千寿酒造
代表銘柄:千寿
静岡県
SHIZUOKA
1902年創業
静岡県磐田市に位置する千寿酒造は、明治35年(1902年)に創業した同市唯一の酒蔵です。蔵内の井戸から湧き出る名水・天竜川の伏流水を仕込み水に使用し、静岡県内で唯一となる越後流派(越後杜氏)の技法を用いて丹精込めた酒造りを行っています。戦後間もない昭和21年(1946年)という早い時期から高精白米を使った手作りの吟醸酒造りにこだわり続け、妥協のない酒造りを継承しています。
主力銘柄の「千寿」「千寿白拍子」は、地元ゆかりの悲恋物語に由来する銘柄です。静岡県産の酒造好適米「誉富士」を使った純米吟醸や、酒母を搾った低アルコールの「earth」なども手がけています。さらに清酒造りにとどまらず、吟醸酒の酒粕を原料にした本格焼酎やウイスキー、リキュール、調味料の製造・販売にも幅広く取り組んでいます。
千寿酒造の歩み
千寿酒造は、明治35年(1902年)に現在の磐田市にあたる地で酒造りを始めた、磐田市唯一の酒蔵です。大正14年に合資会社山下本家が設立され、昭和28年には本社工場を現在地に新築して移転しました。昭和57年11月には販売部門を株式会社サンコーとして独立させて全酒類の卸を行うようになり、昭和59年2月に合資会社山下本家から千寿酒造株式会社へ社名を改めています。平成25年には小林義弘氏が代表取締役に就任しています。
酒名の「千寿白拍子」は、源平の戦乱の世に当代一の舞姫といわれた白拍子の千寿が、地元に残した悲恋物語に由来します。駿河国手越の出身で、源頼朝が召し抱えた12人の白拍子のなかでもひときわ美しかった千寿は、捕らえられた平重衡の世話を命じられ、出会ったその日から恋に落ちました。重衡の死後は21歳で尼となり、遠江国豊田郡、いまの磐田市で菩提を弔いました。天竜川の流れを見ては重衡を想う日々が続き、やがて千寿も若くして世を去りました。蔵は、この一途な恋に天竜川伏流水で醸す淡麗な酒質を重ね、酒に「千寿白拍子」と名付けました。
蔵が酒造りの原点と位置づけるのは、手作りの吟醸酒です。米が不足していた終戦直後の昭和21年から、高精白米を使った吟醸酒を一切の妥協なく造り続けてきました。その吟醸造りは、同年に新潟杜氏の河合清氏を迎えたときに始まり、河合杜氏は昭和63年まで杜氏を務めました。後を継いだのは同郷の弟子の中村守氏で、2001年時点では中村杜氏の弟子の高綱孝氏が現場で指揮を執っていました。創業家の山下家から経営が離れた後も、酒造りは鈴木繁希杜氏が指揮してきました。
昭和41年には、東京農業大学が主催する全国酒類品評会で、浦霞、月の井とともに第一回のダイヤモンド賞を初めて受けています。当時の銘柄は「誉関」でした。平成に入ってからは吟醸蔵を新設し、厳格な温度管理のもとで長期低温醸造と貯蔵に取り組んでいます。初めて蔵開きを催したのは平成20年11月です。
鑑評会での実績も重ねています。中村杜氏は河合杜氏の補佐のころに全国新酒鑑評会で金賞を2回、杜氏を継いだ後も金賞2回と銀賞1回を受け、名古屋国税局の鑑評会では昭和62年から続く連続入賞を平成7年まで延ばして特別表彰も受けました。平成15酒造年度の全国新酒鑑評会では入賞し、平成16酒造年度は商標「千寿」で、平成17酒造年度は商標「千寿白拍子」で、続けて金賞を受賞しました。蔵の発表では、全国新酒鑑評会での入賞は平成16年までに12回(金賞を含む)、名古屋国税局の鑑評会での入賞は37回にのぼります。
名古屋国税局酒類鑑評会では、第54回(平成18年発表)で吟醸酒の部と純米酒の部の両方で優等賞、第55回の吟醸酒の部で「千寿白拍子」が優等賞、第56回の純米酒の部(市販酒)で純米吟醸「舞車」が優等賞を受賞しています。静岡県新酒鑑評会の吟醸酒の部では、平成12・15・16・18・19・21・24の各酒造年度に会長賞を受け、純米吟醸酒の部でも平成12〜21酒造年度に会長賞を8回受けています。
