中谷酒造
代表銘柄:米ぎん・三日踊
奈良県
NARA
1853年創業
奈良県大和郡山市に所在する中谷酒造は、嘉永6年(1853年)に創業した老舗酒蔵です。安政5年(1858年)には郡山柳沢藩の御用商人となりました。混ざりけのない伝統的な「純米」清酒造りにこだわり、経験や勘に頼りすぎない数値管理による酒造りを行ってきました。本社工場の醸造は2020年4月から休止しており、現在は柳町醸造所での醸造体験と清酒バーの運営が主力です。
かつての代表銘柄「三日踊」は、日本酒の三段仕込みにおいて酵母菌を増殖させる期間「踊り」を、通常の1日間から2〜3日間に延ばすことで、力強い発酵と幅のある味わいを引き出した仕込みが特徴でした。
また、1995年に中国・天津へ関連会社を設立するなど早くから海外展開に注力してきたほか、2022年には醸造体験や清酒バーを備えた「柳町醸造所」を開設するなど、新しい酒造りや日本酒文化の発信にも取り組んでいます。過去には全国新酒鑑評会で金賞を受賞した実績もあります。
中谷酒造の歩み
中谷酒造は、嘉永6年(1853年)に、大和国添上郡治道村大字番条、現在の奈良県大和郡山市番条町にあたる地で創業しました。番条は、佐保川と菩提仙川が合流する地点にある大和川水系最北の河川港で、奈良盆地北部で最大の環濠集落でもあります。今の集落の形は、清酒発祥の地とされる正暦寺で醸された酒を川船で積み出すため、15世紀に興福寺が整備したものです。蔵は、戦国武将・筒井順慶の砦であった番条北ノ城の跡に建っています。
安政5年(1858年)には郡山柳沢藩の御用商人となり、苗字帯刀を許されて中谷を名乗りました。明治元年(1868年)には酒造米280石の許可を得て、明治10年(1877年)には郡山の造り酒屋十三軒の「酒造取締」(組合長)に任じられています。中谷家には、元亀年間(1570年)に作られた備前焼の甕が家宝として伝わっています。当時の発酵容器だった甕で、創業時に酒屋株とともに受け継いだものと思われます。
酒の出荷先は、創業から戦前までは大和川の水運や鉄道を使って主に大阪で、戦後は昭和30年代に東京市場の開拓を始め、主力市場を東京に移しました。1993年に総合商社を退社して清酒業界に入った六代目当主の中谷正人さんは、1995年に阪神・淡路大震災で取引先の桶売りが終わったのを機に経営を引き継ぎました。同じ1995年には中国の天津に関連会社の天津中谷酒造有限公司を設立し、清酒の製造を始めています。1996年には大学卒の人材を年間雇用で募集し、全国新酒鑑評会での金賞を目指す体制を固めました。
酒造りの体制づくりは、平成9酒造年度に高橋清杜氏を招き、蔵人に基礎教育を施したところから始まり、平成12酒造年度には完全に杜氏なしの体制へ移りました。蔵の記録では、平成9酒造年度に大阪国税局の新酒鑑評会で金賞、南部杜氏自醸清酒鑑評会で優等賞、平成11酒造年度に奈良県酒造組合連合会の清酒品評会吟醸酒の部で優等賞を受けています。全国新酒鑑評会では平成14酒造年度の酒で初めて金賞を受け、その後も平成22・23・25・28酒造年度に金賞を受けて通算5回に達しました。平成16・18・19酒造年度の酒も入賞しています。
令和元年度の大阪国税局清酒鑑評会では、燗酒用清酒の部でも優秀賞を受けました。
国内の清酒需要が縮小するなかで国内出荷は減り続け、輸出比率は4割にまで高まりました。固定費を賄えなくなり、国内での清酒製造をやめて中国事業に特化する決断をした矢先にコロナ禍が始まり、本社工場での醸造は2020年4月から休止しています。2020年12月に大和郡山市が国の清酒製造体験特区に認定されると、郡山城下町の柳二丁目に新しい醸造所を設けることが可能になりました。2022年2月からはクラウドファンディングで蔵に残る「最後の酒」を販売して建設を支える応援を募り、約600名から応援が寄せられました。
2022年6月末に奈良税務署が新設の醸造所を従来の醸造所の一部とみなす承認を出し、7月1日に試験醸造を始め、10月12日に「中谷酒造 柳町醸造所」がオープンしました。現在は、この柳町醸造所で醸造体験ができるマイクロブルワリーと清酒バーの運営が主力です。
酒造りの特徴
蔵が掲げる製造方針は「清く」「正しく」「美しく」です。米を蒸して造る伝統製法を守り、混ざりけのない「純米」清酒を大切にすることを、正しい清酒の道としています。本社工場で醸した全国新酒鑑評会の金賞受賞酒は、平成14酒造年度と平成22酒造年度が兵庫県産山田錦100%、平成25酒造年度が契約栽培の岩手県産ひとめぼれ100%で、精米歩合はいずれも35%でした。
米作りから一貫して造る純米吟醸「奈良吟」は、蔵が管理する田と近所の農家に依頼した田で、社長自ら田植えと稲刈りをした奈良県産山田錦100%を、精米歩合60%で仕上げた酒でした。2026年9月には、自社栽培の山田錦で醸した奈良吟を八年熟成させた「純米吟醸 奈良吟古酒 八年熟成」を数量限定で発売しています。
