで旨口の酒を造り出しています。
「酒は米から」という考えのもと、蔵人自らが仕込み水を用いて酒米を育てる自社栽培に取り組んでいる点も大きな特徴です。伝統を受け継ぐ一方で、7代目杜氏井上百合氏による「百合仕込み」や麦焼酎「初代百助」なども展開しており、「初代百助」は熊本国税局酒類鑑評会などで高い評価を受けています。
井上酒造の歩み
井上酒造は文化元年(1804年)、現在の大分県日田市大肥にあたる、当時の日田郡大鶴村で酒造りを始めました。目の前を大肥川が流れ、周囲を山々が囲む土地で、創業者の井上徳次は敷地内に湧く四角い井戸の水を仕込みに用いました。この井戸にちなみ、清酒は明治41年(1908年)に「角の井」の名で売り出され、以来蔵の看板銘柄として親しまれています。主屋や煙突、清酒蔵などの建物群は、平成28年(2016年)に国の登録有形文化財に登録されています。
蔵からは日本の近代財政史に名を残す人物も出ています。明治2年(1869年)にこの家に生まれた井上準之助は、大正2年(1913年)に横浜正金銀行頭取、大正8年(1919年)に日本銀行総裁、大正12年(1923年)に大蔵大臣に就任し、第二次山本内閣・浜口内閣・第二次若槻内閣で財政を担いました。昭和7年(1932年)、選挙運動中に凶弾に倒れ生涯を閉じています。生家には遺品を展示する資料館「清渓文庫」が平成3年(1991年)に設けられ、当時の書翰や着用していた外套などを見ることができます。
戦後は昭和29年(1954年)に合資会社を設立し、昭和39年(1964年)には四季醸造蔵「五輪館」を新設しました。この年は東京オリンピックの開催年にあたり、蔵の名前もそれにちなんで名付けられています。昭和53年(1978年)には全酒類卸免許を取得し、昭和58年(1983年)には麦焼酎「九州んもん」を売り出しています。平成16年(2004年)、創業200年を機に株式会社へ改組し、井上徳次の雅号を冠した麦焼酎「初代百助」と米焼酎「モン」を発売しました。
経営の面では、平成9年(1997年)に井上睦子氏が社長に就任し、女性が舵を取る蔵として歩みを重ねました。平成26年(2014年)に睦子氏の娘である井上百合氏が日田に戻って酒造りの研修を積み、平成30年(2018年)に7代目社長と杜氏を兼務する立場に就いています。大分県内で清酒の女性杜氏は百合氏が初めてで、自らの名を冠した季節限定酒「百合仕込み」を手がけてきました。
令和8年(2026年)3月には後藤康男氏が8代目社長に就任し、経営を引き継いでいます。百合氏は引き続き杜氏として酒造りの現場に専念しており、伝統と革新の両輪を担う体制で歩みを続けています。
酒造りの特徴
仕込み水は、英彦山系を分水嶺とする耶馬渓層の火山岩でゆっくりとろ過された湧水で、地下150メートルからくみ上げています。ミネラル分のバランスに優れたこの水は、蔵の周囲に広がる田んぼの用水としても使われています。「酒は米から」という考えのもと、蔵人自らがこの仕込み水を田んぼに引いて山田錦や雄町などの酒米を栽培しています。
仕込みには昔ながらの寒造りの技術を活かし、蒸した米を芯まで冷やして低い温度でじっくり醸すことで、発酵熱を抑えたきめ細かな味わいを追求しています。麹室では杜氏が麹に寄り添い、泊まり込みで状態を確かめながら仕上げていきます。三段仕込みで酒母に麹・水・蒸米を分けて加え、日田盆地特有の寒冷な気候のもとで並行複発酵をじっくり進めることで、まろやかで旨口の酒に仕上げています。
季節限定の「百合仕込み」は、七代目杜氏井上百合氏の名を冠した酒で、通常の仕込みの10分の1ほど、200キログラムという小さな仕込みで醸されています。酒米から育てて醸造までをこの大鶴の地で完結させる造りを実践しており、搾りには機械を使わず「槽(ふね)搾り」と呼ばれる昔ながらの製法を用いています。夏には度数を抑えた「夏の百合仕込み」を、冬には生酒のまま低温で熟成させた「冬の百合仕込み」を売り出すなど、季節ごとに表情を変えて展開しています。清酒「角の井」は平成16酒造年度の全国新酒鑑評会でも入賞を果たしました。
麦焼酎「初代百助」は熊本国税局主催の酒類鑑評会で平成17年から19年にかけて優等賞に加え代表蔵・代表杜氏の表彰を重ね、平成21年から平成30年までは10年連続で優等賞を受賞しました。平成22年には最優秀杜氏賞、平成24年には秋季全日本国際酒類コンクールで第一位に選ばれています。「百助濃香」は令和7年度(2025年度)のKura Master本格焼酎・泡盛コンクールで麦部門プラチナ賞を受賞し、決勝に進んで優秀賞にも選ばれました。
粕もろみを使った「もろみ焼酎」も同コンクールの令和6年度(2024年度)バラエティー部門で金賞を受賞するなど、清酒だけでなく焼酎でも高い評価を得ています。
代表銘柄
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角の井
文化元年の創業当初から敷地に湧く四角い井戸の水を仕込みに用いてきたことから、清酒は明治41年に「角の井」の名で売り出されました。夢一献や山田錦を用いた純米酒・純米吟醸・純米大吟醸まで幅広い階級をそろえ、日田盆地の寒冷な気候を生かした低温仕込みで、旨口で飲み飽きしない味わいに仕上げています。蔵では「伝統の角の井」と位置づけられ、季節限定「百合仕込み」とは別の系統として展開されています。
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「角ノ井」は、蔵の看板銘柄「角の井」の別表記として登録されている名称です。屋号の由来である敷地内の四角い井戸にちなみ、夢一献や山田錦を用いた純米酒・純米吟醸などがそろい、日田盆地の寒冷な気候を生かした低温仕込みでまろやかな旨口に仕上げられています。表記に違いはあるものの、井上酒造を代表する清酒として長く親しまれてきた銘柄です。
見学・購入
- 蔵見学
- あり(要事前確認)
- 直売所
- 蔵の直売所のほか、オンラインストアでも購入できます。
- 補足
- 敷地内には元大蔵大臣井上準之助の遺品を展示する資料館「清渓文庫」があり、完全予約制で見学できます。酒蔵見学も要予約で受け付けており、毎年4月には蔵開き「春搾り」を開催して搾りたての原酒などを販売しています。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 大分県日田市大字大肥2220-1
- 創業
- 1804年
- 公式サイト
- www.kakunoi.com
出典
oita-sake.or.jp / kakunoi.com / shop-pro.jp / jetro.go.jp / waterserver-mizu.com / edit.pref.oita.jp / oita-katete.pref.oita.jp / note.com / nrib.go.jp / kuramaster.com / sakenowa.com / ja.wikipedia.org / online.bunka.go.jp / kakunoi.shop-pro.jp
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