奥田酒造店
代表銘柄:千代緑
秋田県
AKITA
1673年創業
江戸時代の延宝年間(1673年頃)に創業した、300年以上の歴史を誇る酒蔵です。代表銘柄「千代緑」の名は、初代蔵元が初夏の美しく緑豊かな山々を詠んだ句「若葉映ゆる 四方の山々 千代緑」に由来しています。仕込み水には奥羽山系の清冽な伏流水を使用し、原料米は地元の契約栽培農家が育てる酒造好適米(秋田酒こまちや美山錦など)を中心に用いています。醸造面では、仕込蔵の天井の梁から採取された独自の蔵付酵母「MS3」を活用している点が特徴です。全量箱麹法や全量瓶燗火入れなど、丁寧な手造りの酒造りを徹底しています。
また、戦後の日本を代表する建築家・白井晟一が設計を手掛けた店舗兼主屋は、国の登録有形文化財(建造物)に登録されています。
奥田酒造店の歩み
奥田酒造店の創業は、江戸時代の延宝年間(1673〜81年)にさかのぼります。初代の蔵元がこの地を酒造りに最適な場所と定めて蔵を構えました。創業の地は、いまの大仙市協和にあたります。蔵は、江戸時代に奥州街道と並ぶ東北の二大街道とされた羽州街道に面しています。秋田県内では、にかほ市の飛良泉本舗、湯沢市の木村酒造に次いで三番目に古い酒蔵です。当主は代々「重右衛門」を名乗る習わしで、いまも地元の人々に親しまれる地酒蔵として続いています。
銘柄の「千代緑」は、初代が初夏の緑あふれる山々を見て「若葉映ゆる 四方の山々 千代緑」と一句詠んだことに由来します。戊辰戦争では家屋が焼失するなどの被害を受け、現在の仕込み蔵は大正時代に建てられたものです。長方形の大きな石の基礎の上に木造白壁の建物をのせた昔ながらの佇まいで、蔵の脇にある井戸は創業以来ずっと現役です。奥羽山系の伏流水をくみ上げ、仕込みに使う水をすべてまかなっています。
店舗と住まいを兼ねた主屋は、戦後を代表する建築家・白井晟一の設計で、1957年に完成しました。緩やかな勾配の切妻屋根を巧みに配した軽快で洗練された造形が特徴で、2009年(平成21年)4月に国の登録有形文化財(建造物)に登録されています。重厚な本蔵とモダンな主屋が同じ敷地に並ぶ点が、この蔵の景観の大きな魅力です。
蔵の規模は小さく、造りの中心を担う人数も限られています。2009年時点では、秋田県の山内村(現在の横手市山内)出身の高橋隆男杜氏が、冬のあいだ蔵人たちを率いていました。高橋杜氏は全国新酒鑑評会での金賞、東北清酒鑑評会での仙台国税局長賞、秋田県知事賞の受賞歴をもつ杜氏です。山内杜氏による造りは2012年ごろまで続きました。その後は社長の奥田重徳氏が蔵元杜氏として酒造りを担っています。2022年時点では、社長が醸造と営業を、夫人が経理などを担い、夫婦で経営を切り盛りしていました。
県内の酒販店からプライベートブランドの酒造りを任されるほど、造りの腕が信頼されています。
全国新酒鑑評会では、平成14酒造年度以降に限っても、平成17酒造年度に「千代緑」で金賞を、平成26酒造年度に同じ「千代緑」で入賞を果たしています。地域との結びつきも強く、2020年には、大仙市・美郷町の8つの蔵元が秋田魁新報社のクラウドファンディングで酒蔵と酒米農家を支えるプロジェクトを始め、奥田酒造店もその一員として参加しました。
酒造りの特徴
原料米は、地元・協和の農家による契約栽培米が中心です。きっかけは、地元の若手専業農家から「自分で育てた米で仕込んだ酒を飲みたい」という話が持ちかけられたことでした。「秋田酒こまち」「美山錦」「吟の精」「美郷錦」の栽培を契約農家に託し、現在は山田錦を除く酒造好適米のほぼ全量が地元産になっています。米・水・酵母のすべてが地元協和産という酒を、これからも増やしていく方針です。
