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鈴木酒造店 長井蔵

代表銘柄:磐城寿・土耕ん醸

山形県

YAMAGATA

1931年創業

東日本大震災の津波と原発事故により、福島県浪江町の蔵が全流失・避難を余儀なくされた鈴木酒造店が、山形県長井市の東洋酒造(1931年創業)の株式を取得して事業を引き継ぎ、2011年12月に「株式会社鈴木酒造店長井蔵」として酒造りを再開した。長井蔵では朝日連峰や飯豊連峰を水源とする湧水を用い、少人数かつ小仕込みによる手作業で酒造りを行っている。原料米は福島市と長井市の契約農家から約8割を調達しており、そのほとんどが酒造好適米である。

代表銘柄には、かつて漁師たちに「海の男酒」として愛された「磐城寿(磐城壽)」や福島県産「五百万石」を使った山廃純米原酒「土耕ん醸」、旧東洋酒造から引き継いだ「一生幸福」などがある。長井蔵は、全国新酒鑑評会にて「一生幸福」が2017年と2022年に、「磐城壽」が2026年に金賞を受賞している。2021年には道の駅なみえ内に浪江蔵を構えて故郷でも醸造を再開し、現在は長井と浪江の2拠点で酒造りを続けている。

鈴木酒造店 長井蔵の歩み

鈴木酒造店の酒造りは、江戸出しの廻船問屋を営むかたわら相馬藩から濁酒の製造を許されたことに始まり、天保年間(1840年前後)には製造の記録が残っています。生業が海に関わる仕事だったことから、酒蔵の堤防の向こう側が海という珍しい立地で、福島県浪江町請戸(うけど)地区で営業を続けてきました。海の男たちは命の危険と隣り合わせの仕事のなかで縁起を重んじ、めでたい名前を好んだことから、代表銘柄「磐城壽」の名がつけられています。

2011年3月11日の東日本大震災では津波によって蔵の建屋や看板、酒造りに関するデータのすべてが流失しました。蔵は福島第一原子力発電所から直線距離で7キロメートルの場所にあり、原発事故に伴う避難指示によって浪江町への立ち入りもできなくなりました。震災の約2カ月前に研究目的で福島県ハイテクプラザに預けていた酵母が無事だったことが分かり、震災直後には福島県内の酒蔵を借りて磐城壽を醸造・出荷しています。反響の大きさを受け、早期の再出発を決意しました。

再出発の場となったのは、最上川舟運で栄えた小出村(現在の長井市街南部にあたる地域)の有力者たちの出資によって昭和6年に東洋酒造株式会社として創業した蔵です。創業当時の銘柄は「東洋乃誉」「菊東洋」で、後に「一生幸福」が主要銘柄となりました。平成23年10月に株式会社鈴木酒造店が全株式を取得し、同年12月に現在の社名「株式会社鈴木酒造店長井蔵」に変更して酒造りを再開しています。当初は浪江町から仕込み水を運びながら「磐城壽」をはじめとする定番酒を造り、長井の気候や水質に合わせた酒質を模索してきました。

2017年3月末には浪江町の一部地域で避難指示が解除されました。もともとの蔵があった請戸地区を含む沿岸部は津波によって甚大な被害を受け、浪江町は住宅などの建築を制限する災害危険区域にこの一帯を指定しています。震災から10年となる2021年3月、「道の駅なみえ」のグランドオープンに合わせて隣接する「なみえの技・なりわい館」内に新たな蔵を構え、公募事業者として浪江町での酒造りを再開しました。これにより、長井蔵はそのままに、長井と浪江の二つの拠点で酒造りを続ける体制になっています。

平成14酒造年度以降の全国新酒鑑評会の記録では、長井蔵として平成28・平成29・令和3・令和4・令和6・令和7酒造年度の6回入賞しており、このうち平成28酒造年度と令和3酒造年度の「一生幸福」、令和7酒造年度の「磐城壽」が金賞を受賞しています。震災前の平成20酒造年度にも請戸の蔵として「磐城壽」が入賞しており、産地を移してからも受け継がれてきた実績です。代表取締役の鈴木大介氏が長井蔵の杜氏を務め、弟で専務の鈴木荘司氏とともに、長井と浪江の二つの蔵を交代で担いながら酒造りを続けています。

