SAKE BREWERY — SHIMANE

若林酒造

島根県大田市温泉津町小浜ロ73 1869年創業

紹介

若林酒造有限会社は、1869(明治2)年に創業した島根県大田市温泉津町にある酒蔵です。代表銘柄の「開春」をはじめ、「石のかんばせ」や「寛文の雫」などを醸造しています。

仕込み水には、海に近いロケーションであることから井戸水ではなく蔵から約4km離れた山から湧き出る岩清水を使用しています。原料米には島根県産の山田錦、神の舞、佐香錦や、岡山県産の雄町といった酒造好適米を用いています。香りよりも米本来の旨味を重視した仕込みを行い、製造するすべての酒を純米酒とする「全量純米蔵」となっています。

また、伝統的な「生酛(きもと)造り」や木桶を使った醸造に注力しています。銘柄「寛文の雫」は、江戸時代の文献『和漢三才図会』を参考に当時の製法を再現した、濃厚で甘みとコクのある個性的な日本酒です。コンテスト向けの酒ではなく自分たちが「おいしい」と思える酒造りを追求しています。(385字)

歴史

若林酒造は、島根県大田市温泉津町に蔵を構える酒蔵です。江戸時代後期、温泉津の大浜村(現在の温泉津町小浜)で海産物問屋「魚屋」を営んでいた本家から、初代の力兵衛が分かれて「石田屋」を興したのが始まりです。当初は酒造りではなくいくつかの商いを手がけていましたが、実子がなかったため弟の敬三郎が2代目を継ぎ、その息子にあたる栄一郎が3代目として明治2年に酒造業を開業しました。それ以来、若林家は代々酒造りに携わっており、現在の代表取締役は7代目にあたる若林邦宏氏です。

創業当時から用いている銘柄名「開春」は、中国の詩人・陶淵明の詩の一節に由来します。「春」は季節そのものだけでなく、古くは酒を意味する言葉としても使われてきました。日本では春というと桜が思い浮かびますが、中国では梅が春の象徴とされることから、開春のラベルにも梅の花があしらわれています。寒い冬を耐え抜いてこそ美しい花を咲かせる梅のように、厳しい冬の仕込みを経てこそ美味しい酒ができるという願いが銘柄名に込められています。ラベルの右上に配された三日月には、酒単体で完結させるのではなく、料理と合わせて初めて真価を発揮する「三日月のようにどこか欠けている酒でありたい」という蔵元の思いが表れています。

蔵を構える温泉津は、江戸時代に世界遺産・石見銀山で産出した銀やそれに伴う物資の積み出し港として栄えた日本海沿いの港町です。酒造業を始めた3代目・栄一郎以降、若林家はこの地で150年以上にわたり酒を造り続けています。

平成14酒造年度の全国新酒鑑評会では、「開春」が入賞酒に選ばれた実績があります。

若林酒造は、流行に流されることなく自分たちが「おいしい」と感じられる酒を追求し、個性のある食中酒を目指す姿勢を大切にしています。

酒造り

若林酒造の酒造りの大きな特徴は、自然の乳酸菌を取り込んで酒母を育てる「生酛(きもと)造り」です。現在の杜氏である山口竜馬氏は、広島県福山市の出身で鳥取大学で林政学を学んだのち、埼玉県の神亀酒造で5年間修業を積み、平成11年に若林酒造へ入社しました。当時ほとんど行われなくなっていた生酛造りを独学で学び、島根県内の酒蔵として初めて復活させた人物です。平成17酒造年度から杜氏を務め、平成15酒造年度に木桶の復活とあわせて生もと造りを始めて以降、純米吟醸や純米大吟醸など主要な銘柄を順次生酛仕込みへ切り替えてきました。

木桶を使った仕込みも若林酒造の特徴のひとつです。蔵に眠っていた木桶を平成15酒造年度に復活させ、現在も酒造りに取り入れています。ホーローやステンレスのタンクと異なり、木桶は内部に棲みつく微生物の働きをコントロールしにくく管理に手間がかかりますが、その分、木桶でしか生まれない味わいや香りが得られます。平成27酒造年度には木桶をもう1本増設しており、全量純米酒化とあわせて木桶仕込みの比重を高めてきました。

原料米には、大田市内の契約農家が栽培する山田錦を中心に、島根県の酒造好適米である神の舞や佐香錦、縁の舞、岡山県産の雄町などを使い分けています。平成10年に地元の契約農家や自社で酒米作り集団「酒仙蔵人五郎之会」を結成し、会員とともに幻の米ともいわれる亀の尾の栽培にも取り組んでいます。仕込み水は、海に近く良質な水を得にくい立地のため、大正時代末期に蔵から4キロメートル離れた自社所有の山中で石清水(中硬水)を発見し、地下のパイプラインで引いて使用しています。醸造アルコールは添加せず、自社で造る日本酒はすべて純米酒です。

仕込みに使う蔵は創業当時からの土壁の建物で、150年以上にわたって蔵に棲みついてきた微生物の力を借りた、酵母無添加の生酛造りを支えています。杜氏の方針で機械に頼った酒造りは行わず、少量ずつ丁寧に仕込む手造りにこだわっており、1回あたりの仕込み量はおおむね800キログラム以下、蔵で酒造りに携わる人数は4名です。

蔵データ

所在地

島根県大田市温泉津町小浜ロ73

創業

1869年(島根県)

公式サイト

kaishun.co.jp

代表銘柄

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開春:若林酒造の代表銘柄で、中国の詩人・陶淵明の詩に由来する名を持つ日本酒です。ラベルには春の象徴とされる梅の花と三日月があしらわれ、料理と合わせてこそ真価を発揮する食中酒を目指しています。生酛仕込みの純米大吟醸や純米吟醸から、辛口の純米酒まで幅広い商品構成があり、自社で仕込む酒はいずれも純米酒です。香りよりも米の旨味を生かした、個性のある味わいが特徴です。

石のかんばせ:開春のシリーズの中でも甘口に振った純米生原酒です。山田錦を60パーセントまで磨き、島根県で開発された酵母「島大HA-11号」を使用して仕込まれています。日本酒度はマイナス8からマイナス10程度と大きく甘い方に振れており、香り高く濃醇な甘さが持ち味です。泡なし酵母である「島大HA-11号」を使用しているのは、開春のラインアップの中でもこの銘柄のみです。

寛文の雫:江戸時代の文献を参考に、当時の製法を再現して造られた生酛純米の木桶仕込み酒です。精米歩合90パーセントというほとんど磨かない山田錦を使い、平成30酒造年度の日本酒度はマイナス78度ときわめて濃厚で、現代の一般的な日本酒とは大きく異なる甘みとコクを味わえます。かつての酒を平成17酒造年度に復活させた銘柄で、720ミリリットル瓶は平成29酒造年度から発売されています。

見学・購入

蔵見学

なし

直売所

酒蔵での店頭販売を行っています。

補足

販売は特約店を中心としており、毎年7月の海の日には温泉津町で酒販店・飲食店を対象に「呑み切り会」を開催し、意見交換を行ってきました。

見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。

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出典

japansake.or.jp / sakeworld.jp / kaishun.co.jp / sakenomy.jp / official.ec / syusendo-horiichi.co.jp / yunotsu-meguri.jp / nrib.go.jp / jp.sake-times.com / shimane-sake.or.jp

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