この蔵の個性を支えるのが、仕込み蔵の天井の梁から採取した蔵付き酵母「MS3」です。名前は社長が家族全員のイニシャルからつけたもので、蔵の宝物である酵母を育めたのは家族がいてこそ、という思いが込められています。この酵母は引き締まった酸と、リンゴやバナナを思わせる華やかな香りを生み、白ワインのような味わいに仕上がります。仕込み本数の半分以上がMS3仕込みで、純米大吟醸のシリーズ「MS3」「NO.12」「SP」「R-5」は、使う酵母の名前にちなんで名づけられ、酵母ごとの違いを飲み比べられます。
ほかに秋田流花酵母(AK-1)や協会9号酵母も使います。
造りは手間を惜しまない手造りです。麹は全量を箱麹法で造り、蔵には全面板張りの麹室があります。2009年時点では、勤続30年以上の麹屋が「千代緑」の味を守っていました。火入れは、生酒を除くすべての酒を瓶燗火入れで行います。酒を詰めた瓶を水を張った釜に並べ、水温を65度まで徐々に上げて加熱する方法で、熱交換器を通してから瓶詰めする方法より人手と時間がかかります。しかし、火入れ後の酒が外気に触れないため、香味成分の散逸を最小限に抑えられます。
造る酒の量は多くなく、2009年時点で年間およそ1400石でした。そのぶんすべての酒に細やかな目が届くとして、当時の特定名称酒の主力は純米吟醸原酒でした。「千代緑 純米吟醸酒 重右衛門の酒」は、当主の名を冠した美山錦・精米歩合50%の純米吟醸原酒です。例年晩秋から冬には、火入れをしない生酒の「昔ながらの本生発泡 にごり酒」が発売されます。瓶の中で炭酸ガスが躍る微炭酸で、中口からやや辛口の味わいです。
2014年には、ミス・ユニバース・ジャパン秋田代表だった久杉香菜さんがプロデュースした「美素秋田」を手がけ、酒類専門商社モトックスとの協業で「つぎのみどり」シリーズも生まれました。伝統の造りを守りながら、新しい試みにも取り組んでいます。
代表銘柄
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千代緑
蔵付き酵母「MS3」の純米大吟醸をはじめ、純米吟醸原酒の「重右衛門の酒」、冬の「昔ながらの本生発泡 にごり酒」など、幅広い酒を手がける奥田酒造店の代表銘柄です。「やさしさと穏やかさを感じられる食中酒」を目指し、全量箱麹法と丁寧な瓶燗火入れで仕上げます。蔵付き酵母がつくる引き締まった酸と華やかな香りが身上で、地元協和で長く愛されている地酒です。
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- 蔵見学
- あり(要事前確認)
- 直売所
- 蔵の店舗で購入できます。
- 補足
- 酒蔵見学は電話での事前申し込みが必要で、2009年ごろの条件では、受け付けは平日の10時から15時、1回あたり10名まででした。土日祝日は見学を受け付けていません。最新の受け付け状況は電話で確認してください。蔵開放は2月中旬から3月下旬の土曜日を中心に開かれ、2026年は2月28日の14時から16時に開催されました。先着30名の電話申し込み制で、この回は定員に達して締め切られています。車での来場はできません。
見学・販売の情報は変わることがあります。訪問前に公式サイト等でご確認ください。
蔵の基本情報
- 所在地
- 秋田県大仙市協和境字境113
- 創業
- 1673年
- 公式サイト
- www.chiyomidori.com
出典
osake.or.jp / chiyomidori.com / japansake.or.jp / sakenomy.jp / sake-times.com / akita-fun.jp / saketime.jp / mottox.co.jp / kojonin.jp / bunka.nii.ac.jp / nrib.go.jp / nikkei.com / daisen-hanronavi.jp / sakenopage.com
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