田中酒造店
代表銘柄:君萬代
茨城県
IBARAKI
1655年創業
明暦元年(1655年)創業、茨城県取手市に唯一残る自家醸造の酒蔵です。かつて陸前浜街道の要衝として栄えた取手宿の歴史を今に伝えています。代表銘柄「君萬代」の酒名は、明治17年(1884年)の行幸の際、明治天皇が蔵の井戸水を召し上がって大変満足され、水を運んだ功績に対して下賜されたことに由来すると伝えられています。酒造りでは、利根川の砂礫層を通る豊かな伏流水や、地元の契約農家が栽培した米などを原料に使用。
洗米から和釜での蒸し、室での麹造り、酒母やもろみの管理に至るまで、昔ながらの人の手による丁寧な手造りをモットーとしています。また、南部杜氏の後継者不足に対応するため、平成21年(2009年)酒造年度からは通年雇用の自社従業員のみによる醸造体制へ移行し、細やかな気配りと柔軟な手作業で酒造りを続けています。
田中酒造店の歩み
田中酒造店は、明暦元年(1655年)に創業した酒蔵です。江戸時代前期の取手は、利根川に面した陸前浜街道の要衝として宿場町(取手宿)が栄えた土地でした。蔵は、常総の大地の東のはずれで利根川の砂礫層を通ってくる豊富な伏流水が得られることと、後背地に相馬や谷和原の穀倉地帯を控える地の利から酒造りを始めました。かつて取手には造り酒屋が多くありましたが、いまは取手市に唯一残る自家醸造の酒蔵として、この地で酒を造り続けています。
銘柄の「君萬代」は、明治17年(1884年)の出来事に由来すると伝えられています。この年、現在の牛久市域で陸軍近衛砲兵の射撃演習が行われ、明治天皇が行幸しました。牛久の旧家が行在所となり、天皇は利根川を渡って向かう途中で喉の渇きを訴えます。造り酒屋の水なら大丈夫だということで差し出されたのが、この蔵の井戸水でした。天皇が大変満足したため、行在所に滞在する間は水を運ぶことになり、その功によって下賜されたのが「君萬代」の名です。
国が万年続くようにという願いを込めた酒名で、取手市内の行事には欠かせない地元の酒として親しまれてきました。
蔵は、先代が亡くなったことをきっかけに家族で将来を話し合い、家業を手伝っていた小川せいこさんが平成18年(2006年)に15代目の蔵元に就きました。夫の小川貴由さんは会社勤めのエンジニアから蔵に入り、夫婦2人で酒類総合研究所に約1か月半通って、座学と実習で酒造りを学びました。平成21年(2009年)からは杜氏として酒造り全体を担っています。「取手という場所で作り続けること」を一番のこだわりとして、酒造りをしない時期に蔵を開放したり、2階をギャラリーにしたりと、地域に開かれた蔵を目指しています。
酒造りの体制も変わりました。従来は南部杜氏を迎えて酒を造っていましたが、少子高齢化による南部杜氏の後継者不足を受け、数年の準備期間を経て、平成21酒造年度から自社の通年従業員だけで酒造りを行っています。細かな気配りと柔軟な対応を酒造りに生かすことを掲げ、2017年には夫婦で蔵を切り盛りしていました。
全国新酒鑑評会では、平成14酒造年度以降に限っても、平成15酒造年度、平成19酒造年度、平成27酒造年度、令和元酒造年度の4回、「君萬代」で入賞しています。関東信越国税局酒類鑑評会では、第88回(平成29年)の純米吟醸酒の部で、最優秀賞に次ぐ上位2場に選ばれる特別賞を受けました。続く第89回(平成30年)でも、同じ純米吟醸酒の部で優秀賞に選ばれています。
酒造りの特徴
田中酒造店の酒造りは、昔ながらの人の手による洗米、和釜での蒸し、室(むろ)での麹造り、そして酒母ともろみのすべてにおいて手造りをモットーとしています。清酒の種類に応じた最適な造りを心がけ、消費者のニーズと君萬代の味の調和を目指しています。1つの酒ができるまでには、最低でも1か月半ほどかかります。
仕込みには取手の水を使います。原料米は、大吟醸酒の山田錦のほか、スタンダード酒には茨城県産のひたち錦、千代錦、日本晴を使っており、2006年度の造りから取手産の日本晴を使う方針を掲げ、現在は取手の契約農家が栽培した日本晴を主に使っています。吟醸酒に使う米はふるいにかけて粒をそろえ、5kgずつ小袋に分けて1袋ずつ丁寧に手洗いします。スタンダード酒用の米は洗米機で洗います。洗米後は一昼夜水を切り、甑(こしき)で蒸します。湯気が出てから40分ほどで蒸し上がった米は、熱いうちに人力で掘り起こします。
蒸米は、掛米用なら冷ましてそのまま仕込みタンクへ、麹米用なら麹室へと運びます。
麹室は壁が厚く、電熱線で温度を調整して30度前後に保ちます。もろみは、酒母で育てた酵母を安全に増やすため、初添、仲添、留添の3回に分けて掛米、麹米、水を加えていく三段仕込みで仕込みます。初添の翌日は仕込みを休む「踊り」を挟むため、1本のもろみの仕込みには4日かかります。発酵中は櫂入れや検温、比重・酸度・アルコール度の分析を日々行って状態を見極め、糖化と発酵のバランスを保つ品温管理に気を配ります。発酵には一般酒で20日前後、吟醸酒では30日以上をかけます。
2017年には、もろみの温度を11度前後に保ってゆっくり発酵させていました。
発酵が進んだもろみは酒袋に詰め、槽(ふね)に入れて圧力をかけて搾ります。1つのタンクから200袋ほどの酒袋がとれます。搾った酒は一日置いて澱を沈め、上澄みを別のタンクに移してから瓶に詰めます。酒造りは秋ごろから5月ごろまでで、この工程を15回ほど繰り返します。
代表銘柄
君萬代
君萬代は、田中酒造店の銘柄です。大吟醸酒と純米大吟醸酒には兵庫県産の山田錦を、純米吟醸酒、本醸造酒、純米酒には茨城県産米を使っています。大吟醸酒は精米歩合40%で、すっきり辛口、華やかな香味が持ち味です。純米吟醸酒には、ねこのラベルの商品もあります。清酒のほか、君萬代で仕込んだ梅酒や甘酒も造っています。
見学・購入
- 蔵見学
- あり(要事前確認)
- 直売所
- 取手市取手2-13-35の蔵の店舗で、営業時間は9時から17時30分、月曜と祝日が休みです。公式ネットショップもあり、カード決済のみで平日の火曜から金曜の対応です。
- 補足
- 蔵見学は通常業務ではなく、酒の購入を前提に、事前に問い合わせる必要があります。酒造期(11月から5月)以外は見学できるものがあまりなく、製造予定によっては断られることもあります。年に数回、酒蔵開放のイベントが開かれています。蔵の2階は貸し画廊「やねうら画廊」になっています。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 茨城県取手市取手2-13-35
- 創業
- 1655年
出典
ibarakiguide.jp / sake-ten.jp / sakenomy.jp / nakamurasaketen.com / theshop.jp / ameblo.jp / kimibandai.sake-ten.jp / nrib.go.jp / nta.go.jp / hotpepper.jp / toridetown.com / sakeno.com / web.archive.org
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