酒造りの特徴
2020年時点では、自社の杜氏である鈴木繁希氏が仕込みを担っています。越後流の酒造りを踏襲しており、静岡県内で越後流を受け継ぐ蔵は千寿酒造だけです。越後流は淡麗辛口で、味と香りのバランスがよく、後味がすっきりとした飲み飽きしない酒を持ち味とします。東に太田川、西に天竜川が流れる中泉の地は、地名が示すとおり古くから良質な水に恵まれてきました。仕込みには蔵内の井戸から湧き出る天竜川の伏流水を使い、この水は一年を通してひんやりと冷たい名水です。
吟醸酒の技術を土台に、幅広い酒を造っています。看板の大吟醸「千寿 白拍子」は、兵庫県産の山田錦を35%まで精米し、淡麗旨口に仕上げた酒です。静岡県オリジナルの酒造好適米「誉富士」を100%使った純米吟醸「ふじのくに」や特別純米酒もあります。赤い果実を思わせる甘みと酸を持つ酒母酒「earth」(アルコール分6度)など、個性の異なる酒も揃います。酒母酒は、日本酒造りの初期段階である酒母を搾った酒です。山田錦で仕込む「ENITO」は磐田市の昆虫「鼈甲トンボ」をモチーフにしたラベルが目印で、純米酒の規格には該当しません。
古酒にも早くから取り組み、1986年のヴィンテージを冠した大古酒「千寿白拍子 Vintage1986」も扱います。
清酒以外の酒類も手がけています。吟醸酒の粕を使い、低温減圧蒸留(単式)で仕上げた粕取り焼酎、清酒に果実を合わせたリキュール、ブレンデッドウイスキーなどです。静岡県内で唯一、乙類焼酎と甲類焼酎の両方の設備を持つ蔵でもあります。
醸造調味料も蔵の大きな柱です。酒粕分解エキスから始まった調味液の製造は、駿河湾産桜えびエキスや国産米を原料とした料理酒など、業務用を中心に約60種へ広がりました。日本料理店の店主との共同開発で、家庭向けの純米料理酒と、米だけで造る酒みりんも商品化しています。
代表銘柄
千寿
「千寿」は蔵の名を冠したブランドで、白拍子の千寿にちなむ「千寿白拍子」と並ぶ伝統銘柄です。精米歩合60%の純米酒は、ふくよかな米の旨味を適度な酸が引き締める辛口で、冷酒からぬる燗まで楽しめます。本醸造の辛口は日本酒度+14.5の大辛口で、熱燗に向きます。精米歩合70%の「千寿」は芳醇で温かみのある味わいで、天竜川の流れと熊野の長藤を描いたラベルが目印です。
見学・購入
- 蔵見学
- なし
- 直売所
- 蔵の敷地内に酒蔵直売所があり、大吟醸のほか、焼酎、純米料理酒、リキュール、ウイスキーなどを販売しています。オンラインショップもあります。
- 補足
- 蔵見学は2014年2月に終了しています。直売所の営業は平日の9時から17時(12時から13時は昼休み)で、土曜・日曜・祝日は休みです。アクセスはJR磐田駅から車で約5分です。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 静岡県磐田市中泉2914-6
- 創業
- 1902年
- 公式サイト
- e-senju.co.jp
出典
japansake.or.jp / shippei.jp / homarefuji.com / e-senju.co.jp / rurubu.jp / shizup.jp / kanko-iwata.jp / komeyaharaguchi.com / shop-senju.jp / shizuoka-sake.jp / nta.go.jp / nrib.go.jp / at-s.com
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