酒造りの特徴

長井市は、飯豊連峰を源流とする白川と朝日連峰を源流とする置賜野川が母なる最上川に流れ入る水のまちです。長井蔵の仕込み水には蔵の敷地内に湧く井水を使用しており、輪郭のあるきれいな軟水に仕上がっています。全ての仕込みを小仕込みに統一しており、震災を機に一年のうち三つの季節にわたって醸造する体制を取り入れました。手仕事を重視し、商品はもろみごとに瓶詰めして全量を瓶で貯蔵するほか、一部は雪室でも貯蔵しています。

原料米は商品ごとに使い分けており、震災前から親しまれてきた福島県産「夢の香」を主力品種としつつ、平成26年産からは契約栽培に切り替えました。原料米の約8割は福島市と長井市の契約農家から調達しており、そのほとんどが酒造好適米です。長井市の圃場は酒蔵と水源地を結ぶ間にあり、同じ水系の米で酒を造っています。福島市松川町水原地区で栽培された「山田錦」を、福島市の愛飲家や水稲栽培農家とともに企画して仕込んだ商品もあります。

そのほか兵庫県産「山田錦」、岡山県産「雄町」、青森県産「華吹雪」、「出羽燦々」を使った商品もそろえており、「土耕ん醸」には福島県産「五百万石」を100%使用しています。

浪江蔵は「道の駅なみえ」に隣接する「なみえの技・なりわい館」内にあり、少人数で酒造りができる設備を整えています。蔵の内部の見学は受け付けていませんが、前面をガラス張りにしており、仕込みから完成まで約1カ月の工程をガラス越しに見ることができます。量産はできないぶん、多品種を少量ずつ、季節に応じて造り分けています。

原料米には浪江町酒田地区で栽培されたコシヒカリ(飯米)を用い、杜氏自ら田んぼを見ながら選んでいます。仕込み水には、阿武隈山系を水源とする高瀬川の水を小野田地区で汲み取って使用しており、町の水質検査では一般細菌が検出されないほど良質な水であることが確認されています。浪江蔵が完成する以前は、この水を長井まで運んで仕込みに使っていましたが、現在は浪江の蔵で直接仕込めるようになっています。

代表銘柄

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磐城寿

福島県浪江町請戸の蔵で生まれた代表銘柄で、海の男たちが縁起を重んじたことから名づけられました。東日本大震災後は山形県長井市で醸造を続け、2021年には「道の駅なみえ」に隣接する「なみえの技・なりわい館」内に新たな蔵を構えて故郷での醸造も再開しています。令和7酒造年度の全国新酒鑑評会では金賞を受賞しました。

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土耕ん醸

福島県産「五百万石」を100%使用した山廃仕込みの生詰め純米原酒です。精米歩合は65%、アルコール度数は17度で、しっかりとした骨格に土を思わせる風味を重ねた旨口に仕上げられています。ものづくりへの心意気を伝える一本として位置づけられています。

見学・購入

蔵見学
あり(要事前確認)
直売所
長井蔵では店頭ですべての商品を購入でき、無料の試飲も楽しめます。福島県浪江町の浪江蔵に隣接する「なみえの技・なりわい館」内の「SakeKuraゆい」でも、生搾りの酒や酒粕加工品を販売しており、大堀相馬焼の器で試飲できるカフェコーナーが併設されています。
補足
長井蔵の酒蔵見学は事前予約制で、見学可能時間は10時から12時と13時から16時までです。土曜・日曜・祝日は受け付けておらず、時期によっては見学をお断りする場合もあるため、事前に電話でお問い合わせください。福島県浪江町の浪江蔵では蔵内部の見学は受け付けていませんが、前面をガラス張りにしており、仕込みから完成までの様子をガラス越しに見ることができます。営業時間は10時から18時までで、毎月最終水曜日が定休日です。

見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。

蔵の基本情報

所在地
山形県長井市四ツ谷1-2-21
創業
1931年
公式サイト
www.iw-kotobuki.co.jp

出典

iw-kotobuki.co.jp / sakenomy.jp / imadeya.co.jp / fukunosake.com / fukushima-hook.jp / tohoku-sakurakaido.jp / liquor-shop-kinase.co.jp / iwakikotobuki-namie.com / nrib.go.jp / yamagatakanko.com / town.namie.fukushima.jp / komei.or.jp

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