本社工場の酒造りの中心にあったのは、数値管理とマニュアル化です。吸水前の白米の水分含有量を測って目標の吸水率を計算し、吸水試験で割り出した時間を秒単位で計って水を吸わせました。吸水は10kgずつ小分けにした手作業で、蒸米の条件を一定にし、麹づくりでは多段式の吟醸製麹システムを導入して設定温度での種麹散布と保温、温度経過の管理を行いました。発酵では、もろみの濾過液を毎日分析し、そのデータをもとに温度を管理しました。この方法は、杜氏のいない天津の蔵で確立し、日本の蔵にも導入したものです。
蔵は、杜氏の経験や勘に頼らなくても、徹底した数値管理で吟醸酒が造れると位置づけていました。
天津中谷酒造有限公司は、1995年1月に設立され、同年12月に初仕込みをしました。1996年2月にしぼりたて生酒、3月に清酒「朝香」の発売を始め、1997年1月には日本への原酒輸出も始めています。2009年に年間醸造量3,000石(540キロリットル)を達成し、2012年に天津市北辰区の貯蔵工場を購入して、年産7,000石(1,260キロリットル)の体制を築きました。原料米は河北の水田で化学肥料を使わず堆肥で育て、農薬の代わりに川蟹を放って除草したもので、中国政府の有機食品規格「緑色食品」の認定を受けています。
精米は竪型精米機で、大吟醸用の米を3昼夜かけて35%まで磨きます。現在、日本で販売している「萬穣 磨き3割9分」と「萬穣 大和大納言 豊臣秀長 磨き6割」は、六代目当主の中谷正人さん自身が天津で麹づくりを行って醸した原酒を輸入し、本社工場で製品にしたものです。
柳町醸造所では、100リットルに満たない小さな発酵容器で、毎日のようにもろみを搾ります。できたての酒は発酵で生じた炭酸ガスを含み、「大和郡山 中谷 純米吟醸 無濾過生」は、国産米と国産の米こうじで造り、精米歩合は60%、加水してアルコール度数を14度に調整しています。細かな澱が残るフルーティーでキレの良い酒質と、加水後も爽やかな米の旨みを持つことが目標です。蔵は清酒に加えて、吟醸酵母で低温発酵させたもろみを蒸留した本格米焼酎「穎(えい)」も販売しています。
2009年の春季全国酒類コンクール米焼酎部門で第一位になったと、蔵は伝えています。
代表銘柄
米ぎん
「米ぎん」は、本社工場で造っていた燗酒向けの銘柄です。令和元年度の大阪国税局清酒鑑評会では、燗酒用清酒の部で優秀賞を受賞しました。2019年の全国燗酒コンテストでは、720mlで税別1,100円以下の酒を45度のぬる燗で審査するお値打ちぬる燗部門に出品し、246点のうち51点が受けた金賞に入っています。
三日踊
萬穣シリーズの一つとして2015年に発売した銘柄です。若者や女性、外国人など新しい清酒ファンに向けた「分かりやすい酒」がコンセプトでした。三段仕込みで通常は1日置く「踊」の期間を2〜3日に延ばして酵母を十分に増やし、力強い発酵と味や香りの幅を引き出しました。精米歩合35%の純米大吟醸、50%の純米吟醸、60%の特別純米を揃え、のちに山乃かみ酵母を使った奈良県産山田錦の純米吟醸も加わりました。2015年のTOKYO SAKE COLLECTIONでは売上本数が1位だったと、蔵は伝えています。
見学・購入
- 蔵見学
- あり(要事前確認)
- 直売所
- 中谷酒造 柳町醸造所(奈良県大和郡山市柳二丁目4番、近鉄郡山駅から徒歩5分)で搾りたての清酒を飲めます。公式オンラインショップでも販売しています。
- 補足
- 柳町醸造所の営業は水曜から日曜の13時30分から19時(入店は18時30分まで)です。入場料としてグラス1杯の清酒かソフトドリンク(いずれも300円)が必要で、酒のアテは出されないため、近隣の店で買った品の持ち込みやデリバリーで楽しみます。半日コースの酒造り体験は9,000円(税込)で、洗米、蒸米、放冷、仕込みを蔵人として体験でき、定員は10名、最低催行人数は2名です。仕込んだ酒720mlを2本受け取れます。未成年は参加できません。酒造り体験の申し込みは、公式サイトから受け付けています。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 奈良県大和郡山市番条町561
- 創業
- 1853年
- 公式サイト
- www.sake-asaka.co.jp
出典
yk-kankou.jp / naraizumi.jp / sake-asaka.co.jp / nanto-consulting.co.jp / sakefes.com / ameblo.jp / fc2.com / sake-times.com / activityjapan.com / nrib.go.jp / nta.go.jp / kansake.jp / prtimes.jp / nara-np.co.jp / jp.sake-times.com / sakagura-press.com / makuake.com / goshu-pro.jp
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